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株価の振る舞いに変化?(1)-リスクコントロール手法は合理的であり続けるのか?
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
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3――リスクコントロール手法の合理性は継続するのか
(1)近年の状況
まず、前提1の変化の有無を確認する。図表6はリスクコントロール手法を採用するETFが上場した2012年から2015年の4年間を対象に、恐怖指数とその後の株価収益率との関係を確認した結果である。リスクコントロール手法を採用するETFが上場する前の結果(図表3)と比較すると、その結果は明らかに異なる。以前はボラティリティの高低とその後の株価収益率との間に特段の関係性は確認できなかった。しかし、近年は、日本市場の週次を除き、ボラティリティが高いほど、その後の株価収益率も高い傾向がある。日本市場においては、統計的信頼性はさほど高くないが、欧米市場においては統計的信頼性もかなり高い。
近年、恐怖指数が高いほどその後の株価収益率も高い傾向が確認できるのは、恐怖指数の水準が、リーマンショック時に比べ、安定していることが影響しているかもしれない(図表8)。そこで、近年と同等かそれ以上に恐怖指数の水準が安定していた2002年から2006年で同様の分析を実施したが(図表9)、恐怖指数の高さはその後の株価上昇を示唆するわけではない。
以上から、近年の恐怖指数が高いほどその後の株価収益率も高い傾向は、恐怖指数の安定が理由ではないと考えられる。加えて、過去において、一部(日本・週次、日本・月次、欧州・月次)は、恐怖指数が高いほどその後の株価収益率が低い傾向がある。これは、2002年から2006年、2007年から2011年、2012年から2015年と進むにつれ、恐怖指数の高さとその後の株価収益率が徐々に変化しつつあることを示唆する。
前2節から二つのことが言える。一つ目は、時点によらずボラティリティの高さはその後の価格変動が大きいことを示唆する。二つ目は、ボラティリティの高さとその後の価格収益率の関係が徐々に変化し、近年に限ればボラティリティが高いときは、その後の価格収益率も相対的に高いかもしれないということである。
以前は、「期待できる収益率が同じならリスクは低いほうがいい」と考える投資家にとって、ボラティリティが高い時に株式への投資割合を減らすことは合理的であった。しかし、期待できる収益率が異なるならば、話は変わってくる。また、リスクは長期的には運用資産の減少を招くが、リスクに見合ったリターンが期待できるのであれば、長期的な視点に立っても、ボラティリティが高い時に株式への投資割合を減らす必要は無いかもしれない。
4――おわりに
また、リスクコントロール型投資信託の出現以前から、ボラティリティの高さとその後の価格変動との関係の変化が起こっている。このことから、この変化の原因はリスクコントロール型投資信託の増加ではなさそうだ。引き続きボラティリティの高さとその後の価格変動との関係を観測するとともに、その原因の解明にも取り組みたい。
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03-3512-1851
(2016年06月06日「基礎研レポート」)
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