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EUソルベンシーIIの動向-UFR(終局フォワードレート)水準の見直しを巡る動きと今後の展望-
中村 亮一
オランダの監督当局であるDNBは、ソルベンシーIIのUFRのさらに低い水準への引き下げとユーロの割引曲線の収束速度の見直しを呼びかけている。
DNBは、「現在のUFRと市場金利との差は、『低金利環境が保険会社の財務報告において一部しか反映されず、保険会社のソルベンシー・ポジションがあまりにも楽観的な財務状況を示す程度まで』、近年着実に増加している。」と述べている。
さらに、現在のコンサルテーション・ラウンドはUFRの水準を決定することに関連しているが、DNBはEIOPAに対して、UFRの計算方法の他の側面を検討するように促している。具体的には、DNBは、20年のLLP(最終流動性ポイント3と40年の曲線の補外を拡張することを提案している。
新しいUFR方法論の影響は「オランダの生命保険会社は、平均して多くの長期負債を有しているので、オランダの保険会社にとって相対的に大きいものかもしれない。」とDNBは述べている。
なお、DNBは、2015年7月14日に、オランダの年金基金の負債評価のためのUFRの算出方法を変更し、その結果として、2015年7月15日から適用するUFR水準を4.2%から3.3%に引き下げている。今回の動きを受けて、こうした年金基金のUFRを算出する方法が「最も適切である」と主張している4。
3 市場金利をそのまま採用する最終点
4 オランダの年金負債評価におけるUFRについては、基礎研レター「超長期の金利水準はどのように決定されていくべきなのか―UFR(終局フォワードレート)について―」(2015.7.13)を参照いただきたい。
4―CPで示されたUFR水準の見直しに伴う影響
このように、CPの提案は、UFR水準の引き下げに伴う各種の影響の大きさを勘案して、毎年の最大の変更幅を20bpにとどめてはいるが、それでもUFRが有すべき安定性の観点からは、変更による影響の度合いを指摘するコメントが多数提出されている。
1|全体の影響度
UFR水準の引き下げは、保険負債の増加を通じて、保険会社のソルベンシー・ポジションの悪化をもたらすことになる。EIOPAによれば、UFRの水準が3.7%になった場合、保険会社の適格自己資本は平均で5%程度侵食されることになる。
2|各国毎の影響度
ただし、UFR水準の引き下げの影響は、欧州全域で均一となっているわけではなく、会社の負債構造等によっても異なってくることになる。さらには、表面的なソルベンシー比率は、各種の経過措置の使用の有無によっても異なってくることになる。
具体的には、国毎にみた場合、特に、高い予定利率保証水準やデュレーション・ギャップの存在から、ドイツとオランダの保険会社のソルベンシー比率等に大きな影響を与えることになる。
ドイツの場合、移行措置が広範に認められていることから、ソルベンシー比率への影響は一定程度緩和されることになる。ただし、低いUFRの水準は、保証水準を引き下げた商品等の低資本商品(Capital Light Products)へのシフトを加速させていくことになる。
オランダの場合、DNBの厳しいスタンスにより、移行措置の使用等が認められていないため、よりUFR水準の引き下げの影響を直接的に受けることになる。
中村 亮一
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