2016年07月07日

2015年度生保決算の概要-円高・マイナス金利下で減益、今後さらに難しい状況へ

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   安井 義浩

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■要旨

生命保険会社41社の2015年度(2016年3月期)決算が5月下旬に出揃った。販売業績面では、新契約高は対前年度2.1%増加となったが、保有契約高は▲0.8%減少した。なお年換算保険料ベースでは新契約・保有契約とも増加した。第三分野は引き続き好調である。年度決算期末としては2~3年ぶりに株価下落・円高となったことが、各方面に影響している。基礎利益は▲12.8%減少したが、これは変額年金の最低保証の準備金の増加の影響などによる。ソルベンシー・マージン比率は、株式・外国証券の有価証券含み益が減少したことなどから低下した会社が多いが、引き続き高水準を維持している。契約者配当は、個人保険で増配した会社は多いが、資産運用実績との連動性が高い団体年金保険では減少した。その後マイナス金利もさらに拡大するなど、収支面で厳しい状況が続きそうだ。

■目次

1――保険業績の状況(全社)
2――大手中堅9社の収支状況
  1|減少した基礎利益
  2|利差益は拡大、だが今後は?
  3|減少した当期利益~内部留保増加額も減少するがなお拡大方向
  4|ソルベンシー・マージン比率~若干低下したが高水準を維持
3――かんぽ生命の状況
4――トピックス~マイナス金利下での運用難と貯蓄性商品の取扱い

1――保険業績の状況(全社)

1――保険業績の状況(全社)

2015年度の全社の保険業績を概観する。
生命保険協会加盟41社全社(昨年度から1社減少)が決算を公表したが、41社合計では、新契約高は2.1%増加、保有契約高は▲0.8%減少となった。これらを、伝統的生保(14社)、外資系生保(15社)、損保系生保(5社)、異業種系生保等(6社)、かんぽ生命に分類し、業績を概観した。(図表-1)
【図表-1】 主要業績
「伝統的生保」(以下、大手中堅9社数値で表示)の新契約高は▲2.2%の減少(前年度は▲7.7%の減少)と、引き続きマイナスとなった。

保有契約高も▲2.9%(前年度は▲3.2%)と引き続き減少した。各社とも解約・失効の防止によって契約継続に努めており、大手中堅9社計の解約失効率(対年度始保有契約高)は前期の4.7%から4.6%へと改善しているものの、保有契約高に対する新契約の割合も低いことにより、保有減少となっている。

「外資系生保」は、新契約高が10.4%増加(前年度は6.9%増加)と引き続き増加した。保有契約も2.8%増と(前年度は4.6%)引き続き増加した。

「損保系生保」は、新契約が▲1.2%と減少(前年度は2.0%増加)、保有契約は4.1%増加(前年度は5.1%増加)となった。

「異業種系生保等」は新契約が5.1%増加(前年度は19.5%増加)、保有契約は8.2%増加(前年度は6.4%増加)となった。

外資系・損保系・異業種系とも、一部の会社における動向(個人年金の急増・急減など。販売方針の変更によるものか)がそのカテゴリー全体の増減を左右しており、共通の傾向があるわけではなさそうだ。
【図表-2】新契約年換算保険料 基礎利益は41社中14社が増加したにとどまり、全体としては▲12.8%減少(前年度は7.9%増加)した。極端に大きく減少している会社もあり、詳細は今後調査する必要があるが、名称とは裏腹に、臨時的な要素が強く反映しているようだ。基礎利益のそうした圧迫要因としては、変額年金最低保証コストの増加、退職給付費用の会計処理上の一時的な増加、標準責任準備金積増し、などが考えられ、事情は各社それぞれであろう。

次に、新契約年換算保険料の状況を見たものが図表-2である。保険のニーズが死亡保障のみならず、医療や年金分野にも拡大しているところから、保険契約高のみでは保険業績を把握しづらくなってきた。この指標は、これらを反映する目的で、年払いに換算した保険料の額で新契約の規模を表示したものである。40社(かんぽ生命を除く)合計で、個人保険は対前年8.8%増加した。(前年度は9.4%増加)

また、個人年金は12.2%の増加(前年度は23.0%増加)となった。

伝統的生保では、新契約高が保障金額ベースでは減少となる一方で年換算保険料ベースでは増加している。これが年換算保険料という指標の効能であり、特に第三分野の状況をみるのに便利である。第三分野については、引き続き損保系を中心として進展しており、9.2%の増加(前年度は7.5%増加)となった。
 

2――大手中堅9社の収支状況

2――大手中堅9社の収支状況

以下で、特に収支上のシェアが大きい大手中堅9社合計の収支状況をみていくことにする。
【図表-3】運用環境/【図表-4】有価証券含み益(大手中堅9社計)/【図表-5】基礎利益の状況(大手中堅9社計) 1減少した基礎利益
2015年度の資産運用環境は図表-3の通りであり、特に年度後半で株価が下落し、円高が進んだ。といっても、ここ数年の中ではさほど深刻とはいえない程度と考えられる。国内金利については、10年国債利回りがついにマイナスにまで低下した。図表-4に示した通り、株価低下を受け国内株式の含み益が▲2.9兆円減少し、円高を反映して外国証券の含み益も▲1.8兆円減少した。しかし国内債券の含み益が7.3兆円増加したため、有価証券合計では2.6兆円増加した。

そうした中、図表-5のように、2015年度の基礎利益は22,402億円、対前年度▲7.1%の減少となった。基礎利益とは、生命保険会社の基本的な収益力を表わす利益指標で、銀行の業務純益に相当する。保険契約から生みだされる収支や、資産運用損益のうちの利息・配当金等、比較的安定的なものだけを含めており、有価証券の売却損益等は含まない。逆ざやについては、9社合計で見ると、2013年度に利差益に転じた後、2年続けて拡大した。危険差益・費差益は減少しており、保有契約の減少に伴うものと考えられる。
【図表-6】3利源の状況(開示7社計) 3利源を公表している7社だけの合計金額を見たものが図表-6である。危険差益は、▲8.3%(前年度 2.0%増加)と減少傾向にある。先に述べた保有契約の減少による影響がそのまま現れたものと考えられる。一方で危険差益のうち、保有契約高に表れない第三分野商品の利益は、現時点では増加基調にあると推測される(そうした内訳は開示されないので、推測にすぎないが)。また危険差益の増減そのものは、変額年金の最低保証に係る責任準備金の増減など、保険事故発生率とは関係のうすい事象にも左右されるので注意が必要である。

一方、費差益については、▲39.6%(前年度は▲9.3%減少)と大きく減少した。費差益を簡単に言えば、収入保険料のうち事業費を賄う付加保険料と、実際の事業費支出の差である。従って、保有契約の減少が付加保険料収入の減少を招き、このままでは費差益も年々減少する傾向にあると考えられる。また、退職給付会計に伴う退職年金費用の一部が、費差に含まれており、年度によって大きく増減することがある。2015年度も一部の会社でそのために大きく減少していることなどもあり、こうしたことは、今後どの会社にも起こりうる事象であろう。

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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

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