2016年07月25日

昭和戦後の主力商品-定期付養老保険、定期付終身保険を経て商品多様化の時代へ

小林 雅史

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3――定期付養老保険の主力商品化と個人年金保険の販売

1960年代には、それまでの死亡保険金額と満期保険金額が同額の養老保険に代わり、養老保険に定期特約を付加することで、死亡保障を大型化し、同一の死亡保険金額に対する保険料を低廉化した「定期付養老保険」が主力商品となった。

定期付養老保険の養老保険部分と全体の死亡保障金額の比率は、3倍型(たとえば、養老保険部分100万円、全体の死亡保障金額300万円)⇒5倍型⇒10倍型⇒15倍型(たとえば、養老保険部分100万円、全体の死亡保障金額1500万円)など、次第に高倍率化し、保障の大型化が進んだ4

なお、この間、一部の生保会社により終身保険や定期付終身保険も販売されていたが、1970年代までは生保会社全体としての主力商品とはなっていなかった。

また、1959年の国民年金法制定などを受け、1960年3月、明治生命(現明治安田生命)が戦後はじめて個人年金保険を発売し、個人年金保険料控除制度の創設(1984年4月)と控除額の拡大(1990年4月)さらには2002年10 月銀行窓販開始などにより、販売件数は着実に増加した。
 
4  たとえば、日本生命の場合、1959年7月に3倍型、1970年10月に5倍型、1974年8月に10倍型、1975年9月に15倍型の定期付養老保険を発売している(『日本生命70年史』年表、前掲)。
 

4――外資系生保会社の進出

4――外資系生保会社の進出

1973年2月、外資系生保会社としてはじめて、アリコジャパン(現メットライフ生命)が日本初の本格的な無配当保険(定期保険、逓減定期保険、養老保険)により日本に進出した。

1974年11月には、アメリカンファミリー(アフラック)が日本進出2番目の外資系生保として、日本初のがん保険を発売した。

当時、がんは「死に至る病」と認識され、がん保険の日本市場への定着を危惧する声もあったが、大方の予想に反し販売は急進展し、中小・外資系生保によるがん保険独占販売が続いた。

2001年1月には大手生保と損保の生保子会社に、2001年7月には損保本体にがん保険、医療保険などの販売が認められ、2014年度にはがん保険の保有契約は約2198万件と、全人口の6人に1人ががん保険に加入しているという普及状況となっている5

さらに、アリコ・ジャパンは1976年2月から、日本初の医療保険(医療単品)として「疾病保険」を発売した。

当時販売されていた特約による入院保障においては、入院給付金日額は死亡保険金額の1000分の3を上限としていた。一方、疾病保険は死亡保険金額を低く抑え、入院保障に特化した商品となっていた。さらに当時販売されていた特約による入院保障においては、疾病入院については20日以上入院が支給要件となっていた点に比べても、疾病保険の支給要件は8日以上入院と優位性を保っていた[特約による入院保障は1987年4月から災害・疾病とも5日以上入院について5日目から支払う(4日間不担保)方式に変更。現在の医療保険(特約)では、入院1日目から支払うタイプがほとんど]。

2014年度の医療保険の保有契約は約3195万件に達している6
 
5  小著「わが国におけるがん保険の発展」『生命保険経営』第82巻第4号、2014年7月、『平成27年度版 インシュアランス生命保険統計号』、保険研究所、2015年11月。
6  小著「わが国における医療保険の発展」『生命保険経営』第82巻第5号、2014年9月、『平成27年度版 インシュアランス生命保険統計号』前掲。
 

5――定期付終身保険の主力商品化

5――定期付終身保険の主力商品化

1980年代には、定期付養老保険に比べ、より低廉な保険料で高額な死亡保障を得られる商品として、定期付終身保険が主力商品となった。

定期付終身保険では、当初、定期保険部分の保険期間が終身保険部分の保険料払込期間と同一の「全期型」が主流であったが、定期保険部分の保険期間を終身保険部分の保険料払込期間より短く設定し、より保険料を低廉化した「更新型」が主流となり、死亡保障の高額化・保険料の低廉化が進展した。

また、定期付終身保険においても、定期付養老保険と同様、終身保険部分と全体の死亡保障金額の比率の高倍率化(10倍⇒20倍⇒30倍など)や、終身保険部分について、保険料払込期間を終身としたり、契約当初の保険料払込金額を契約締結後一定期間経過後の保険料払込金額より低く設定する、ステップ保険料払込方式が導入されるなど、保険料の低廉化が一層進んだ。

さらに、既存契約の責任準備金や積立配当金などを新契約の一時払保険料などとして充当する契約転換制度の利用により、定期付養老保険から定期付終身保険への主力商品のシフトが一層進展した。

当初、定期付終身保険は、終身保険部分による一生涯の死亡保障と、定期保険部分による一定期間の上乗せ死亡保障を提供する商品で、特約による入院保障などを除き、その他の保障はほぼなかった。

これに対し、1988年6月、日本生命は保険料払込満了後の終身死亡保障に代えて、介護保障、年金保障、死亡保障を自由に組み合わせて保障内容を選択できるレインボープランを発売した。定期付終身保険の保険料払込満了後の保障内容の自在性を拡充する制度であり、各社は一斉に追随した。

さらに、1992年2月、アリコ・ジャパン(現メットライフ生命)、同年4月日本生命は、所定のがん・心筋梗塞・脳卒中に罹患した場合に保険金を支払う「生前給付商品」として、3大疾病保障保険(特定疾病保障保険)を発売した(1991年12月同時認可、最高保険金額は2000万円)。なお、1995年10月、 第一生命が心臓ペースメーカーの装着や人工透析などを保障する疾病障害特約を発売した。

1992年10月には、プルデンシャル生命が余命6か月と診断された場合に保険金を支払う生前給付商品として、リビング・ニーズ特約を発売した(最高3000万円まで)。

3大疾病保障保険(特定疾病保障保険)は、当初単品商品として主力商品である定特付終身とセット販売され、以降、単品商品または特約として、ほとんどの会社が追随発売し、リビング・ニーズ特約も含め定期付終身保険の標準装備となった。
 

6――現在の主力商品

6――現在の主力商品

現在では、(表)「販売商品の変遷」のとおり、定期付終身保険の販売は減少しており、各社がそれに代わる主力商品として、さまざまなタイプの商品を販売している。

ひとつは、低金利による予定利率の引き下げなどを受け、従来の保険について、積立部分と保障部分とに分離し、積立部分の予定利率を一定期間ごとに見直す「利率変動型終身保険」である。

保険料払込期間中は積立金を蓄積し、保険料払込期間満了後は積立金により終身の死亡保障などを確保する仕組みで、死亡保障や医療保障などを自在に組み合わせる形が一般的となっている。

さらに、これまで定期付終身保険の特約として販売されてきたさまざまな商品を単品化し、顧客の保障ニーズに応じて自在に組み合わせることができる「組立型」の商品も販売されている。

2014年には、個人保険・個人年金の合計販売件数は約1662万件に達し、うち医療保険が23.0%、終身保険が20.9%、がん保険が10.7%を占めており、保障内容の多様性が進んでいる。
(表)販売商品の変遷
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(2016年07月25日「保険・年金フォーカス」)

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