2016年07月01日

日銀短観(6月調査)~大企業製造業の景況感は横ばいだが、非製造業は悪化、設備投資計画も弱い

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 日銀短観6月調査では、大企業製造業の業況判断D.I.が6と前回3月調査比で横ばいとなったが、非製造業は19と前回比3ポイント低下し、2四半期連続でマインドが悪化。製造業では円高進行等を受けて加工業種で景況感が悪化したものの、市況改善に伴う素材業種の景況改善が補い、横ばいを維持した。非製造業では、国内消費の低迷が長引いているうえ、円高や震災の影響などから、これまでの支えであったインバウンド需要の勢いに陰りが出たことが影響したとみられるほか、原油高も逆風となったようだ。中小企業も、非製造業の景況感悪化が顕著。
     
  2. 先行きの景況感も、大企業製造業で横ばいとなったのを除いて、幅広く悪化が見られた。中小企業製造業では新興国経済の減速や円高への懸念などが悲観に繋がったと考えられる。非製造業では伸び悩む内需や原油高への警戒感が強く現れたとみられ、企業規模を問わず、製造業よりも先行きに対する厳しい見方が示された。
     
  3. 16年度の設備投資計画は、15年度比で0.4%増と前回調査から上方修正された。例年、6 月調査にかけては大きく上方修正される傾向が強いうえ、今回は比較対象となる15年度の設備投資が大きく下方修正され、前年比のハードルが下がっていた。にもかかわらず、示された計画は例年に比べて上方修正が抑制的であり、伸び率も5年ぶりの低水準に留まった。円高の進行など懸念材料が多く、先行き不透明感が強いことが投資先送りに繋がっていると考えられる。
     
  4. ちなみに、今回は英国のEU離脱(Brexit)を殆ど織り込んでおらず、現時点では、企業の景況感や設備投資計画がさらに下振れしている可能性が高い。今回の短観は全体的に弱い部分が多く、日銀の追加緩和の可能性を低下させる内容ではないと見ている。
足元の業況判断DIは製造業で横ばい、非製造業で悪化(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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