2016年08月08日

【7月米雇用統計】雇用者数は前月比25.5万人増。今後の持続可能性に疑問も、文句のつけようのない良好な結果

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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3.事業所調査の詳細:広範な業種で雇用が増加

(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+20.1万人(前月:+25.4万人)と、前月を下回ったものの、20万人超と好調を維持した(図表2)。

サービス部門の中では、大手通信会社の従業員ストの反動で前月に大幅な増加となった情報関連が前月比横這い(前月:+4.2万人)となったほか、小売が+1.5万人(前月:+2.6万人)と伸びが鈍化したものの、専門・ビジネスサービスが+7.0万人(前月:+5.3万人)、医療サービスが+4.3万人(前月:+3.9万人)と前月から伸びが加速した。

財生産部門は、前月比+1.6万人(前月:+0.5万人)と2ヵ月連続で増加した。資源関連は▲0.6人(前月:▲0.8万人)と雇用の減少は持続しているものの、製造業が+0.9万人(前月:+1.5万人)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、建設業が+1.4万人(前月:▲0.3万人)と、前月から増加に転じた
最後に、政府部門は前月比+3.8万人(前月:+3.3万人)と、前月から伸びが加速した。内訳をみると連邦政府が+0.3万人(前月:+0.6万人)と前月から伸びが鈍化したものの、州・地方政府が+3.5万人(前月:+2.7万人)と前月から伸びが加速した。
前月(6月)と前々月(5月)の雇用増(改定値)は、前月が+29.2万人(改定前:+28.7万人)と+0.5万人上方修正されたほか、前々月も+2.4万人(改定前:+1.1万人)と+1.3万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+1.8万人の上方修正となった(図表3)。
 
なお、BLSの公表に先立って8月3日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+17.9万人(前月改定値:+17.6万人、市場予想:+17.0万人)となり、前月改定値、市場予想を上回った。ADP社の統計は、過去3ヵ月に17万人台後半~18万人程度で安定した動きとなっており、雇用統計が大きく振れるのと対照的となっている。もっとも、過去3ヵ月の月間平均増加数は、ADP社が17.8万人増に対して雇用統計が19.0万人増と両統計の乖離は相当程度修正された。

7月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.69ドル(前月:25.61ドル)となり、前月から+8セント増加した。週当たり労働時間は34.5時間(前月:34.4時間)と、6ヵ月ぶりに増加した。その結果、週当たり賃金は886.31ドル(前月:880.98ドル)と、前月から増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働参加率が2ヵ月連続の改善

家計調査のうち、7月の労働力人口は前月対比で+40.7万人(前月:+41.4万人)と、2ヵ月連続で大幅な増加となった。内訳を見ると、失業者数が▲1.3万人(前月: +34.7万人)と減少する一方、就業者数が+42.0万人(前月:+6.7万人)と大幅な増加になったことが労働力人口の増加に寄与した。非労働力人口は▲18.4万人(前月:▲19.1万人)と、こちらも2ヵ月連続の減少となった。この結果、労働参加率は62.8%(前月:62.7%)と2ヵ月連続の改善となった(図表5)。
失業率は4.9%と前月に一致したものの、就業者数が増加する中で非労働力人口が減少しており、職探しを再開して労働市場に再参入する人が増加した結果であり、労働需給の改善が持続していると判断できる(図表6)。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
次に、7月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、202.0万人(前月:197.9万人)となり、前月対比では+4.1万人(前月:+9.4万人)と2ヵ月連続の増加となった。この結果、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも26.6%(前月:25.8%)と、2ヵ月連続で前月から増加した(図表7)。さらに、平均失業期間は28.1週(前月:27.7週)と、こちらも2ヵ月連続の悪化となった。
 
最後に、周辺労働力人口(195.0万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(594.0万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4をみると、7月は9.7%(前月:9.6%)と、前月から上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は4.8%ポイント(前月:4.7%ポイント)と、前月から+0.1%ポイント拡大した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2016年08月08日「経済・金融フラッシュ」)

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