2016年08月15日

QE速報:4-6月期の実質GDPは前期比0.0%(年率0.2%)~ほぼゼロ成長も、実態は2四半期連続で年率1%成長

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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●4-6月期は前期比年率0.2%と2四半期連続のプラス成長

本日(8/15)発表された2016年4-6月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.0%(前期比年率0.2%)と2四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測7月29日:前期比0.1%、年率0.6%)。

外需寄与度は前期比▲0.3%と4四半期ぶりのマイナスとなり、企業収益の悪化を受けて設備投資は前期比▲0.4%と2四半期連続で減少した。一方、1-3月期のうるう年による押し上げの反動にもかかわらず民間消費が前期比0.2%の増加となり、住宅ローン金利低下の追い風や消費増税延期決定前に駆け込み需要が発生していた影響から住宅投資が前期比5.0%の高い伸びとなった。また、政府消費は1-3月期の前期比0.9%から同0.2%へと伸びが鈍化したものの、2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行の効果から公的固定資本形成が前期比2.3%と1-3月期の同0.1%から伸びが加速し、国内需要は1-3月期に続いて民需、公需ともに前期比プラスとなった。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.3%(うち民需0.2%、公需0.1%)、外需が▲0.3%であった。
 
名目GDPは前期比0.2%(前期比年率0.9%)と2四半期連続の増加となり、実質の伸びを上回った。GDPデフレーターは前年比0.8%(1-3月期:同0.9%)、前期比0.2%(1-3月期:同0.3%)となった。円高、原油安の影響などから民間消費を中心に国内需要デフレーターが前期比▲0.2%と2四半期連続で低下したが、輸入デフレーターの低下幅(前期比▲4.5%)が輸出デフレーターの低下幅(同▲2.1%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
需要項目別結果
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比0.2%と2四半期連続で増加した。1-3月期の同0.7%から伸び率は大きく低下したが、1-3月期がうるう年に伴う日数増の影響で前期比0.4%程度押し上げられ、4-6月期はその反動で▲0.4%程度押し下げられている(当研究所の試算値)ことを考慮すれば、弱い数字とはいえない。実態としては1-3月期から4-6月期にかけて伸びが若干高まったと考えられる。

名目雇用者報酬は前年比1.9%となり1-3月期の同2.5%から伸び率が低下したが、実質雇用者報酬は前年比2.5%と1-3月期の同2.7%に続き2%台の高めの伸びとなった。春闘賃上げ率が前年を下回ったこともあり、一人当たり名目賃金は伸び悩みが続いているが、雇用者数の高い伸びが雇用者報酬の増加に大きく寄与している。さらに、年明け以降の円高、原油安の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者報酬を押し上げている。

年明け以降の円高の進展を受けて企業部門は厳しさを増しているが、家計にとっては円高による物価下落がむしろ追い風となり、消費を取り巻く環境は改善している。
 
住宅投資は前期比5.0%と大幅な増加となった。日銀のマイナス金利導入を受けた住宅ローン金利の低下に加え、2017年4月に予定されていた消費税率引き上げを見越した駆け込み需要が住宅着工を大きく押し上げた。ただし、消費税率の引き上げは延期が決まり、住宅購入を急ぐ必要はなくなったため、増勢基調は今後一服する可能性がある。
 
設備投資は前期比▲0.4%と2四半期連続の減少となった。円高や海外経済の減速を背景に企業収益が悪化していることが企業の投資姿勢の慎重化につながったと考えられる。
 
民間在庫は前期比・寄与度▲0.0%と4四半期連続のマイナスとなった。ただし、在庫品増加額は0.7兆円のプラスとなっており、GDP統計上は在庫の積み上がりが続いていることを意味している。特に、流通在庫は1-3月期(1.7兆円)、4-6月期(1.2兆円)ともに1兆円を上回る積み上がりとなっている。在庫調整は徐々に進捗しているものの、調整圧力は残存している。
 
公的需要は、政府消費が前期比0.2%と増加を続ける中、公的固定資本形成が2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行から1-3月期の前期比0.1%から同2.3%へと伸びが大きく加速した。
 
外需寄与度は前期比▲0.3%と4四半期ぶりのマイナスとなった。海外経済の減速、円高の進展を背景に財貨・サービスの輸出が前期比▲1.5%と2四半期ぶりの減少となった。国内需要の弱さを反映し、財貨・サービスの輸入も前期比▲0.1%の減少となったが、輸出の減少幅が輸入の減少幅を上回ったため、外需は成長率の押し下げ要因となった。
 
(4-6月期はほぼゼロ成長も、個人消費の持ち直しは明るい材料)
4-6月期の成長率は1-3月期から大きく低下したが、GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われておらず、1-3月期は日数増により年率1%程度押し上げられる一方、4-6月期は年率▲1%程度押し下げられている(当研究所による試算値)。この影響を除けば実質GDPは1-3月期、4-6月期ともに前期比年率1%程度となる。景気が2015年度初め頃から続く足踏み状態から完全に脱したとは言えないが、消費増税後低迷が続いてきた個人消費が持ち直しつつあることは明るい材料と考えられる。

現時点では、7-9月期の実質GDPは円高の影響などから輸出、設備投資は低迷が続くものの、実質雇用者報酬の高い伸びを背景に民間消費の伸びが高まることなどから、年率0%台の小幅なプラス成長を予想している。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2016年08月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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