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英国のPRA(健全性規制機構)による最近の規制対応の動き-ソルベンシーIIへの対応-
中村 亮一
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英国のEU(欧州連合)からの離脱(Brexit)の問題が焦点となっているが、これに関係して、英国の保険監督官庁であるPRA(Prudential Regulation Authority:健全性規制機構)による規制が、今後どのような方向に向かっていくのか、その動向が注目を浴びてくることになる。
今回のレポートでは、2016年からのソルベンシーIIの導入に対応して、技術的準備金に関する経過措置、マッチング調整の適用、内部モデルの変更、内部モデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング及びソルベンシーII開示要素の外部監査に関して、PRAが最近公表している監督当局の考え方を示す「監督上の指針に関するステートメント(Supervisory Statement)」(以下「SS」という)やその前段階としての意見募集を行うコンサルテーション・ペーパー(Consultation Paper)(以下「CP」という)の内容について、概要を紹介する。
■目次
1―はじめに
2―「技術的準備金に関する経過措置」の再計算
1|「技術的準備金に関する経過措置」
(Transitional Measure on Technical Provisions:TMTP)とは
2|SSの概要
3|SSの内容
3―マッチング調整の適用
1|マッチング調整(Matching Adjustment:MA)とは
2|CPの概要
3|CPの提案の概要
4―内部モデルの変更
1|内部モデルとは
2|CPの概要
3|CPの提案の概要
5―内部モデル使用会社に対するモデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング
1|CPの概要
2|CPの背景
3|CPの提案の概要
6―ソルベンシーⅡ開示要素の外部監査
1|CPの概要
2|CPの提案の概要
3|EIOPAの考え方等
7―まとめ
1―はじめに
今回のレポートでは、2016年からのソルベンシーIIの導入に対応して、技術的準備金に関する経過措置、マッチング調整の適用、内部モデルの変更、内部モデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング及びソルベンシーII開示要素の外部監査に関して、PRAが最近公表している監督当局の考え方を示す「監督上の指針に関するステートメント(Supervisory Statement)」(以下「SS」という)やその前段階としての意見募集を行うコンサルテーション・ペーパー(Consultation Paper)(以下「CP」という)の内容について、概要を紹介する。
2―「技術的準備金に関する経過措置」の再計算
1|「技術的準備金に関する経過措置」(Transitional Measure on Technical Provisions:TMTP)とは
2015年までの古いソルベンシーIの基準から、2016年以降の新たなソルベンシーIIの基準への移行については、監督当局の承認を得て、16年の移行期間が認められる。
この経過措置については、①利率そのものを段階的に本来的な水準に収束させる方式、②技術的準備金を段階的に本来的な水準に収束させる方式、の2つの方式が認められている。あくまでも、ソルベンシーII導入前に締結された契約のみが対象になる。
そのイメージとしては、以下の通りとなる。方式②の場合、リスク・マージン部分についての段階的実施を効果的に含むことができる。
ソルベンシーII指令は、「TMTPの再計算について、2年毎(24ヶ月毎)又は会社のリスク・プロファイルが著しく変化している場合にはより頻繁に行う」こととしている。
2|SSの概要
今回のSSの目的は、TMTPの再計算におけるPRAの期待に関しての透明性とプロセスを提供することにあった。PRAは、4月15日にCPを公表し、これに対するフィードバックを検討することで、最終的なSSとしている。
このSSは、ソルベンシーIIが適用される全ての英国の保険会社とロイズにとって重要であり、TMTPの使用承認を得ている会社や、TMTPを使用することを検討している会社にとって特に関連している。
3|SSの内容
TMTPの再計算は、監督当局又は保険会社のいずれかの要求に応じて行うことができる。
監督当局は、保険会社が経過措置のベネフィットの再計算を支配する内部ポリシーを開発することを要求している。さらに、行動をとることが正当化される状況として、以下の例を挙げている。
(1)事業の処分、(2)再保険プログラムの調整、(3)保険債務のランオフパターンにおける変化、
(4)ボラティリティ調整やマッチング調整の使用、
(5)信用スプレッドの拡大のような事業条件の変更
もし、(A)これらのイベントが会社のソルベンシー比率を5%ポイント以上アップまたはダウンさせるか、(B)リスクフリー曲線の10年時点で50bpの変更があった場合、再計算がなされなければならない。
3―マッチング調整の適用
1|マッチング調整(Matching Adjustment:MA)とは
保険会社は、資産と負債がマッチングしており、区分管理されている等の条件を満たしている場合において、監督当局の承認を得て、リスクフリー・レートに調整を加えることができる。
具体的には、例えば、以下のような条件が求められる。
(1)保険負債のベスト・エスティメイトをカバーするために、債券や同等のキャッシュフロー性質を有する資産からなる資産ポートフォリオが割り当てられ、全保険期間にわたって維持されること
(2)当該資産は、他の資産とは区分して管理されていること
(3)割り当てられた資産からの想定キャッシュフローは、保険負債のキャッシュフローを複製しており、いかなるミスマッチも重要なリスクを生まないこと
(4)保険契約は将来の保険料払込がないこと
等々
2|CPの概要
このCPでは、MAの承認申請及びソルベンシーIIの下でのMAポートフォリオの継続的な管理を含む、技術的準備金の計算目的のためのMAの適用に関連して、会社への期待を設定するSS案を提案している。
3|CPの提案の概要
SS案は、次の分野におけるMAに関して、企業に対するPRAの期待を設定している。
(1)転売市場で購入された年金資産、(2)継続的なMAコンプライアンス
(3)MA要件の違反、(4)MAポートフォリオの変更
このCPは、全ての英国のソルベンシーII対象会社とロイズに関連している。
このCPの提案は、特に、転売市場で購入された年金資産の適格性に関する問題について、MAの承認申請に関連しての会社に対するPRAの期待が含まれている。提案はまた、一旦MAが承認された場合に考察されるべき、継続的なMAコンプライアンスの問題、MA要件の違反の取扱い、MAポートフォリオの変更がある場合に何が起こるのか、のような問題についてのPRAの期待を含んでいる。
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