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2016年08月22日
EUソルベンシーIIの動向-UFR(終局フォワードレート)水準の見直しを巡る動きと今後の展望-
2―UFR(終局フォワードレート)の概念及びCPの概要
UFRの概念及びEIOPAが公表したCPの概要について、前回のレターや前回の保険年金フォーカスから抽出して、簡単に説明しておく。
1|UFRとは
一般的に、市場で得られる一定の流動性がある信頼度の高い債券の金利は、20年、30年といった期間までに限定される。これに対して、生命保険会社は終身保険等の超長期の保険商品を販売している。このため、将来的にこれらの契約から収入される保険料や支払われる保険金等のキャッシュフローを、現時点まで割り引いて、現在価値を求めることによって、適正な責任準備金評価を行うためには、50年や60年といった超長期の金利水準の設定も重要になってくる。こうした超長期の金利水準の設定のような、既知のデータに基づいて、そのデータの範囲の外側で予想される数値を求める手法を、一般的に「補外法(Extrapolation method)」と呼んでいる。UFRを使用する手法は、そのうちの代表的な手法の1つである。
具体的には、(スポットレートではなく)フォワードレートが終局的に(外部から定められた)一定の水準に向けて収束するとの前提にたって、超長期の金利水準を決定する手法であり、この時に設定される終局のフォワードレート水準が「UFR(Ultimate Forward Rate:終局フォワードレート)」となる。
UFRを使用する補外法において決定すべき要素はいくつかあるが、以下では、現在の見直しにおいて大きな議論となっている最終のフォワードレートの収束水準である「UFRの水準」、しかも通貨「ユーロ」に対するものを中心に報告する。
2|現在のUFR水準
現在のユーロに対する4.2%というUFRの水準については、長期のフォワードレートを説明する経済ファクターとして、安定性や信頼性等を考慮して設定される、1) 期待インフレ率と、2) 短期実質金利の長期平均の予測、に基づいて定められている。ユーロについては、過去のデータ等に基づいて、「長期期待インフレ率2%と短期実質金利の長期平均2.2%の合計」として4.2%としている。
3|CPで示されたUFR水準の見直しの概要
(1)UFR水準の見直し
今回のCPで示されたUFR水準の見直しにおいても、UFRの水準を、1) 期待インフレ率と、2) 期待実質金利、との合計とする考え方は変更していない。
「1) 期待インフレ率」については、中央銀行のインフレ目標に基いて、1%、2%、3%、4%の4つのバケットに区分している。
「2) 期待実質金利」については、全ての通貨に単一の実質金利を使用している。公表されたAMECO2及びOECD(経済協力開発機構)のデータを使用して得られる過去のデータの幾何的重み付けによる加重平均に基づいている。期間プレミアムを排除するために短期実質金利を使用している。
具体的には、この見直しに伴い、ユーロについては、「2) 期待実質金利」が現行の2.2%から1.7%に引き下げられたため、UFRの水準は現行の4.2%から3.7%に引き下げられることになる。
なお、UFRの変更は、毎年20bpsを超えることはできない。さらに、実質金利の要素の変化が5bps以下の場合には変更されない。
(2)UFR水準の変更ルール
新しいUFRの方式については、2016年のUFRは現在の水準とすることを前提として、2017年からの導入を予定している。この場合の2017年以降のUFR水準の変更(引き下げ)の仕方について、3つの選択肢が提案されている。
第1の選択肢は、2017年以降の当初の5年間の変更を10bpsに制限する。この場合、2017年 4.1%、2018年 4.0%、2019年 3.9%、2020年 3.8%、2021年 3.7% の水準を適用することになる。
第2の選択肢は、2017年以降の毎年の変更幅を20bpsに制限する。この場合、2017年 4%、2018年 3.8%、2019年 3.7% の水準を適用することになる。
第3の選択肢は、段階的導入をせずに、2017年から3.7%の率を適用する。
このうち、UFR水準の変更による一時的な責任準備金積立負担の影響の大きさから、第3の選択肢は適切ではない、と考えられている。また、第1の選択肢についても、継続ベースでの毎年の変更幅である20bpsよりも低い変更幅制限である10bpsを制度改正時に適用する必要性はない、と考えられている。従って、第2の選択肢が志向されている。
2 AMECO(Annual macro-economic database)は、DG ECFIN(the European Commission's Directorate General for Economic and Financial Affairs:欧州委員会経済・金融総局)の年刊マクロ経済データベースである。
