2016年09月30日

家計調査16年8月~8月の消費は総じて低調も、先行きは雇用所得環境の改善が消費を下支え

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.8月の消費支出は大幅減少

総務省が9月30日に公表した家計調査によると、16年8月の実質消費支出は前年比▲4.6%(7月:同▲0.5%)と6ヵ月連続で減少し、減少幅は前月から大きく拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.2%、当社予想は同▲3.3%)を下回る結果であった。前月比でも▲3.7%(7月:同2.5%)の大幅減少となった。月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比▲3.1%(7月:同▲0.8%)、前月比▲2.3%(7月:同0.3%)となった。

実質消費支出の動きを項目別に見ると、住居(前年比▲16.8%)、被服及び履物(同▲12.9%)が前年比二桁の大幅減少となったほか、10項目中、保健医療(前年比7.2%)を除く9項目が減少した。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲0.5%(7月:同0.1%)と2ヵ月ぶりに低下した。同指数は16年1-3月期の同▲0.8%の後、4-6月期は同2.1%と高い伸びとなったが、7、8月の指数平均は4-6月期を▲0.6%下回っている。ただし、ヘッドラインの実質消費支出の減少幅は非常に大きかったが、世帯人員及び世帯主の年齢分布を調整した実質消費水準指数で見ればそれほど大きく落ち込んでいるわけではない。
実質消費支出の推移/実質消費支出、消費水準指数(除く住居等)の推移

2.8月の消費関連指標は総じて弱い結果に

家計調査以外の8月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の小売販売額は前年比▲2.1%(7月:同▲0.2%)と6ヵ月連続で減少し、減少幅は前月から大きく拡大した。季節調整済・前月比では▲1.1%の低下(7月は同1.5%)、物価上昇分を考慮した実質ベースの季節調整済・販売額指数(当研究所による試算値)は前月比▲1.1%の低下(7月は同1.7%)となった。同指数は1-3月期が前期比▲1.9%、4-6月期が同▲0.2%と2四半期連続で低下したが、7、8月の平均は4-6月期を1.3%上回っている。

百貨店売上高(日本百貨店協会)は前年比▲6.0%(店舗数調整後)と6ヵ月連続で減少し、7月の同▲0.1%から減少幅が大きく拡大した。これまで好調を続けてきた外食産業売上高も8月は前年比▲1.7%と9ヵ月ぶりに前年を下回った。土・日・祝日の数が前年よりも1日少なかったこと、リオ五輪開催で外出を控える動きが出たこと、台風が相次いで上陸したことなどが響いた。
小売業販売額(名目・実質)の推移/外食産業売上高の推移
16年8月の消費関連指標は総じて弱い結果となったが、天候、五輪など一時的な要因によって押し下げられている面もある。

足もとの雇用所得環境を確認すると、名目賃金は伸び悩みが続いているが、雇用者数の高い伸びが雇用者所得を大きく押し上げている。さらに、原油安、円高の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者所得を大きく押し上げている。実質雇用者所得(一人当たり実質賃金×雇用者数)は2016年3~5月が前年比で2%台、6、7月が3%台の高い伸びとなった。
実質雇用者所得の推移 8月の賃金の伸びはまだ明らかとなっていない(8月の毎月勤労統計は10/7公表予定)が、本日公表された労働力調査、消費者物価指数(いずれも総務省統計局)では雇用者数が前年比1.5%の高い伸びとなる一方、消費者物価(持家の帰属家賃を除く総合)が前年比▲0.5%となっており、実質雇用者所得の高い伸びは維持される公算が大きい。

9月に入ってからも天候不順が続いているため、消費はしばらく冴えない動きとなる可能性もあるが、雇用所得環境の改善傾向が継続しているため、現時点では個人消費が腰折れするリスクは低いと考えられる。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年09月30日「経済・金融フラッシュ」)

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