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徒歩帰宅訓練、やってみました!-地上踏査でつくる頭の中の“ ナビゲーション・マップ”
基礎研REPORT(冊子版) 2016年8月号
川村 雅彦
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25㎞の徒歩帰宅訓練
会社(千代田区)から自宅(東京都西部)までの25kmを、還暦を過ぎ膝も完全ではない身体がどこまで耐えられるのか。どのルートがベストで、何時間かかるのか。首都直下地震の可能性もあり、確認しておきたかった。
山手線を越すまでが一苦労
この道は初めてではあったが、1kmほど行くと、“ややこしい”陸橋が出てきた。1分で済むところをウロウロして15分も費やし、夜ならば迷っていた。ここに限らず、都心部では路上で地図を見ても位置関係がつかみにくい。特に三叉路は悩ましい。それでも進むしかない。
新宿に近づくにつれて混み始め、かなり歩きにくい。いろんな外国語も聞こえてくる。新宿って、こんなに人が多いのかと改めて驚いた。実際の災害時には、この何倍にも膨れあがるだろう。何とか歩いて行くと、前方を塞ぐように横切る「新宿大ガード」が見えてきた。JR山手線などが通るこの大ガードで、靖国通りは終わる。時計を見ると、午後5時半。5kmの距離を1時間30分かかったことになる。
急に視界が広がり、ひたすら歩く
ただ、そのまま進むと自宅から北に逸れるので、どこかで玉川上水に沿う「五日市街道」に入る必要があるが、歩きながら判断せざるを得ない。途中、五日市街道入口という交差点もあったが、ここは見切って少し先の三鷹付近で入ることにした。
やがて大きな三叉路にさしかかると、思いがけなく五日市街道方面の標識がみえた。既に午後9時を過ぎて人通りはなく、不安もあったが、意を決してそちらに進んだ。暫く行くと、今度は五叉路に出た。ここでも悩んだが、偶然にも「鈴木街道」の小さな看板を発見したのである。これは、日頃通勤で通る自宅のそばの道であった。
それなら、この道を行けばよい。急に自宅に近づいた気がした。あと5km。体調も特に問題ない。住宅街の夜道ゆえ、すれ違う人はほとんどいない。やがて「都立小金井公園」に出て、見慣れた建物が増えてきた。そして、10時半、ついに自宅にたどり着いた。6時間30分の徒歩帰宅であった。
点と点がつながり、新発見の連続
日頃、都心部の地下鉄では乗り降りの駅名は確認するが、どこをどう走っているのか、ましてや地上ならどの辺りなのか、ほとんど意識したことがない。ここが帰宅困難の一つの盲点かも知れない。
あぁ、ここだったのか、と歩きながらの“発見”も少なくなかった。やはり、事前に地上踏査しておくことで、“帰宅”に関する様々な情報を得ることができると確信した。
頭の中の“ナビゲーション・マップ”
災害は会社にいる時に起きるとは限らない。外出先で起きるかもしれない。それゆえ、別の場所からどのように帰宅するかシミュレートしておくことも大事である。その際役に立つのが、頭の中の“ナビゲーション・マップ”である。その範囲を広げ、かつ精度を上げるために、いつかまた会社とは異なる地点から徒歩帰宅してみようと思う。
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