1|UFRとは
一般的に、市場で得られる一定の流動性がある信頼度の高い債券の金利は、20年、30年といった期間までに限定される。これに対して、生命保険会社は終身保険等の超長期の保険商品を販売している。このため、将来的にこれらの契約から収入される保険料や支払われる保険金等のキャッシュフローを、現時点まで割り引いて、現在価値を求めることによって、適正な責任準備金評価を行うためには、50年や60年といった超長期の金利水準の設定も重要になってくる。こうした超長期の金利水準の設定のような、既知のデータに基づいて、そのデータの範囲の外側で予想される数値を求める手法を、一般的に「補外法(Extrapolation method)」と呼んでいる。UFRを使用する手法は、そのうちの代表的な手法の1つである。
具体的には、(スポットレートではなく)フォワードレートが終局的に(外部から定められた)一定の水準に向けて収束するとの前提にたって、超長期の金利水準を決定する手法であり、この時に設定される終局のフォワードレート水準が「UFR(Ultimate Forward Rate:終局フォワードレート)」となる。
UFRを使用する補外法において決定すべき要素はいくつかあるが、以下では、現在の見直しにおいて大きな議論となっている最終のフォワードレートの収束水準である「UFRの水準」、しかも通貨「ユーロ」に対するものを中心に報告する。
2|現在のUFR水準
現在のユーロに対する4.2%というUFRの水準については、長期のフォワードレートを説明する経済ファクターとして、安定性や信頼性等を考慮して設定される、1) 期待インフレ率と、2) 短期実質金利の長期平均の予測、に基づいて定められている。ユーロについては、過去のデータ等に基づいて、「長期期待インフレ率2%と短期実質金利の長期平均2.2%の合計」として4.2%としている。
3|CPで示されたUFR水準の見直しの概要
(1)UFR水準の見直し
今回のCPで示されたUFR水準の見直しにおいても、UFRの水準を、1) 期待インフレ率と、2) 期待実質金利、との合計とする考え方は変更していない。
「1) 期待インフレ率」については、中央銀行のインフレ目標に基いて、1%、2%、3%、4%の4つのバケットに区分している。
「2) 期待実質金利」については、全ての通貨に単一の実質金利を使用している。公表されたAMECO2及びOECD(経済協力開発機構)のデータを使用して得られる過去のデータの幾何的重み付けによる加重平均に基づいている。期間プレミアムを排除するために短期実質金利を使用している。
具体的には、この見直しに伴い、ユーロについては、「2) 期待実質金利」が現行の2.2%から1.7%に引き下げられたため、UFRの水準は現行の4.2%から3.7%に引き下げられることになる。
なお、UFRの変更は、毎年20bpsを超えることはできない。さらに、実質金利の要素の変化が5bps以下の場合には変更されない。
(2)UFR水準の変更ルール
新しいUFRの方式については、2016年のUFRは現在の水準とすることを前提として、2017年からの導入を予定している。この場合の2017年以降のUFR水準の変更(引き下げ)の仕方について、3つの選択肢が提案されている。
第1の選択肢は、2017年以降の当初の5年間の変更を10bpsに制限する。この場合、2017年 4.1%、2018年 4.0%、2019年 3.9%、2020年 3.8%、2021年 3.7% の水準を適用することになる。
第2の選択肢は、2017年以降の毎年の変更幅を20bpsに制限する。この場合、2017年 4%、2018年 3.8%、2019年 3.7% の水準を適用することになる。
第3の選択肢は、段階的導入をせずに、2017年から3.7%の率を適用する。
このうち、UFR水準の変更による一時的な責任準備金積立負担の影響の大きさから、第3の選択肢は適切ではない、と考えられている。また、第1の選択肢についても、継続ベースでの毎年の変更幅である20bpsよりも低い変更幅制限である10bpsを制度改正時に適用する必要性はない、と考えられている。従って、第2の選択肢が志向されている。
2 AMECO(Annual macro-economic database)は、DG ECFIN(the European Commission's Directorate General for Economic and Financial Affairs:欧州委員会経済・金融総局)の年刊マクロ経済データベースである。
3―CPに対する関係団体の意見や反応
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