- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 財政・税制 >
- 地方交付税の不交付団体増加が意味することとは~「平成28年度普通交付税の算定結果等」について~
先般、総務省が公表した「平成28年度普通交付税の算定結果等」によると、地方交付税の不交付団体は、H22年度以降増加傾向にあり、特にH27年度からH28年度にかけては60団体から77団体へと大きく増加している。では、このことは日本の地方財政が着実に改善していることを示しているのだろうか。本稿では、不交付団体の増減要因、交付団体・不交付団体それぞれの特色を踏まえたうえで、不交付団体の増加が意味することについて解説する。
1 全地方公共団体数は1,765団体
■目次
1――地方交付税の不交付団体は増加傾向。その主因は地方税収の増加
2――交付団体は人口規模と地方交付税への依存度が逆相関。
不交付団体は人口規模に拠らない。
3――不交付団体増加の意味することとは
1――地方交付税の不交付団体は増加傾向。その主因は地方税収の増加
地方交付税の94%を占める普通交付税の額は、簡略化すると、財政運営に必要とされる「基準財政需要額」に対して、地方税等収入に基づき算定される「基準財政収入額」が下回った際に、不足分を解消するように決定される。したがって、基準財政需要額が安定的だと考えれば、不交付団体の増加(減少)の主因として、地方税収の増加(減少)が考えられる。
実際に、H15年度以降は、不交付団体の割合と地方税収の間には高い相関関係が見られる。H22年度以降の不交付団体の増加については、リーマンショックや東日本大震災後の緩やかな景気回復が原因と考えられる。また、H26年度から27年度にかけての増加は、H26年度に実施された消費税率引き上げによる地方消費税収効果がH27年度から本格的に現れたことも原因と考えられる。
2――交付団体は人口規模と地方交付税への依存度が逆相関。不交付団体は人口規模に拠らない。
そこで、全地方公共団体の95%以上を占める交付団体を対象に「人口規模」と「歳入に対する地方交付税の割合(地方交付税への依存度)」との関係について見ると、推測通り逆相関が見られる(相関係数▲0.52)。
一方で、不交付団体を見ると、都道府県は東京都のみ、市町村においてはH28年度に不交付団体から交付団体となった団体はなく、不交付団体は17団体の純増(60団体→77団体)となった。個別市町村に着目すると、都心部の団体が多いが、川崎市を除いて人口は50万人未満であり、不交付団体が必ずしも人口規模が大きいとは言えない。大半は巨額の固定資産税収が期待できる発電所所在地や法人住民税収に恵まれる企業城下町、観光資源を生かした観光地等に分類される。このように不交付団体は極めて例外的な存在にとどまっている。
3――不交付団体増加の意味することとは
また、今後の不交付団体数についても、現行制度のままでは、財源面で国に依存する地方公共団体が大半を占める現状から大きく改善されず、むしろ少子高齢化による人口減少によって、基準財政需要額よりも基準財政収入額の減少度合いが大きくなり、地方交付税への依存度が更に高まることが予想される。しかし、国の財政事情を踏まえると、ますます各団体の自立が求められるだろう。一方で、現行の地方交付税制度には、基準財政収入額に関わらず、すべての地方公共団体が一定の行政サービスを提供するための財源保障機能があるため、各団体の自立意欲を削いでしまうという指摘もある。今後望まれるのは、各団体が能動的に、安定的な財源の確保や適切な歳出抑制に取り組むことであり、地方税制と地方交付税制度の抜本的な見直しが必要であるだろう。
神戸 雄堂
研究・専門分野
(2016年08月05日「基礎研レター」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月24日
中国経済の現状と注目点-24年1~3月期は好調な出だしとなるも、勢いが持続するかは疑問 -
2024年04月24日
人手不足とインフレ・賃上げを考える -
2024年04月24日
米国でのiPhone競争法訴訟-司法省等が違法な独占確保につき訴え -
2024年04月23日
他国との再保険の監督に関する留意事項の検討(欧州)-EIOPAの声明 -
2024年04月23日
気候変動-温暖化の情報提示-気候変動問題の科学の専門家は“ドラマが少ない方向に誤る?”
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【地方交付税の不交付団体増加が意味することとは~「平成28年度普通交付税の算定結果等」について~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
地方交付税の不交付団体増加が意味することとは~「平成28年度普通交付税の算定結果等」について~のレポート Topへ