2016年09月23日

日銀枠組み変更、米利上げ見送りを受けた為替見通し~マーケット・カルテ10月号

基礎研REPORT(冊子版) 2016年10月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替市場 3ヶ月後の見通し 9月21日に日銀が緩和の枠組みを変更(長短金利操作を導入・時間軸政策を強化)、FRBが利上げを見送り、ドル円は一時100円台に上昇した。日銀の枠組み変更は、緩和の持続性を高めるものではあるが拡大ではなく、円安を促す効果は殆ど期待できない。出尽くし感が円高に繋がった。一方、FRBの利上げ見送りはドル安要因だが、12月利上げに意欲を見せたことで、急激なドル安は今のところ回避されている。

当面は米大統領選を控えた警戒などからドルを買いづらく、円は幾度か上値を試しそうだ。ただし、12月利上げ観測が残ることで、大幅な円高は回避できるだろう。その後11月に入ると、大統領選でクリントン氏が勝利して先行き不透明感が払拭されること、さらに12月利上げが射程内に入ってくることで、「日米金融政策の方向感の違い」と「市場のリスク選好」という円安ドル高の条件が揃い、円安へ向かうと予想している。利上げ後は、利上げの悪影響への警戒や利益確定などからドルがやや売り戻され、年終盤は105円程度になると見ている。

ユーロ円は8月以降、113円前後での一進一退が続いている。ユーロ円は今後も決め手に欠けるが、11月にはドル円の円安がユーロ円に波及することで一旦やや円安になると見ている。しかし、その後は12月ECB理事会での量的緩和延長が意識されることでユーロ安圧力がやや高まると予想。3ヵ月後の水準は、現状と大差ないだろう。

長期金利については、日銀が9月会合において長期金利を誘導目標化し、ゼロ%程度を目標値に設定したことで、ゼロ%を多少割り込む水準での推移が予想される。ただし、日銀がどこまでうまくコントロールできるのかという点には不透明さもある。思惑が交錯して、金利が一時的に不安定化する事態も有り得る。
 
(執筆時点:2016/9/23)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2016年09月23日「基礎研マンスリー」)

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