2016年06月10日

企業物価指数(2016年5月)~原油安一巡も大幅なマイナス

経済研究部 研究員   岡 圭佑

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1.原油安一巡も大幅なマイナス

国内企業物価指数の要因分解 6月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2016年5月の国内企業物価は前年比▲4.2%(4月:同▲4.2%)と事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲4.2%)通りの結果となった。前月比では0.2%(4月:同▲0.4%)と1年ぶりにプラスに転じた。

国内企業物価注1の前年比寄与度をみると、機械類(4月:前年比▲0.17%→5月:同▲0.20%)、為替・海外市況連動型(4月:前年比▲1.70%→5月:同▲1.91%)のマイナス寄与が拡大する一方で、鉄鋼・建材関連(4月:前年比▲0.45%→5月:同▲0.40%)、素材(その他)(4月:前年比▲0.85%→5月:同▲0.84%)、電力・都市ガス・水道(4月:前年比▲1.15%→5月:同▲1.12%)のマイナス寄与が縮小した。なお、その他(4月:前年比0.10%→5月:同0.20%)は国内企業物価の押し上げ要因となった。

機械類は輸送用機器や電気機器を中心に弱含んでいる。為替・海外市況連動型は非鉄金属や石油・石炭製品の下落を反映して、大幅なマイナスを続けている。鉄鋼・建材関連は鉄鋼、スクラップ類の下落幅縮小を主因に下落圧力を弱めている。素材(その他)はプラスチックを中心に下落幅を縮小している。電力・都市ガス・水道は原油価格の下落を反映した電力・都市ガスの燃料調整が続くなか、再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価引き上げにより下落幅を縮小している。一方、その他は農林水産物の上昇を主因にプラス幅を拡大している。
 
注1 1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
   2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
   3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
   4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属 
   5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物

2.輸入物価は円高で下落幅を拡大

4月の輸入物価は円ベース(4月:前年比▲19.8%→5月:同▲20.1%)の下落幅が前月から拡大し、契約通貨ベース(4月:前年比▲14.0%→5月:同▲13.1%)は縮小した。円高の影響で円ベースでの下落幅は契約ベースを上回る状況が続いている。

輸入物価(円ベース)注2の前年比寄与度をみると、石油・石炭・液化天然ガス(4月:前年比▲11.3%→5月:同▲10.6%)、食料品・飼料(4月:前年比▲1.07%→5月:同▲1.06%)のマイナス寄与が縮小する一方で、金属・同製品(4月:前年比▲2.5%→5月:同▲2.7%)、化学製品(4月:前年比▲0.8%→5月:同▲0.9%)、機械器具(4月:前年比▲2.9%→5月:同▲3.2%)のマイナス寄与が拡大したため、輸入物価は前月から若干下落幅を拡大した。

足もとの原油価格(ドバイ、5月月中平均)は前年比▲29%と、昨年8月(同▲53%)をピークに下落幅が緩やかに縮小しているものの、石油・石炭・液化天然ガスは二桁台の大幅なマイナスを続けている。これは、これまでの大幅な原油安の影響が6ヵ月程度遅れて液化天然ガスに波及しているためと考えられる。一方、石油製品は原油価格の持ち直しを反映しマイナス寄与が縮小傾向にある。先行きは昨年末以降の原油価格の持ち直しが石油製品、液化天然ガスの下落を抑制することから、石油・石炭・天然ガスの下落幅は引き続き緩やかに縮小することが見込まれる。食料品・飼料は、契約通貨ベースでの下落幅縮小を主因に、穀物(4月:前年比▲16.5%→5月:同▲15.1%)や加工原料食品(4月:前年比▲18.0%→5月:同▲13.2%)などが前月から下落幅を縮小している。一方、化学製品はエチレン・プロピレン(4月:前年比▲20.6%→5月:同▲28.6%)やベンゼン(4月:前年比▲22.9%→5月:同▲29.0%)などが前月から下落幅を拡大している。
輸入物価指数変化率の寄与度分解/輸入物価(石油・石炭・天然ガス)の推移
輸入物価(円ベース)の変化率を為替要因と契約通貨ベース要因に分解してみると、為替レートは年初来の急激な円高によって輸入物価の下押し要因となっている。新興国の景気減速懸念や日銀の追加緩和観測の後退などを受けて、5月の為替レート(月中平均)は1ドル=109.2円(4月:109.7円)と前年に比べ10%程度(4月:8%程度)の円高水準となった。しかし、6月に入ってから為替レート(月中平均)は1ドル=108.3円で推移しており、前年に比べ12%程度の円高水準にある。原油価格をはじめとした国際商品市況の持ち直しによって輸入物価の下落圧力は緩和されているものの、円高による下押し圧力が残存することから、輸入物価は大幅なマイナスを続けることが見込まれる。
輸入物価指数の変動要因/輸入物価指数(類別)の変動要因
 
注2 1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
   2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品

3.最終財は下落基調を強める

5月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲26.5%(4 月:同▲27.7%)、中間材が前年比▲8.0%(4月:同▲7.8%)、最終財が前年比▲3.0%(4月:同▲2.7%)となった。

原油安や円高による下落圧力は輸入物価を経由して、川下の最終財へ伝播している。最終財は価格転嫁の進捗などから堅調に推移していたが、2015年11月に下落に転じた後下落幅を拡大している。原油価格(ドバイ)は1月の1バレル=20ドル台半ばから、足もとでは40ドル台半ばまで持ち直しているが、過去の原油安の影響が遅れて反映されることに加え円高の影響が顕在化するため、最終財は当面下落を続ける可能性が高い。このため、最終財のうち消費者物価と関連性の高い消費財は、当面マイナス圏の推移が続くとみている。
需要段階別指数/最終財と消費者物価

4.国内企業物価は秋頃にかけて大幅なマイナスが続く 

輸入物価と国内企業物価の時差相関 上述のとおり、原油安と円高の影響は輸入物価を経由して国内企業物価に大きく影響している。足もとでは原油価格が持ち直しているが、国内企業物価は当面大幅なマイナスを続ける可能性が高い。

輸入物価の変動は品目毎に異なるペースで国内企業物価に波及し、均してみると4ヵ月程度で連動性が最も高くなる。原油安は一巡しているものの、ガス代や電気は原油価格の変動が6ヵ月程度遅れて反映されるほか、円高による下押し圧力が続くことから、前年比でみた国内企業物価は大幅なマイナスを続ける可能性が高い。ただし、原油価格が持ち直し傾向にあるため、その影響が顕在化する2016年夏場以降、国内企業物価は緩やかに下落幅を縮小するだろう。
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経済研究部   研究員

岡 圭佑 (おか けいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2016年06月10日「経済・金融フラッシュ」)

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