2016年07月14日

若年層の経済格差と家族形成格差-増加する非正規雇用者、雇用形態が生む年収と既婚率の違い

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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3雇用形態別に見た平均年収~特に男性で年齢とともに差が拡大、若年非正規は年収300万円以下
正規雇用者と非正規雇用者では賃金格差があることは各所で指摘されており、現在、政府は、不合理な待遇差を是正するとして、「同一労働同一賃金」の実現に向けた検討を進めている。

ここでは、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の最新値を用いて、正規雇用者と非正規雇用者の年収差、及び年齢による変化を確認する。また、両者の比率をイメージしやすくするために、各年齢階級における非正規雇用者の割合も重ねて見る。

図表4を見ると、正規雇用者と非正規雇用者の年収差は、特に男性で大きく、その差は年齢とともに拡大する。男性の20~24歳では両者の差は70.4万円だが、45~49歳では332.9万円となり、正規雇用者の年収(645.6万円)は非正規雇用者(312.7万円)の2倍以上になる。なお、45~49歳の男性で非正規雇用者は同年代男性雇用者の8.6%を占める。

また、非正規雇用男性について見ると、20~24歳では同年代男性雇用者の39.2%を占め、平均年収は222.2万円である。25~29歳では非正規雇用者の割合は19.1%であり、20~24歳と比べて大きく低下する。しかし、前項で見た通り、若い世代ほど各年齢階級における非正規雇用者の割合は高まるため、図表4の20~24歳の非正規雇用男性が25~29歳に成長する時点では、非正規雇用者の割合は現在の値を上回る可能性がある。同様に考えると、正規雇用者と非正規雇用者で年収差が2倍以上ひらく45~49歳では、非正規雇用者の割合が現在は1割に満たないが、今後、拡大する可能性がある。

女性では、男性ほどではないが、やはり正規雇用者と非正規雇用者では年収差があり、年齢とともに、その差は拡大する。なお、非正規雇用女性の年収は、最も多い35~39歳(234.8万円)でも250万円に満たない。なお、女性では新卒時点から非正規雇用者として働き続ける層と出産・子育てで離職後に非正規雇用者として働き始める層が混在することを考慮する必要がある。
図表4 雇用形態別に見た平均年収と雇用者に占める非正規雇用者の割合(2015年)
4雇用形態別に見た年収階層別の雇用者数分布~年齢とともに正規で2つの分布、ピークは高い位置へ
ところで、次節で詳しく示すが、男性では年収300万円あたりに家族形成の壁がうかがえる。その壁にぶつかっている層を推計するために、前段階として、収入階層別の雇用者数を確認する。

図表5は、各年齢階級において、雇用形態ごとに所定内給与額(毎月きまって支給する現金給与額のうち、超過労働給与額を差し引いた額)階級別の雇用者数を見たものである。なお、図中の数値は、各年齢階級における雇用形態別の所定内給与額の平均値であり、図表4の平均年収の推計で用いたものである。
図表5 雇用形態別に見た所定内給与額階級別雇用者数(2015年):男性
図表5を概観すると、男性の正規雇用者では、年齢とともに雇用者数のピークが所定内給与額階級の高い階級へ移動するとともに(20~24歳:20.0~21.9万円→35~39歳:28.0~29.9万円)、2つ目のピークがより高い階級(40~44.9万円)にあらわれる。よって、各年齢階級における所定内給与額の平均値より低い階級と高い階級に2つの雇用者分布ができるようになる。なお、図表5には示していないが、40代以降では、1つ目の雇用者数分布より、2つ目の分布の方が大きくなっていく。一方、非正規雇用者では、ピーク位置が正規雇用者より低い位置にあり、また、年齢が上がってもピーク位置は正規雇用者ほど動かずに10万円台後半で推移する(20~24歳:16.0~17.9万円→35~39歳:18.0~19.9万円)。また、詳細に見れば、非正規雇用者でも正規雇用者と同様に、所定内給与額階級の比較的高い位置で2つ目のピークが成長していくのだが、正規雇用者ほど顕著ではない。

女性では、男性ほど顕著ではないが同様に、正規雇用者では年齢とともにピーク位置が所定内給与額階級の高い位置へ移動するとともに、2つ目のピークがあらわれる(図表6)。非正規雇用者でも、男性同様の動きが見られるが、女性では非正規雇用者が多いため、年齢とともに、正規雇用者の雇用者分布より非正規雇用者のものの方が大きくなる。
図表6 雇用形態別に見た所定内給与額階級別雇用者数(2015年):女性
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

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