2016年09月20日

サービス・グローバル企業のアジアにおける事業展開の研究(3):シンガポール航空―常に世界で最高水準の評価を受ける有力航空会社の戦略・特徴点は何か?

平賀 富一

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2――グループの組織構造、経営理念・ミッション、戦略

1グループの構造
直接出資企業14社の内訳は以下のようになっている。

・全額出資7社(シルク・スクート・エンジニアリング・貨物等)
・75%超のメジャー出資3社(タイガーなど)
・マイナー出資4社(インドのTATAとの合弁航空会社やエアバスとの合弁によるトレーニングセンター等)
 
なおタイにおける合弁航空会社NokScoot社は、全額出資子会社Scoot社が49%出資している孫会社にあたる(インド・タイでは、航空会社への各国の外資出資規制により、マイナー出資となっている)。
 
2|経営理念とミッション
 シンガポール航空は、プレミアムフルサービスを特徴と した航空会社であり、これをビジネスモデルの基盤 としている。当社のミッションは、航空機による移動をサービスとして高い品質で提供し、株主や従業員への最大のリターンを追求することである。 
 
3|事業戦略
・航空事業に関する事業ポートフォリオの再構築・明確化は下図のとおり。
運航効率と顧客ニーズを踏まえた、二つの軸による4つのセグメントで運航している
 
<二つの軸>
・サービス・価格:(フルサービス-低価格)
・航行距離:(長距離-短距離)本国であるシンガポールは小国のため同国内に国内線はない
図表-3 旅客便の運航体制
<各セグメントを貫く経営志向>
・シンガポール航空:高級なフルサービスの航空会社として発展し続けるために、広範なグローバルネットワークによる最高クラスの商品・サービスの提供を行いその地位を強化する。

つまり、新たな機材1、顧客、機内設備、ラウンジのレベル向上や、新たで他社と差別化されるプレミアムエコノミ―クラス 等への継続的投資によるサービス向上で、路線の拡充などで、シンガポール航空の高級なフル―サービス航空会社としての地位をさらに強固にする。
 
・マルチハブ戦略:強固なシンガポールというハブを補完し、インド・タイという大規模で成長する市場へのアクセスとなる新たなハブを構築する。このために、インドでTATAグループと合弁でVISTARA社、タイでNok航空と合弁でNokScoot社を設立している。
 
・その他、金融サービス、小売り、通信、旅行など200社以上の提携関係の活用、2年の歳月と8千万シンガポールドルを投入した新たな概念のプレミアムエコノミー席の導入、エアバスA350を代表とする新機材の投入、エアバスとの共同事業である「エアバス・アジア・トレーニングセンター(各航空会社のパイロットや乗務員を1万人規模で研修できる)などを挙げている。その結果、航空旅客収入に加えて、それらによる新たな収入によりグループの売上高を増大化する。
 
1 同社は常に世界的にも新たな機材の積極発注・導入で注目されているが、最近でもエアバスA380やA350など他に先駆けている。
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平賀 富一

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