2016年07月26日

訪問看護師の拡充-在宅ケアの担い手の整備は進むか?

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   篠原 拓也

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3――今後の訪問看護

地域包括ケアシステムが目指す、在宅ケアの実践において、訪問看護師が果たす役割は、非常に大きなものとなる。今後の訪問看護の整備について、見ていくこととしたい。

1看護師の需給は、地域医療構想策定の大きな眼目の1つとされている
従来、医療行政においては、看護職員の需給見通しに基づき、看護師等の養成や就業者数の確保を図ってきた。これまでに7回に渡り、需給見通しが策定されてきた。第7次見通しの対象期間は、2011~15 年の5年間であった。現在、都道府県において、2018年を目途に、2025年の医療需要を踏まえた地域医療構想の策定が進められている。これに伴い、厚生労働省の検討会において、都道府県への十分な説明や助言を行うこととし、2016~17年の需給見通しは策定しないこととされた。

なお、社会保障・税一体改革の試算では、2025 年に看護職員が196~206 万人必要とされている。今後、仮に、毎年3万人のペースで看護職員の数が増加するとしても、3~13 万人分のギャップが生じるとの見通しが出されている。(厚生労働省が提示した資料によると、年間の看護師・准看護師の新規資格取得者は約5.1万人、離職等は約16.1万人、再就業は約14万人。2003~12年の平均で見ると、看護職員は、毎年、約3万人増加している。5)

2現在、看護師全体に占める訪問看護師の割合は、2%に過ぎない
これまでは、病院や診療所中心の医療体制がとられてきた。看護師等の配置も、圧倒的に医療機関の占率が大きい。ステーションで仕事をする看護職員の割合は、2%に過ぎない。
図表7. 看護職員の就業場所(2012年)
しかし、今後、地域包括ケアシステムが本格実施され、病院から地域へ、医療から介護への転換が進むものと考えられる。その中で、訪問看護師の役割は増していく。その拡充は、必須と言えよう。

3病院看護師に比べて、訪問看護師には仕事のやりがいがある
訪問看護では、看護師は、訪問先の患者や家族に応じて、臨機応変の対応が求められる。基本的には、事前に主治医から示された、訪問看護指示書に基づいて看護業務を行う。とはいえ、訪問看護師は1人で患者宅を訪れており、自ら判断して業務を行う場面も出てくる。そのため、多くの学習や実務経験が求められ、業務負荷は大きい。ただし、少し見方を変えれば、訪問看護師は、患者や家族に対し、総合的なケアを行う重要な役割を担っているとも言える。このため、患者や家族から、真に頼りにされ、訪問看護ならではの、やりがいや、充実感を味わうことができるものと考えられる。
図表8. 病院看護師と訪問看護師の主な違い (一般的なもの)
4訪問看護師を増やすためには、教育・研修面の整備が必要
訪問看護師は徐々に増えてきてはいるものの、絶対数としては、まだ大幅に不足している。現在、その拡充に向けて、各種の取組みや検討が進められている。

訪問看護師は、自立して、看護を行うという難しさがある。その一方、原則として夜勤がないなど、勤務形態が柔軟なことが特徴と言える。これは、出産等で離職した潜在看護師6が復職する先として、勤務ニーズにマッチする可能性が高い。ただし、そのためには、教育・研修制度を充実させて、自立して訪問看護を行うためのスキルや、心構えなどを学習する体制を整えることが必要となろう。7

5看護師等免許保持者の届出制度が始まっている
看護師の確保のために、「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が改正され、2015年10月より、潜在看護師の届出制度が開始された。就業していない看護師等免許保持者は、都道府県のナースセンターへ届け出ることが努力義務とされた。これにより、潜在看護師を把握し、求職中や、未就業の免許保持者に、復職支援を行う取組みが進められている。2015年10月~2016年4月の7ヵ月間に、21,982人の届出があり、その半数以上に相当する11,385人の復職支援対象者が把握されている8。引き続き、届出制度を通じて対象者を把握し、復職支援を行い、看護師等の供給を進めることとされている。
 
5 「看護職員の現状と推移」(厚生労働省, 第1回看護職員需給見通しに関する検討会 資料3-1, 平成26年12月1日)より。
6 「第七次看護職員需給見通し期間における看護職員需給数の推計手法と把握に関する研究」(厚生労働科学研究費補助金 地域医療基盤開発推進研究事業, 平成25年3月) の 「日本における潜在看護職員数の推計」(研究代表者 小林美亜)によると、2010年末の潜在看護職員数は714,669人で、潜在看護職員率(免許保持者に占める割合)は33.9%であった。
7 イギリスでは、1980年代に、医師から独立した診察室を持つ「ナース・プラクティショナー」と呼ばれる看護師が導入された。その中には、処方資格を持つ「ナース・プレスクライバー」もおり、1990年代末から、医薬品の処方を行っている。ただし、日本では、医療法で、医師の指示の下で看護を行うことが定められており、その創設は困難と見られる。
8 「看護職員需給推計関係資料」(厚生労働省, 医療従事者の需給に関する検討会 第2回看護職員需給分科会 資料2, 平成28年6月10日)より。
 

4――おわりに (私見)

4――おわりに (私見)

地域包括ケアシステムが目指す、在宅ケアの実践において、訪問看護師が果たす役割は、今後、非常に大きくなっていくものと考えられる。そのためには、潜在看護師の復職を含めて、教育・研修等、訪問看護の体制整備を進めていくことが不可欠と考えられる。

今後も、引き続き、その整備・拡充の状況について、注目していくことが必要と考えられる。
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品、保険計理

(2016年07月26日「保険・年金フォーカス」)

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