2016年09月20日

サービス・グローバル企業のアジアにおける事業展開の研究(3):シンガポール航空―常に世界で最高水準の評価を受ける有力航空会社の戦略・特徴点は何か?

平賀 富一

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2|役員・株主構成
(1)取締役:会長のStephen Lee Ching Yen氏以下9名、執行役員との兼職は同社CEOのGoh Choon Phong氏(1990年入社、シンガポールおよび海外で、マーケティング・IT・財務・貨物部門などの要職を務める)のみである。

取締役メンバーは、内外の有力企業経営者、経済団体役員、弁護士・会計士(議員経験者も複数おり)のキャリアを持つなど多彩な顔ぶれである。
 
(2)執行役員:以下の29名にカンパニーセクレタリーも含め計30名
a.本社:CEO、執行副社長3名、上席副社長6名(営業、人事、経営企画、財務、エンジニアリング、乗務員管理、運航管理、IT等の分野を所管)
b.海外拠点:地域担当副社長6名(米州、欧州、北アジア、東南アジア、南西太平洋、西アジア・
 アフリカ)
c.主要関連企業の経営責任者6名:エンジニアリング会社、シルク航空(前任・後任の2名)、貨物
 航空会社、Budget Aviation Holdings(LCCの持株会社)、スクート
 
(3) 株主構成および政府との関係
シンガポール財務省が特別株式1株を保有。それを除いた、普通株式について、過半の55.33%を、シンガポール政府系の投資企業であるテマセック社が保有している。それ以外は、DBS銀行とシティバンク系など銀行のノミニー等が2-7位株主として1~10%を保有している。株主総数は3,960万人となっている。

同社によれば、過半を保有する筆頭株主であるテマセック社も同社の経営に関与することはなく、シンガポール政府も同社の経営に関与したり支援することはない由である。このことについて、シンガポール建国の父と呼ばれるリー・クアンユー氏(元首相)は、シンガポール政府にとって、同国民や利用者にとっての利便が向上することが大切であり、シンガポール航空を支援することはなく、企業間競争は、シンガポール航空を強くするものであり、競争の過程で同社が敗北することがあってもその救済を行うことはないと述べていた由。
 
3|業績(2015/16年度、同社の決算年度は各年4月-翌年3月である)
航空会社は、世界的・地域的な政治経済の動向(ビジネス・観光客数の変化、特に燃料価格の変化などを含む)、伝染病の流行、テロ事件などにより業績に影響を受ける。世界的な航空会社の中にも業績悪化に苦労したり経営破たんするケースがしばしばみられる。

そのような経営環境の激変の中、シンガポール航空は、上場以来、一度も通年単位の決算で損失を出したことがない企業である。2015/16年度(2016年3月末決算)の概況は以下のとおりである。
 
・連結総営業収益:15,228百万シンガポールドル(対前年2.2%微減)、内、シンガポール航空単体は連結合計の76.7%を占める。

・連結営業利益:681百万シンガポールドル(対前年66.4%増)内、シンガポール航空単体は連結合計の71.2%を占める。営業利益の改善の最大の要因は、コストの31%と最大項目である燃料費の改善である。

・連結純利益:804百万シンガポールドル(対前年118.6%増)シンガポール航空単体は連結合計の83.6%を占める。
 
・運航実績(シンガポール航空単体):94,267百万乗客キロ、118,367百万座席キロ、座席利用率79.6%
図表-1 売上高・営業利益/図表-2 コスト構造
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平賀 富一

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