2016年07月11日

景気ウォッチャー調査(16年6月)~英国のEU離脱で景況感は悪化が鮮明に

岡 圭佑

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3.景気の先行き判断DI:2ヵ月ぶりの悪化、先行き不透明感が高まる

景気の現状判断DI/景気の先行き判断DI(分野別、原数値) 先行き判断DIは41.5(前月差▲5.8ポイント)と2ヵ月ぶりに悪化した。参考系列として公表されている季節調整値は39.7と前月から▲4.9ポイントの悪化となった。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連が前月差▲5.0ポイント、企業動向関連が同▲6.8ポイント、雇用関連が同▲8.8ポイントといずれも大幅なマイナスとなった。前月に4ヵ月ぶりに節目の50を回復した雇用関連(42.7)は大幅な悪化により50を大きく下回った。

家計動向関連は、「バーゲンの出足も良く、ボーナスの時期も重なるので、梅雨が明けたら良い感じになっていくのではないか」(四国・衣料品専門店)など、ボーナスによる消費押し上げ効果を期待するコメントが見受けられる一方で、「英国のEU離脱問題の影響がどうなるか、先行きが不透明なこともマイナス要因である」(北海道・スーパー)といったように、EU離脱による先行き懸念が根強いことが窺える。熊本地震の影響については、「熊本地震報道が減ったことにより、旅行需要の回復が見込まれる」(北関東・観光型旅館)のように、マインドの下押しが和らぎつつある様子が見て取れる。

企業動向関連は、「英国のEU離脱問題により、世界経済が不安定になっている。急激な円高、株安によって、消費者心理が冷え込んでいる。また、企業の収益面から、賃金の低下につながる恐れがある状況で、厳しいのではないか」(南関東・繊維工業)など、EU離脱による企業収益への影響を懸念する声が聞かれた。

雇用関連は、「英国のEU離脱問題による影響で、悪くなる」(南関東・学校)のように、景気の先行き不安から雇用環境が厳しくなるとの懸念が根強いようだ。
中国経済の減速を発端とした金融市場の混乱は落ち着きを取り戻していたものの、英国のEU離脱決定は金融市場に再び動揺をもたしている。さらに、熊本地震によるマインド面の下押しは和らぎつつあるが、これまで下支え役となっていたインバウンド消費が鈍ってきたことも、景況感を一段と悪化させている。先行きについては、英国のEU離脱決定による世界経済への影響や金融市場の動向などに左右される展開が予想されるため、当面景況感は弱含みで推移するだろう。
各種コメント数の推移 インバウンド関連/マイナス金利関連/物価下落関連/円高・株安関連/熊本地震関連/英国のEU離脱関連
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岡 圭佑

研究・専門分野

(2016年07月11日「経済・金融フラッシュ」)

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