2016年09月30日

中国経済:景気指標の総点検(2016年秋季号)~李克強指数は急回復も、総合判断としては小康状態

三尾 幸吉郎

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1.供給面から点検すると

(図表-1)工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の推移 【工業生産】
景気指標の中でGDPへの影響が最も大きいのが工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)である。ここもとのサービス化の進展で影響度が落ちたとはいえ、依然有効性は高い。7-8月期の工業生産は前年同期比6.0%増(推定1)と、4-6月期の同6.2%増(推定)をやや下回る水準で推移している。9月の動向に因るものの、既に公表された工業生産を見る限り、第3四半期(7-9月期)の成長率は前四半期を小幅に下回る可能性がある(図表-1)。
 
1 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、ニッセイ基礎研究所で中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
(図表-2)製造業PMI 【製造業PMI】
供給面を見る上では製造業PMI(中国国家統計局)も重要な景気指標である。これは製造業3000社の購買担当者に対し毎月実施されるアンケート調査の結果を元に計算されるもので、通常は50%が拡張・収縮の分岐点とされる。8月の製造業PMIは50.4%と7月の49.9%を大きく上回った。生産経営活動予想指数(今後3ヵ月予想)も上昇してきており、製造業の景気は8月にやや回復したと見られる(図表-2)。
(図表-3)非製造業PMI 【非製造業PMI(商務活動指数)】
一方、中国では製造業からサービス業への構造転換が進行中なため、非製造業の動きが重要性を増している。非製造業に関する統計は少ないが、非製造業PMI(商務活動指数)が参考になる。製造業PMIと同様に50%が拡張・収縮の分岐点とされる。8月の非製造業PMIは53.5%と、50%を十分上回る水準で安定している。同予想指数も60%近い高位で推移しており、非製造業の景気は堅調である(図表-3)。

 

2.一方、需要面を点検すると

2.一方、需要面を点検すると

(図表-4)業種別に見た小売売上高(限額以上企業)の動き 【小売売上高】
個人消費の動きを示す代表的な指標となるのが小売売上高である。1-8月期の小売売上高は前年同期比10.3%増と昨年通期の同10.7%増をやや下回っている。内訳を見ると、自動車が伸びを高めたものの、衣類や家電が7%台に伸びが鈍化した(図表-4)。また、7-8月期の小売売上高は前年同期比10.3%増(推定)と、4-6月期の同10.3%増(推定)と同水準の伸びで推移、価格要因を除いた実質では7-8月期は前年同期比10.1%増(推定)と4-6月期の同9.7%増(推定)を上回った。インフレ率の低下が寄与したものと見られる。
(図表-5)固定資産投資(民間・国有・持ち株会社)の推移 【固定資産投資】
投資の動きを示す代表的な指標となるのが固定資産投資(除く農家の投資)である。1-8月期の固定資産投資は前年同期比8.1%増と昨年通期の同10.0%増を大きく下回っている。内訳を見ると、民間企業が同2.1%増と大きく鈍化する一方、国有・持ち株企業は同21.4%増と大きく加速して下支えしている(図表-5)。なお、7-8月期の固定資産投資は前年同期比5.5%増(推定)と、4-6月期の同7.3%増(推定)を大きく下回る水準に伸びが鈍化した。
(図表-6)新規輸出受注指数の推移 【輸出】
世界の工場といわれる中国では輸出需要が生産動向を左右する。1-8月期の輸出額(ドルベース)は前年同期比7.1%減と昨年通期の同2.9%減に続いて2年連続の前年割れとなっている。内訳を見ると、米国向けが同7.8%減、欧州EU向けも同3.6%減と軒並み減少している。一方、8月単月では前年同月比2.8%減とマイナス幅が大幅に縮小した。しかし、先行指標となる新規輸出受注指数は引き続き拡張・収縮の境界線となる50%を下回っており、トレンドとしての改善が見込める状況には至っていない(図表-6)。
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三尾 幸吉郎

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