2016年08月23日

少額短期保険について-制度創設から10年間の成長

小林 雅史

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4情報開示
情報開示の状況はあまり変わらない。

生保会社・損保会社においては、保険業法第111条により、業務および財産の状況に関する説明書類(いわゆるディスクロージャー資料)を作成し、本店や支店などに備え付けて公衆に縦覧させなければならないとされている。

少額短期保険業者に対しても、保険業法第272条の17において、同様のディスクロージャー資料の公衆への縦覧義務が定められている。

生命保険協会や損害保険協会では、法律で定められた開示項目のほか、自主的に開示すべき項目のガイドラインを定めるとともに、各社ともホームページで「○○生命(損保)の現状」などの名称で、各事業年度ごとのディスクロージャー資料を開示しているが、少額短期保険協会では現在のところガイドラインは作成しておらず、各社のディスクロージャーに対する姿勢も区々である。

2013年度末時点の77社中、
A:ディスクロージャー資料をホームページで公開している会社=30社(39.0%)
B:ディスクロージャー資料は公開していないが、貸借対照表・損益計算書をホームページで公開している会社=39社(50.6%)
C:ディスクロージャー資料、貸借対照表・損益計算書ともホームページで公開していない会社=8社(10.4%)
となっていた。

2015年度末では、85社中、
A:31社(36.5%)
B:45社(52.9%)
C:9社 (10.6%)
と、大きな変化は見られない。
 

3――おわりに

3――おわりに

少額短期保険業界の最近の状況としては、つぎの4点が挙げられる。

第一は、保有契約は引き続き順調に増加していることである。

少額短期保険の保有契約の伸びは、2014年は対前年+8.2%、2015年は+9.6%と、安定的な成長が続いている。

第二は、ディスクローズの充実が進んでいないことである。

ディスクローズの充実については過去から指摘があったが、状況は変わらず、今後の急務であるものと考えられる。

第三は、一部の会社ではあるが、少額短期保険から撤退するケースも出ていることである。

販売している医療保険について、不採算となって収支の改善が見込めないとして、2016年2月から新規契約の募集および満期契約の更新を停止した会社がある。

第四は、少額短期保険の認知度向上に向けた取組の充実である。

日本少額短期保険協会は2015年から、3月2日を「ミニ保険の日」と制定したり6、孤独死の現状レポートを公表する7など、少額短期保険の認知度の向上のためさまざまな取組を行っている。

少額短期保険は、一般の保険業と同様、さまざまなリスクに対する相互扶助という公共性の高い事業であり、今後の少額短期保険業界の健全な発展を心から期待したい。
 
 
6  「『少額短期保険(ミニ保険)の日』を制定しました」(2015年2月3日)、日本少額短期保険協会ホームページ。
7  「孤独死の現状レポート【孤独死対策委員会】」(2016年3月10日)、日本少額短期保険協会ホームページ。
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研究・専門分野

(2016年08月23日「保険・年金フォーカス」)

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