2016年08月01日

【4-6月期米GDP】前期比年率+1.2%、予想外の低成長継続

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 (民間投資)住宅投資が予想外の落ち込み
4-6月期の民間設備投資の内訳をみると、設備機器投資が前期比年率▲3.5%(前期:▲9.5%)と3期連続でマイナスとなったほか、建設投資が▲7.9%(前期:+0.1%)と前期からマイナスに転じた(図表5)。とくに、原油価格の下落に伴い資源関連が▲57.8%(前期:▲32.7%)と大幅なマイナスとなったことが大きい。一方、知的財産投資は+3.5%(前期:+3.7%)とプラスを維持した。

最後に、住宅投資は14年1-3月期の▲1.4%以来のマイナスとなった。住宅投資は14年10-12月期から5期連続の2桁増加となっていたことから、伸び鈍化が見込まれていたものの、マイナスに転じたことは予想外であった。もっとも、住宅販売などの住宅関連指標は堅調となっており、住宅投資の落ち込みは一時的とみられる。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)14年10-12月期以来のマイナス
政府支出は、14年10-12月期の前期比年率▲0.4%以来のマイナスとなった。政府支出の内訳をみると、地方政府支出が▲1.3%(前期:+3.5%)と、前期の大幅なプラスからマイナスに転じたことが大きい(図表6)。

さらに、連邦政府支出も▲0.2%(前期:▲1.5%)と、国防関連支出が▲3.0%(前期:▲3.2%)とマイナスとなったこともあり、2期連続でマイナスとなった。一方、非国防支出は+3.9%(前期:+0.9%)と前期から伸びが加速した。
(貿易)財輸出が牽引
 4-6月期の輸出入の内訳をみると、輸出が前期比年率+1.4%(前期:▲0.7%)と4期ぶりにプラスに転じた一方、輸入は▲0.4%(前期:▲0.6%)と2期連続のマイナスとなったことから、純輸出は、輸出主導のプラス寄与であったことが分かる(図表7、8)。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
輸出を仔細にみると、サービス輸出は▲0.9%(前期:▲2.2%)と2期連続でマイナスとなったものの、食料・飲料が+20.9%(前期:▲10.3%)、自動車・自動車部品が+4.9%(前期:▲0.1%)と前期からプラスに転じるなど、財輸出が+2.7%(前期:+0.1%)と前期から伸びが加速し、輸出を牽引した(図表7)。

一方、輸入はサービス輸入が+1.5%(前期:+2.5%)と伸びは鈍化したものの、前期からプラスを維持する一方、財輸入が▲0.9%(前期:▲1.3%)と2期連続でマイナスとなった(図表8)。財輸入では、民間航空機関連が+50.0%(前期:▲37.2%)となったことから、資本財(自動車除き)は+10.2%(前期:▲8.9%)と前期から大幅なプラスに転じたものの、自動車・自動車部品が▲10.3%(前期:+0.5%)、消費財(食料、自動車除き)が▲5.4%(前期▲5.5%)とマイナスとなった。
(物価・名目値)物価上昇圧力は抑制された状況が持続
4-6月期のGDP価格指数は、前期比年率+2.2%(前期:+0.5%)と、前期から伸びが加速、市場予想(同+1.9%)も上回った。その結果、名目GDP成長率は+3.5%(前期:同+1.3%)と、前期から伸びが大幅に加速した(図表9)。

FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数1は、前期比年率+1.9%、前年同期比+0.9%(前期:+0.3%、+0.9%)となった(図表10)。さらに、食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は前期比年率+1.7%、前年同期比+1.6%(前期:+2.1%、+1.6%)となった。エネルギー価格が反発していることもあり、PCE価格指数の前期比年率の伸びは加速している。もっとも、前期比年率では、PCE価格指数、コア指数ともにFRBが目標とする2%を下回っており、物価上昇圧力は抑制された状況が持続している。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
1 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2016年08月01日「経済・金融フラッシュ」)

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