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国の役割はどこへ行った? -ふるさと納税シリーズ(4)ふるさと納税研究会からワンストップ特例制度創設に至るまで
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
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4――不公平感もなく、自治体の負担も少ない制度へ
ふるさと納税制度が高額納税者ほどメリットの大きい不公平な制度となったのは、[A](所得税の還付)が税額控除ではなく、所得控除を通じて行われるためである。また、税額軽減効果の一部が所得税の還付によって行われるため、確定申告を行ったことがない給与所得者には使いにくいものとなっている。所得税による税額軽減効果を享受するには、確定申告の為の書類作成等を行う必要があるからだ。不公平感と不便さの根本は、「国も相当程度の役割を担う必要性」にある。にもかかわらず、平成27年度に創設されたワンストップ特例制度を全適用対象寄附者が利用すると、国は果たすべき負担の50%程度も免除される可能性がある。何かおかしくはないだろうか。いっそのこと、国の役割の果たし方を抜本的に変えてはどうだろうか。第一の変更案は、報告書が望ましいと考えるように、所得税についても従来の所得控除方式を改め、税額控除方式にする方法である。しかし、税額軽減効果の一部を所得税で行う以上、ワンストップ特例制度を利用すると、寄附者の減税効果が減少するか、国が負担すべき部分を自治体が負担することになる。そこで、筆者は第二の変更案として税額軽減効果を住民税のみで行う一方、国の役割は平成19年に行われたように税源移譲で担う案を提言する。
最後に、筆者案の課題についても記しておく。
まず、適切な税源移譲額(税率)を検討する必要がある。ふるさと納税を実施するのは極一部の納税者なのに、ふるさと納税を実施しない納税者分も税源移譲されるのはいかがなものか。適切な税源移譲額を検討する際、このような批判が国側から出てきそうだ。しかし、「自治体間の競争が進み、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらために考えるきっかけへつながる」こともふるさと納税の意義のはずだ。この意義には、住民に他の自治体に寄附しないでおこうと思わせる地域のあり方(競争の仕方)があってもいいはずだ。したがって、ふるさと納税を実施しない納税者分も国から税源移譲されても良いと考える。
次に、所得税の寄付金控除の対象から、ふるさと納税を外す必要がある。所得税の寄付金控除の対象からふるさと納税が外れるならば、所得税の寄付金控除における寄附控除の上限も縮小する手間が必要だ。しかし、これにより納税者間の不公平感が大幅に緩和されるだけでなく、自治体の負担も減少するのだから、それくらい手間をかけても良いと思う。昭和37年に寄付金控除が創設された際は、高額所得者ほど有利な制度にならないように税額控除方式であったのに、昭和42年に税制の簡素化を目的として所得控除方式に改組された経緯を踏まえると、所得税も税額控除方式とする報告書案よりは簡素でよいと思うのだが、いかがだろうか。
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(2016年08月26日「基礎研レター」)
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