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日本企業の信用リスクは磐石か-CDSスプレッドの縮小トレンドに潜む不安材料
金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
1――「イールドカーブ・コントロール」がもたらす信用リスク分析の重要性
本稿では、このような問題意識から、日本企業の信用リスクについて着目してみたい。安倍政権誕生後は、円安・株高の効果もあり、日本企業の信用リスクが改善してきたように感じられる。実際に、帝国データバンクの調査(図表1)によれば、日本における倒産件数はここ数年間減少傾向にある。信用リスクが良好な環境下では、信用リスクを内包した金融商品から安定的に利回りを享受することができるため、魅力的な投資対象となる。しかし、2015年半ばから株高・円安傾向にストップがかかっており、日本企業を取り巻く環境に変化が生じているようにも感じられる。仮に、投資対象の企業の信用リスクが悪化した場合には、そのような金融商品の価値が低下してしまい、損失を被ることに繋がる。また、長期保有を企図する場合は、長期的に信用リスクに問題がないか確認しておくことも重要となる。
信用リスク分析の領域で、しばしば利用される方法に「CDSスプレッド」「社債スプレッド(社債利回り-国債利回り)」「財務分析」等がある。本稿ではこれらの指標を利用して、日本企業の信用リスクの状況について、多面的に確認してみることにしたい。
1 信用リスクとは、債権者から見て、企業等が債務(社債や借入など)の返済が行えず、現金を回収できなくなるリスクのことを指す。
2――CDSスプレッドから見た日本企業の信用リスクの状況
図表2はiTraxx Japan(5年)の推移である。iTraxx Japanは日本の主要な40社のCDSスプレッドを単純平均したものである。日本企業のCDSスプレッドは、ここ数年間において全般的に縮小傾向にある。信用リスクが悪化した際はインデックスの値が上昇し、信用リスクが改善した際にはインデックスの値が低下するため、日本企業の信用リスクが全般的に改善してきたことを示唆している。
2 CDSスプレッドが十分に低い値であれば、CDSスプレッドと倒産確率は比例関係になる。
03-3512-1848
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
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