2016年08月02日

低金利や相続税対策などによる活況の一方、不動産賃貸市場の一部に頭打ち感~不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期~

竹内 一雅

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(3)商業施設・ホテル・物流施設

2016年4-6月期の小売販売額(既存店)は、スーパーで微減、コンビニで増加した一方、百貨店では▲4.0%の減少だった(図表-25)。最近の百貨店販売の活況を支えてきた外国人の「爆買い」が、円高・元安や中国の個人持込み荷物等の関税の見直し7、購買品目の消耗品等への変化による購買単価の下落などから、免税品売上高が前年比▲15%の大幅減(6月は同▲20%)となった(図表-26)。百貨店では、売上高の95%以上を占める国内客も、株価低迷、熊本地震などによる消費マインド低下から購買の不調が続いており、急回復は「厳しい状況にある」8という。

東京の中心商業地における2016年第1四半期の店舗1階の募集賃料は、銀座などで大幅上昇前の水準に戻る一方、平均募集賃料はほぼ横ばいの推移を続けている(図表-27)。
図表-25 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの売上高(既存店、前年比)/図表-26 百貨店での外国人旅行客による免税品売上高および前年比増加率/図表-27 東京・主要商業エリアの店舗募集賃料
2016年4-6月の訪日外国人旅行者数は前年比+19.0%の596万人だった。大幅な増加が続いているが、円高や熊本地震などの影響もあり、前年比増加率は2015年4-6月の+48.0%と比べると増加ペースは縮小した(図表-28)。2012年以降、外国人宿泊客の増加などにより、全国のホテル客室稼働率は、上昇が続いてきたが、今年は昨年とほぼ同程度での推移となっている(図表-29)。

宿泊旅行統計によると、2016年4-6月の延べ宿泊者数は1億1,660万人で、前年比▲164万人(▲1.4%)の減少となった(図表-30)。円高による日本人の海外旅行の増加(前年比+4.3%、+15.5万人)などもあり、日本人宿泊者数が前年比で▲312万人(同▲3.1%)の大幅減になったことが、延べ宿泊者数の減少をもたらした。外国人の延べ宿泊客者数の伸びも前年比+8.6%と、昨年(2015年4-6月同+47.2%)に比べると増加率・増加数が大きく縮小しており、外国人の訪日旅行者数の増加率(同+19.0%)と比べても大きく下回る結果となった 910
図表-28 訪日外国人旅行者数/図表-29 全国のホテル客室稼働率/図表-30 国内宿泊施設における延べ宿泊者数
首都圏、大阪圏の両地域において、2016年から2018年にかけて、過去最大規模の物流施設の新規供給が計画されている(図表-31)。日本ロジスティックフィールド総合研究所によると、新規供給の増加に伴い空室率は上昇傾向にあるが、首都圏では高水準の需要があるため、2016年の空室率は最大で9.7%に押さえられる見通しという。空室率は、竣工後一年以上の物件では低いため、今後は、3PL11事業者による施設需要の増加や通販需要の拡大により、大量に供給される新規供給床はしだいに埋められていくことになろう。
図表-31 主要物流施設における需給動向・見通し
 
7 JETRO「越境ECのBtoC取引の税が一般貿易並みに-4月8日から取引限度額を拡大し免税措置を撤廃-」2016.4.1、JETRO「一般貿易に比べ低い税負担を新税制で是正-中国越境ECの税制改正(1)」2016.4.19などを参照のこと。
8 全国百貨店協会「平成28年6月全国百貨店売上高概況」2016.7.20より。
9 訪日外国人旅行者数の増加率を、外国人の延べ宿泊者数増加率が大きく下回っているのは、クルーズ船の来航の増加(日本経済新聞「訪日客伸び再び勢い」2016.7.21参照のこと)に加え、外国人の民泊への宿泊者数の増加も影響しているのではないかと思われる。
10 なお、宿泊施設不足への対応として、国土交通省は6月13日に地方自治体に対して、宿泊施設の容積率を現在の1.5倍、+300%を上限に緩和するよう促す通知を出している。国土交通省「宿泊施設の整備に着目した容積率緩和制度の創設に係る通知を発出」参照のこと。
11 3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは、荷主に物流改革を提案し、物流業務を包括受託する業務をいう。日本通運「3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは?」等を参照のこと。
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竹内 一雅

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