2016年06月28日

医薬品・医療機器の現状 2015年度総まとめ

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   篠原 拓也

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4―― かかりつけ薬局の整備・拡充

医薬分業が進展する中で、保険薬局は重要な役割を担っている。今後、かかりつけ薬局として、その役割は更に大きくなるものと考えられる。ここでは、かかりつけ薬局の動向を紹介していく。

1|かかりつけ薬局の役割
まず、保険薬局の現状を概観して、かかりつけ薬局の役割について見ていくこととしたい。

(1) 自分自身で行う検査の整備の進捗(一般用検査薬の拡大と、セルフメディケーションの浸透)
健康意識の高まりから、自分自身で身体の検査をして健康状態を把握し、必要な場合には医療機関に受診をするといった「セルフメディケーション」が浸透しつつある。現在までに、そのための一般用検査薬として、1991年に尿糖、尿蛋白、1992年に妊娠検査薬、の3種類が承認されてきた。しかし、その後20年以上、新たな一般用検査薬の承認は行われてこなかった。

これに対し、医薬品の業界団体55が49項目について、新たに一般用検査薬として認めるよう要望を提出した。この中には、コレステロールやヘモグロビンA1c(HbA1c)など、血液を検体とする項目が含まれていた。このため、日本医師会は、感染や廃棄汚染の懸念から、血液のような侵襲56のある検体を一般用検査薬の対象とすることに反対した。これを受けて、厚生労働省は、2014年12月に、「一般用検査薬の導入に関する一般原則」を24年ぶりに見直して、従来の尿などに加え、唾液など侵襲のない検体を一般用検査薬の対象とすることとした。見直しにあたり、医師会の主張を踏まえて、一般用検査薬には、健康状態を把握し、受診につなげていけるもの、という条件が設けられている。また、悪性腫瘍等の重大な疾患についての一般用検査薬は認められず、感染症については個別の検査項目ごとに慎重に検討することとされた。現在、医薬品メーカーはその開発に取り組んでいる。今後、一般用検査薬として新たな製品が市場に登場するものと考えられる。

図表34. 一般用検査薬の導入に関する一般原則の内容 (主なもの) [2014年見直し後]

(2) 保険薬局で行う検体測定の整備の進捗
保険薬局で行う検体測定についても法整備が図られた。検体測定については、2014年4月施行の臨床検査技師法に基づく告示改正を受けて、保険薬局において検体測定事業が可能とされた。これは、利用者自らが採取した検体について、民間事業者が血糖値や中性脂肪などの生化学的検査を行うもので、自己検査の範疇で行われるため、告示改正により事業施設の衛生検査所登録が不要となったものである57

2015年5月には、「検体測定室連携協議会」が発足し、全国に1000ヵ所ほどある検体測定室を、3年後には5000ヵ所に増やし、年間受検者を90万人に引き上げる目標が掲げられている。なお、厚生労働省は2014年に検体測定室に関するガイドライン58を策定して適正な拡大を促している。

多くの薬剤師会では、健康情報拠点推進事業の一環として、糖尿病の早期発見のために、指先に針を刺して微量の血液を採る自己採血(自己穿刺による採血)により、HbA1c値の測定を実施している。

(3) 薬剤師による疑義照会

薬剤師は、処方箋に基づいて医薬品の調剤・処方を行う。その際、医師の処方箋を薬剤師としてチェックして、疑義がある場合には医師に問い合わせることとされている。これは、「疑義照会」と言われ、薬剤師法にも薬剤師の義務として規定されている。疑義照会は、医薬分業の根幹をなす重要な制度である。疑義照会の対象となる疑義は、処方箋の記載漏れや判読不能などの形式的な疑義と、処方内容に関する薬学的な疑義の2つに分けることができる。

日本薬剤師会の委託事業として行われた2013年度の疑義照会の調査によれば、処方箋総枚数に対して疑義照会を行った件数の割合(疑義照会率)は2.9%であった。疑義照会のうち、薬学的疑義の割合が77.3%に上った。同調査では、薬学的疑義の照会により1件当たり約500円59の薬剤費節減が図られており、年間の推定額に引き直すと節減額の推定金額は82億程度としている60

図表35. 疑義照会率と医薬品費節減

(4) かかりつけ薬局に求められる役割
保険薬局の数は徐々に増加し、2013年度には全国で5.71万局に達した。

図表36. 保険薬局数の推移

ただし、門前薬局が保険薬局の7割以上を占めることに見られるように、これまで、保険薬局は医師の出した処方箋に基づく調剤に偏重してきた。今後、地域医療の拡充を図る上で、医薬品処方において地域の核となる「かかりつけ薬局」を整備することが求められている。かかりつけ薬局の定義は明確に決まっている訳ではない。日本薬剤師会がかつて設定していた基準薬局の認定基準61によると、薬剤師が調剤のみでなく、薬歴(薬の服用記録)管理、服薬指導等を適切に行うことを基本として、地域医療体制に応じた開局体制をとり、一般用医薬品等の提供を通じて地域住民のセルフメディケーションの支援をすることなどが、主な役割となる。

図表37. かかりつけ薬局の役割 (主なもの)

特に、薬剤師には、薬歴を作成・管理し、薬の重複使用や相互作用(飲み合わせ)による副作用などを未然に防止すること。処方箋の内容を患者に説明し、服薬指導を行い、薬の飲み残し(残薬)を避けること。一般用医薬品(市販薬)の副作用情報なども含め、健康に関する情報を提供すること、などの機能を果たすことが期待されている。

このうち、薬歴管理については、2015年2月に大手ドラッグストアの薬局で、服用記録の未記載問題が相次いで発覚したことから、厚生労働省が日本薬剤師会などに自主点検を要請した。その結果、2014年に1220薬局で81万件(報酬申請件数2052万件の約4%に相当)の未記載事案があったことが判明した62。薬歴管理は、薬剤師の基本職務の1つであり、改善に向けた取組みが必要な状況にある。
 
55 日本臨床検査薬協会、日本OTC医薬品協会が、12用途、46検査の49項目について、要望を提出した。
56 医学で、生体の内部環境の恒常性を乱す可能性がある刺激全般をいう。投薬・注射・手術などの医療行為や、外傷・骨折・感染症などが含まれる。
57 厚生労働省は、衛生検査所登録が不要な保険薬局等の施設を「検体測定室」と定義した。検体測定室は、診療の用に供しない検体検査を行う施設で、(1)当該施設内で検体の採取および測定を行う、(2)検体の採取及び採取前後の消毒・処置については受検者が行う、こととされた。なお、検体測定室の運営責任者は、医師、薬剤師、看護師又は臨床検査技師とされている。
58 「検体測定室に関するガイドラインについて」厚生労働省 (医政発0409 第4 号, 平成26 年4 月9 日)
59 調査の「処方の記入漏れ(過去の処方との比較による)」を除いた薬学的疑義照会の件数3,844件に対する金額。
60 「規制改革会議公開ディスカッション『医薬分業における規制の見直しについて』」(公益社団法人日本薬剤師会, 資料2-5,平成27年3月12日)による。金額は薬価ベース、処方箋枚数は7.9億枚(平成24年度)として計算されている。
61 公益社団法人 日本薬剤師会は、1990年4月に基準薬局制度を発足させて、保険薬局の処方箋応需が可能な薬局体制づくりを進めてきたが、処方箋受取率が高まったことを受けて、2015年3月に同制度を発展的に解消している。
62 「薬剤服用歴の記載状況について~関係団体による自主点検結果(平成27年6月24日現在)~」厚生労働省(中医協 総-4, 平成27年6月24日)より。
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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品、保険計理

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