2016年09月06日

年金改革ウォッチ 2016年9月号~ポイント解説:将来人口推計を巡る3つの課題

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   中嶋 邦夫

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■要旨

1 ―― 先月までの動き

年金事業管理部会では、ねんきんネットの活用促進やねんきん定期便の見直し等について、説明が行われました。行政事業レビューでねんきん定期便の費用を合理化するよう指摘されたことを受けて、ねんきんネットの利用者拡大や紙媒体から電子媒体への切り替えを、数値目標を建てて推進すること等が示されました。

2 ―― ポイント解説:公的年金財政と積立金運用の関係

8月1日、社会保障審議会人口部会が4年半ぶりに招集され、来年1月公表予定の次期将来人口推計に向けた議論が始まりました。将来人口推計は、年金財政の見通しだけでなく、さまざまな政策を立てる上で重要な前提となります。本稿では、将来人口推計を巡る3つの課題を考えます。

  1|政策担当者の課題:「希望出生率」に基づく試算の使い方
  2|推計作成者の課題:生涯婚姻率の高位・低位の明確化
  3|国民の課題:危機意識は重要だが、危機への対処がより重要
 

1 ――― 先月までの動き

1 ―― 先月までの動き

年金事業管理部会では、ねんきんネットの活用促進やねんきん定期便の見直し等について、説明が行われました。行政事業レビューでねんきん定期便の費用を合理化するよう指摘されたことを受けて、ねんきんネットの利用者拡大や紙媒体から電子媒体への切り替えを、数値目標を建てて推進すること等が示されました。
 
○社会保障審議会 年金事業管理部会
8月4日(第26回)日本年金機構の平成27事業年度業務実績の評価、ねんきんネット・ねんきん定期便の見直し他
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000132758.html    (配布資料)
 

2 ――ポイント解説:将来人口推計を巡る3つの課題

2 ―― ポイント解説:将来人口推計を巡る3つの課題

8月1日、社会保障審議会人口部会が4年半ぶりに招集され、来年1月公表予定の次期将来人口推計に向けた議論が始まりました。将来人口推計は、年金財政の見通しだけでなく、さまざまな政策を立てる上で重要な前提となります。本稿では、将来人口推計を巡る3つの課題を考えます。
図表1 希望出生率の計算過程 1|政策担当者の課題:「希望出生率」に基づく試算の使い方
今年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、希望出生率(個人が希望する子どもの数の平均。結婚を望まない人等も考慮した値)の実現を目標に、子育て支援等を進める方針が示されました。この希望出生率に基づいた将来人口の試算は、同様の概念が示された2007年1と同じく、定例の(いわば自然体の)将来人口推計とは別に実施される予定です。

別の実施とはいえ、試算結果の利用には慎重さが必要です。上記のプランでは様々な方策が打ち出されていますが、それらが実現しても希望出生率を達成できるかは分かりません。希望出生率に基づいた試算は目標達成に向けた糧にはなりますが、目標達成を前提とした計画立案には注意が必要です。
図表2 2012年推計の生涯婚姻率(女性) 2|推計作成者の課題:生涯婚姻率の高位・低位の明確化
将来は不確定なため、将来人口推計は幅を持って理解する必要があります。そのため推計では、出生率や死亡率について高位や低位で設定した結果も示されています。しかし細かく見ると、出生率の要素の1つである生涯婚姻率の高位・低位の設定内容は、過去数回の推計で異なっており、明確化されているとは言えません。

その背景には、婚姻率の推移が変化しており、それに応じて中位の推計方法が変わっているという事情もあります。具体的な推計方法は状況に応じて変えるとしても、推計の利用者(国民)が推計の幅の意味合いや前述した希望出生率との違いを理解するためには、高位や低位の意味合いを明確にして、毎回の推計で共通したものにするべきでしょう。
図表3 子育て支援企業に認められる「プラチナくるみんマーク」 3|国民の課題:危機意識は重要だが、危機への対処がより重要
将来人口推計には、「出生率の見込みが甘いのではないか」という人々の不安がつきまといがちです。「もっと悪くなる可能性がある」という危機意識は重要ですが、より重要なのは危機への対処です。政府は子育て支援を進めていますが、個人レベルでの意識や行動も重要です。

例えば、政府は子育てを支援する企業を認定して「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク」2の利用を認めていますが、皆さんやご家族がお勤めの企業は認定を受けているでしょうか。認定は1つの象徴ですが、会社レベルだけでなく、個々人が子育て支援を意識し行動することが重要でしょう。
 
1 当時の柳澤厚生労働大臣が主導し、社会保障審議会 人口構造の変化に関する特別部会で議論された。希望出生率と同様の概念は当初「潜在出生率」と呼ばれていたが、委員の批判を受けて変更された。
2 概要は、松浦民恵(2015) 「次世代法の認定制度見直しに企業はどう対応するか-女性活躍推進法案も視野に」を参照。

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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度

(2016年09月06日「保険・年金フォーカス」)

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