2016年09月23日

【9月米FOMC】予想通り、政策金利据え置き。年内の利上げを示唆

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.金融政策の概要:予想通り、政策金利を据え置き。年内利上げを示唆

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が9月20-21日(現地時間)に開催された。市場の予想通り、FRBは政策金利を据え置いた。

今回発表された声明文では、景気の現状認識について、年前半に比べて経済活動の拡大ペースが加速したことが示された。また、景気見通しについては、見通しに対する短期的なリスクがバランスしていると上方修正された。さらに、ガイダンス部分では、政策金利引き上げの根拠が強まったことが明記された。FOMC会合後の記者会見でも年内1回の利上げが適当との見方が示された。なお、今回の金融政策では、カンザスシティ連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀のメッサー総裁、ボストン連銀のローゼングレン総裁が政策金利の引き上げを主張して反対した。3人が反対するのは、14年12月以来である。

一方、FOMC参加者の見通しは、前回(6月)から16年の成長率、物価見通しが下方修正されたほか、失業率も下方修正(失業率は上昇)された。政策金利(中央値)は16年が0.625%(前回:0.875%)、17年が1.125%(前回:1.625%)と前回から下方修正されたほか、長期均衡水準についても2.875%(前回:3.0%)と下方修正された。

2.金融政策の評価:年内利上げは確実も、会見は説得力に欠け、意見調整の難しさを示唆

政策金利の据え置きは当研究所の予想通り。もっとも、金融政策の投票では3人の委員が反対したほか、後述するようにFOMC参加者17名の内、3名は年内の政策金利据え置きを主張しており、金融政策の意思決定では議論が白熱したことが予想される。一方、9月追加利上げの可能性を示唆していたフィッシャー副議長が政策金利据え置きに賛成していたのはやや意外であった。

今回の会合では経済見通しにおける短期的なリスクを中立に戻したほか、FOMC会合後の記者会見でイエレン議長が労働市場の回復が持続し、新たなリスクが発生しない限り年内1回の利上げが適当であると明言したことから、年内利上げはほぼ確実となった。一方、記者会見では同議長の歯切れの悪さが目立った。今回の会合で政策金利の引き上げを見送った理由や、政策金利据え置きの期間、政策金利引き上げの条件などの質問に対しては直接的な回答を避けて、回答をはぐらかせている印象を受けた。同議長は、労働市場の回復が持続する中で、労働市場の緩みにはもう一段改善の余地があり、景気が過熱する状況にはないため、政策金利の引き上げ決定に時間的な猶予があることを説明したが説得力に欠けた。FOMCにおいて政策金利引き上げを主張する委員と政策金利据え置きを主張する委員の間で意見の隔たりが依然として大きいと思料され、議事録の公表が待たれる。

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • FF金利の誘導目標を0.25-0.50%の水準に維持(変更なし)
  • 政府機関債、MBSの償還分はMBSへ再投資(変更なし)
  • 米国債の償還分は米国債へ再投資(変更なし)
  • FF金利の正常化が十分に進展するまでこの方針を続けることを見込む(変更なし)
  • 長期債を高水準で保有し続けることで緩和的な金融環境を維持する(変更なし)
 
(フォワードガイダンス、今後の金融政策見通し)
  • 委員会は、FF金利を引き上げる根拠は強まったと判断するが、当分の間、目標達成に向けた継続的な伸展の更なる証拠を待つことに決めた。(今回追加)
  • 金融政策スタンスは依然として緩和的であるため、更なる労働市場の改善や物価の2%への上昇を下支えする(変更なし)
  • FF金利の目標レンジに対する将来の調整時期や水準の決定に際して、委員会は経済の現状と見通しを雇用の最大化と2%物価目標に照らして判断する(変更なし)
  • これらの判断に際しては、雇用情勢、インフレ圧力、期待インフレ、金融、海外情勢など幅広い情報を勘案する(変更なし)
  • 現状でインフレ率が2%を下回っている状況に照らして、委員会は実績と物価目標に向けた見通しを注意深くモニターする(変更なし)
  • 委員会は、FF金利の緩やかな上昇のみを正当化するような経済状況の進展を予想しており、暫くの間、中長期的に有効となる水準を下回るとみられる(変更なし)
  • しかしながら、実際のFF金利の経路は、今後入手可能なデータに基づく経済見通しによる(変更なし)
 
(景気判断)
  • 労働市場が引き続き強くなり、経済活動は年前半の緩慢なペースから拡大が加速した(労働市場の“引き続き”が追加、また、経済活動について上方修正)
  • 失業率には、ここ数ヶ月ほとんど変化がみられないが、雇用は概して堅調な伸びとなった(前回にあった“労働力の活用(labor utilization)”の表記が削除され、失業率の表記が追加)
  • 家計消費は力強く増加した(変更なし)
  • 設備投資は引き続き軟調となっている(“引き続き”と追加し微修正)
  • インフレ率は、これまでのエネルギー価格や、エネルギー以外の輸入品の価格下落を反映して、2%の長期的な目標を下回り続けている(変更なし)
  • 市場が織り込むインフレ率は低位に留まった(変更なし)
  • ほとんどの調査に基づく長期物価見通しは、最近数ヶ月は全般的に変化に乏しい(変更なし)
 
 
(景気見通し)
  • 委員会は、金融政策スタンスの漸進的な調整により、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場の状況が強くなると、予想している(前回の“労働市場の指標(indicators)”から”状況(condition)”に修正されたほか、前回の“現状で予想している”の現状を削除)
  • インフレ率は、エネルギー価格のこれまでの下落もあって、短期的に低水準に留まるとみられる(変更なし)
  • エネルギーや輸入価格のこれまでの下落といった一時的な要因が解消することや労働市場の更に強くなることによって、(インフレ率は)中期的には2%に向けて緩やかに上昇すると予測する(小幅な変更)
  • 経済見通しに対する短期的なリスクは概ねバランスしている(今回追加)
  • 委員会は、引き続きインフレ動向と世界経済および金融情勢を注視する(変更なし)
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

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