2016年07月12日

急増する訪日外国人のホテル需要と消費支出-2014年の訪日外国人旅行者数は前年比+29%増、外国人延べ宿泊者数は同+34%増、消費額は同+43%増で2兆円を突破

竹内 一雅

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3――外国人宿泊者数の急増が日本人宿泊者数の減少分を補填

1|ホテル稼働率の上昇と外国人宿泊者数の増加
訪日外国人旅行者数の増加に伴い、国内のホテル稼働率は近年で最も高い水準で推移している(図表-6)。

宿泊旅行統計によると、2014年の延べ宿泊者数は4億7,232万人泊で前年比+1.4%の増加だった4。このうち日本人は4億2,750万人泊(構成比90.5%、前年比▲1.1%減)、外国人は4,482万人泊(構成比9.5%、前年比+33.8%増)だった。ホテルでの高稼働率の維持は、日本人の延べ宿泊者数の減少(▲489万人泊の減少)を、延べ宿泊者数では1割に満たない外国人の増加(+1,133万人泊増)が補ったためである(図表-7)。2014年は消費税率の8%への引き上げも、日本人の国内旅行および延べ宿泊者数を減少させたと考えられる5

また、日本人の延べ宿泊者数は夏期(7~9月)が突出して多く、特に年前半(1月から5月)の宿泊者数が少ない。今年2月から3月に中国の旧正月休暇による訪日客数が大幅に増加したように、外国人宿泊者数の増加は、日本人の宿泊における季節変動の大きさを補い閑散期における稼働率の向上に貢献しはじめている。

外国人宿泊客の増加により、延べ宿泊者数に占める外国人比率は上昇を続けている(図表-8)。2011年の4.4%から2014年には9.5%まで上昇しており、四半期別にみると2014年は第2四半期と第4四半期で10%を上回った。
図表-6:全国・東京のホテル稼働率/図表-7:日本人および外国人の国内延べ宿泊者数(四半期)/図表-8:宿泊施設の延べ宿泊者数に占める外国人比率の推移
 
4 2014年の数値は速報値であり今後、確報では数値がより大きくなると考えられる。以下、2014年の数値については全て速報値。
5 2015年は景気の回復や雇用・所得の増加、消費税増税による反動減の収束、円安による海外旅行のコスト高などから日本人の国内旅行も前年比で増加に転じるのではないか期待される。
2|外国人宿泊者の宿泊施設タイプ
日本人と外国人では宿泊する施設タイプに相違がある。外国人はシティホテルへの宿泊比率が全体の41%(日本人は13%)と高く、旅館への宿泊比率が10%(日本人は23%)と低い(図表-9左図)。外国人のシティホテル嗜好の高さから、シティホテルでは全体の延べ宿泊者数の25%が外国人で占められている(図表-9右図)。
図表-9:宿泊施設タイプ別および日本人・外国人別の延べ宿泊者比率 (2014年)
3|国籍別の宿泊者数の推移
訪日外国人旅行者数と同様、延べ宿泊者数はほとんどの国・地域から大幅に増加している(図表10)。2014年の前年比増加率は、台湾で+26.6%、中国+84.3%増、韓国+11.8%、アメリカ+7.9%、香港+22.0%、タイ+38.4%だった6

2014年に延べ宿泊者数が多かったのは、台湾の783万人泊(構成比19%)、中国の764万人泊(同19%)、韓国422万人泊(同10%)で、この3カ国で全体の48%を占めている。
図表-10:国籍別の外国人延べ宿泊者数の推移(四半期)
 
6 なお、図表-10で示されているように中国からは2012年第4四半期に前期比▲65.7%(前年比▲50.0%)の大幅な減少があった。これは2012年9月に日本政府が尖閣諸島を購入したことに対する反日運動激化の影響があったようだ。
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竹内 一雅

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