2016年07月19日

日韓比較(15):非正規雇用-その5 韓国は多く、日本は少ない?非正規雇用の定義に見る、数字のワナ

生活研究部 准主任研究員   金 明中

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図表5は、韓国の非正規雇用労働者数の推移を2001年から2015年にかけてみたものである。ふたつの数字が並んでいるのは、政府発表の統計と労働組合側の発表とで非正規の割合が違うからである。2015年8月時点でみると、政府側は非正規雇用労働者の割合を32.5%としているのに対して、労働組合側は45.0%としており、両者のあいだに12.5ポイントの差が生じている。
図表5 韓国における非正規雇用労働者割合の動向(政府と労働組合の定義に基づいて)
非正規雇用労働者の概念に対しては国際的に統一された基準はないものの、OECDは国家間の比較のために通常、雇用の限時性を基準とした「Temporary workers」を把握・比較している。韓国統計庁は、期間制労働者、派遣労働者、日雇い労働者、短期期待労働者が「Temporary workers」に該当すると判断し、毎年8月に関連データをOECDに提出している。図表6はOECD主要国のTemporary Workersの割合の推移を見たものであり、2014年時点における韓国のTemporary Workersの割合は21.6%でOECD諸国の中でも高い水準であることに比べて、同時期の日本の割合は7.6%でかなり低い。
図表6 OECD主要国のTemporary Workersの割合の推移
このように日本の数値が低いのは、労働力調査の従業上の地位(労働契約期間)による非正規雇用労働者の割合をOECDに提出した可能性が高い。実際、図表1の従業上の地位(労働契約期間)による非正規雇用労働者の推移と図表6の日本のデータを見ると、その水準や推移が酷似していることが分かる。
 

4――おわりに

4――おわりに

日韓両国における非正規雇用労働者の定義は異なり、その定義により非正規雇用労働者の規模に差が出ているものの、労働力の非正規化は両国において大きな社会的課題として扱われている。韓国政府は非正規職に対する対策として2006年から「非正規職保護法」を実施しており、その結果非規職の割合は少し減少しているものの、非正規職の処遇水準は大きく改善されておらず、正規職と大きな差を見せている。一方、日本政府は2015年に「正社員転換・待遇改善実現プラン(5か年計画)」を策定し、非正規職の処遇改善に本格的に動き出し始めた。さらに、最近は正規職や非正規職という雇用形態に関わらず、同じ仕事なら同じ賃金を支払うべきだという「同一労動同一賃金(Equal pay for equal work)」の導入に向けて積極的な動きを見せているもののその成果が出るまではまだ時間がかかることが予想される。日韓政府がそれぞれ実施している労働市場の柔軟化政策と非正規労働者に対する処遇改善対策が今後どのような成果を産むのか、また、非正規労働者の規模にはどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目したい。
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生活研究部   准主任研究員

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会保障政策比較分析

(2016年07月19日「基礎研レター」)

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