2016年08月18日

円高はいつまで続く?~マーケット・カルテ9月号

基礎研REPORT(冊子版) 2016年9月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利の見通し ドル円は月初から一進一退が続いた後、16日に一時99円台に突入。足元も再び100円を割り込んでいる。米国の早期利上げ観測が低迷しているうえ、日銀金融緩和後退への警戒もあり、円高圧力が強まっている。

米景気不安が残るなか、大統領選前にFRBが利上げに踏み切る可能性は低い。今後も10月いっぱいまで円高が進みやすい地合いが続き、円はたびたび上値を試すだろう。9月会合で「総括的な検証」を予告している日銀の動きも重要な材料となるが、市場の予想を大きく上回る対応はもはや困難であり、円安材料としては期待できない。むしろ、失望の円高に注意が必要だ。その後11月に入ると、米大統領選で現状優位にあるクリントン氏が勝利、米国の先行き不透明感が払拭されること、さらに12月利上げが見えてくることで、「日米金融政策の方向感の違い」と「市場のリスク選好」という円安ドル高の条件が揃い、円安へ向かうと予想している。一方、トランプ氏勝利がリスクシナリオとなるが、この場合は疑いなく急激な円高になるだろう。

ユーロ円も今月に入ってやや円高ユーロ安に振れている。9月にはECBの緩和強化が見込まれるため、今後もしばらくユーロ安トレンドが予想される。その後、11月にはドル円の円安がユーロ円にも波及することで、3ヵ月後の水準は現状比で若干の円安ユーロ高とみている。

長期金利は、日銀の検証を踏まえた緩和縮小が警戒され、現在▲0.0%台後半までマイナス幅を縮小している。ただし、金利の押し下げは日銀が重視してきた政策の波及経路なだけに、金利上昇は許容できず、フォワードガイダンスの強化といった金利抑制策が採られる可能性が高い。3ヵ月後は現状比でやや低下と予想している。
(執筆時点:2016/8/18)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2016年08月18日「基礎研マンスリー」)

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