2016年07月25日

【東南アジア経済】ASEANの消費者物価(7月号)~原油安要因の一巡と干ばつによる食品価格の上昇は継続

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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(図表1)ASEAN6ヵ国消費者物価上昇率 ASEAN主要6カ国の消費者物価指数(以下、CPI)の上昇率(前年同月比)は国際商品価格の低迷を受けて依然として低水準にあるが、昨年後半以降は原油安による物価下押し要因の一巡や干ばつによる食品価格の上昇を受けて、総じて緩やかな上昇傾向にある(図表1)。

なお、6月についてはマレーシアとインドネシアが消費需要の高まるラマダン(断食月)1の期間だったものの、景気が鈍いことや政府の価格統制の影響もあってインフレ圧力は限定的だった。またタイは干ばつによる上昇傾向にあった食品価格が雨季入りによって低下した。タイ同様にフィリピン、ベトナムも既に雨季入りしており、徐々に食品インフレは沈静化していくものと見られる。
(図表2)インドネシアCPI上昇率(寄与度) インドネシアの16年6月のCPI上昇率は前年同月比3.45%増(前月:同3.33%)と小幅に上昇した(図表2)。7月上旬のレバラン(断食明け大祭)を控えた食品や衣料品、輸送コストの上昇が全体を押上げた。

主要品目別に見ると、食材が同7.77%増(前月:同7.75%増)、加工食品・飲料・タバコが同6.16%増(前月:同6.13%増)、衣類が同4.24%増(前月:3.80%増)と、それぞれ小幅に上昇したほか、交通・通信・金融も同0.99%減(前月:同1.50%減)とマイナス幅が縮小した。一方、住宅・電気・ガス・燃料は同1.18%増(前月:同1.26%増)と、緩やかな傾向が続いた。

食料品とエネルギーを除いたコアCPI上昇率は緩やかな低下傾向にあるが、5月は同3.49%増(前月:同3.41%増)と小幅に上昇した。

CPI上昇率は依然として中央銀行のインフレ目標圏内(3-5%)の下方で推移しており、7月21日の会合では政策金利は据え置かれたものの、依然として追加利下げの可能性が燻る。
(図表3)タイCPI上昇率(寄与度) タイの16年6月のCPI上昇率は前年同月比0.38%増(前月:同0.46%増)となり、10ヵ月ぶりに低下した(図表3)。

主要品目別に見ると、食品・飲料は同2.80%増(前月:同2.97%増)と、雨季入りで干ばつの影響が和らいだことから高騰していた野菜を中心に低下した。また住宅・家具は同1.41%減と7ヵ月連続のマイナスとなった。一方、交通・通信は同2.37%減(前月の同2.42%減)と、引き続き原油価格の底打ちを受けてマイナス幅が縮小している。さらにタバコ・酒類は同13.07%増と、2月のタバコの物品税引き上げを受けて二桁増が続いている。

また生鮮食品とエネルギーを除いたコアCPI上昇率は同0.80%増と、前月から0.02%ポイント上昇した。年明けからコアCPIにも緩やかな上昇傾向が見られる。

インフレ率は昨年後半から上昇傾向にあるものの、依然としてタイ銀行(中央銀行)のインフレ目標の範囲内(1-4%)を下回る低水準に止まっている。政府は今年のインフレ率を0.0-1.0%の低水準になると予想している。
 
1 ラマダン(断食月)は、閏月による補正を行わないヒジュラ暦の9月に当たり、毎年11日ほど到来が早まる。日中に行う断食の反動から日没後の食事量が急増するほか、買いだめや値上げが起こり、食料品や日用品を中心に物価が上昇する傾向がある。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

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