2016年07月29日

鉱工業生産16年6月~4-6月期は前期比横ばいで踏みとどまる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.4-6月期は前期比0.0%の横ばい

経済産業省が7月29日に公表した鉱工業指数によると、16年6月の鉱工業生産指数は前月比1.9%(5月:同▲2.6%)と2ヵ月ぶりに上昇し、先月時点の予測指数の伸び(前月比1.7%)を上回った。また、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.7%、当社予想は同0.2%)を大きく上回る結果であった。出荷指数は前月比1.2%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比0.0%の横ばいとなった。

6月の生産を業種別に見ると、熊本地震からの挽回生産などから輸送機械が前月比1.6%と2ヵ月連続で上昇したほか、化学(除く医薬品)(前月比4.0%)、金属製品(同5.0%)が高い伸びとなるなど、速報段階で公表される15業種中13業種が前月比で上昇、1業種が低下した(1業種が横ばい)。

16年4-6月期の生産は前期比0.0%(1-3月期:同▲1.0%)となった。先月時点では2四半期連続の減産が確実とみていたが、6月の結果が予想を大きく上回ったことから前期比横ばいで踏みとどまった。ただし、15年度入り後の鉱工業生産が四半期ベースで前期比プラスとなったのは15年10-12月期の0.1%だけであり、低迷を脱したと判断するのは尚早だろう。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は16年1-3月期の前期比▲2.4%の後、4-6月期は同3.2%と5四半期ぶりに上昇した。一方、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は16年1-3月期の前期比▲1.0%の後、4-6月期は同▲0.2%と4四半期連続で低下した。16年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比▲0.7%と3四半期ぶりに減少したが、企業収益の悪化を受けて4-6月期も低調に推移する可能性が高い。

消費財出荷指数は16年1-3月期の前期比▲2.0%の後、4-6月期は同0.0%の横ばいとなった。耐久消費財は前期比▲1.2%(1-3月期:同▲3.4%)と2四半期連続で低下したが、非耐久消費財が前期比0.6%(1-3月期:同▲0.4%)と2四半期ぶりに上昇した。

16年1-3月期のGDP統計の個人消費は前期比0.6%となったが、うるう年による押し上げの影響を除けばほぼ横ばいだったと考えられる(当研究所では1-3月期の個人消費はうるう年で前期比0.4%押し上げと試算)。4-6月期の個人消費は1-3月期に比べれば伸びは鈍化する見込みだが、1-3月期とは逆にうるう年の反動で押し下げられているため、実態としては緩やかに持ち直しつつあると判断される。

2.生産持ち直しの鍵は輸出

製造工業生産予測指数は、16年7月が前月比2.4%、8月が同2.3%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ▲0.4%、0.6%であった。実現率はマイナスとなったが、過去6ヵ月平均(▲2.3%)と比べればマイナス幅は小さく、予測修正率がプラスとなったのは14年2月以来、2年5ヵ月ぶりのこととなる。生産の先行きを見る上では明るい材料と言えるだろう。

在庫循環図を確認すると、15年10-12月期に「在庫積み上がり局面」から「在庫調整局面」に移行した後、3四半期連続で同じ局面に位置している。在庫が大きく積み上がっているわけではないが、国内需要を中心とした最終需要が力強さに欠けていることから在庫調整の進捗は遅れている。
最近の実現率、予測修正率の推移/在庫循環図(鉱工業全体)
16年6月の生産指数を7、8月の予測指数で先延ばし(9月は横ばいと仮定)すると、16年7-9月期は前期比4.4%の大幅上昇となるが、生産計画は下方修正される傾向があるため、実際の生産が7-9月期に増産に転じるかは現時点では予断を許さない。個人消費は緩やかながら持ち直しつつあるため、円高が進行する中で今のところ横ばい圏で踏みとどまっている輸出の動向が先行きの生産を大きく左右しそうだ。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年07月29日「経済・金融フラッシュ」)

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