2016年05月18日

QE速報:1-3月期の実質GDPは前期比0.4%(年率1.7%)~一進一退が続く日本経済

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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●1-3月期は前期比年率1.7%と2四半期ぶりのプラス成長

本日(5/18)発表された2016年1-3月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.4%(前期比年率1.7%)と2四半期ぶりのプラス成長となった(当研究所予測4月28日:前期比0.1%、年率0.6%)。
設備投資(前期比▲1.4%)、住宅投資(前期比▲0.8%)は減少したが、民間消費が10-12月期の大幅減の反動やうるう年による日数増の影響から前期比0.5%の増加となったこと、政府消費が前期比0.7%の高い伸びとなったことなどから、国内需要が前期比0.2%と2四半期ぶりの増加となった。こうした中、国内需要低迷を背景とした輸入の弱さもあり外需が3四半期連続で成長率の押し上げ要因となったため、実質GDPは潜在成長率を上回る高めの伸びとなった。
ただし、GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われていないため、2016年1-3月期の成長率は日数増によりかさ上げされている可能性がある。当研究所では1-3月期の成長率はうるう年の影響で前期比年率1%程度押し上げられた(民間消費は前期比0.4%程度)と試算しており、この影響を除けば小幅なプラス成長と考えられる。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.2%(うち民需0.1%、公需0.2%)、外需が0.2%であった。
 
名目GDPは前期比0.5%(前期比年率2.0%)と2四半期ぶりの増加となり、実質の伸びを上回った。GDPデフレーターは前年比0.9%(10-12月期:同1.5%)、前期比0.1%(10-12月期:同0.3%)となった。国内需要デフレーターは前期比▲0.5%の低下となったが、輸入デフレーターの低下幅(前期比▲6.8%)が輸出デフレーターの低下幅(同▲3.7%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
なお、2016年1-3月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定され、2015年7-9月期(前期比年率1.4%→同1.6%)が上方修正される一方、10-12月期(前期比年率▲1.1%→同▲1.7%)が下方修正された。
この結果、2015年度の実質GDP成長率は0.8%、名目成長率は2.2%となった。
<需要項目別結果>
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比0.5%と2四半期ぶりに増加したが、2015年10-12月期の大幅な落ち込み(前期比▲0.8%)を取り戻せていないこと、うるう年に伴う日数増で押し上げられていること(当研究所では1-3月期の民間消費はうるう年で前期比0.4%押し上げと試算)を考えれば、実勢としては底這い圏の動きが続いていると判断される。雇用・所得環境の改善傾向は続いているが、年明け以降の株価下落などを受けて消費者心理が大きく悪化したことが消費抑制の一因になったと考えられる。
名目雇用者報酬は10-12月期の前年比1.9%から同2.5%へと伸びを高めた。一人当たり名目賃金は伸び悩みが続いているが、雇用者数(労働力調査ベース)の伸びが10-12月期の前年比1.0%から同1.5%へと加速したことが雇用者報酬を大きく押し上げた。また、物価上昇率が低下したことから実質雇用者報酬は前年比2.7%の高い伸びとなった。
2016年の春闘は不発に終わったため、名目賃金の伸びが大きく高まることは期待できないが、雇用の底固さが維持されていること、円高や既往の原油価格下落を反映し物価上昇率の低下が続くことが先行きの消費を下支えすることが見込まれる。
 
住宅投資は前期比▲0.8%と2四半期連続で減少した。ただし、新設住宅着工戸数は10-12月期の86.8万戸から1-3月期は94.7万戸へと大幅に増加している。GDP統計の住宅投資は工事の進捗ベースで計上され着工の動きがやや遅れて反映されるため、4-6月期は増加に転じる可能性が高い。
 
設備投資は前期比▲1.4%と3四半期ぶりの減少となった。企業収益は高水準を維持しているものの、円高や海外経済の減速を背景に2015年度下期にかけて急減速しており、企業の投資姿勢の慎重化につながったと考えられる。
 
民間在庫は前期比・寄与度▲0.0%と3四半期連続のマイナスとなった。ただし、在庫品増加額は1.6兆円のプラスとなっており、GDP統計上は在庫の積み上がりが続いていることを意味している。特に、流通在庫は10-12月期の0.8兆円から1.7兆円へと積み上がり幅が大きく拡大しており、最終需要の弱さを背景に在庫調整圧力が強い状態が続いている。
 
公的需要は大幅な減少が続いていた公的固定資本形成が前期比0.3%と下げ止まる中、政府消費が前期比0.7%と高めの伸びとなったため、前期比0.6%の増加となった。2016年度当初予算は前年度とほぼ同水準にとどまっているが、2015年度補正予算の執行、2016年度当初予算の前倒し執行、熊本地震の復旧に向けた補正予算による押し上げが見込まれることから、先行きの公的固定資本形成は伸びを高める可能性が高い。
 
外需寄与度は前期比0.2%と3四半期連続のプラスとなった。財貨・サービスの輸出は前期比0.6%と10-12月期の落ち込み(前期比▲0.8%)の後としては低い伸びにとどまったものの、国内需要の弱さを反映し、財貨・サービスの輸入が前期比▲0.5%と2四半期連続で減少したことが成長率の押し上げ要因となった。
(4-6月期はマイナス成長の公算も、景気は夏場に向けて持ち直しへ)
2015年度の日本経済を振り返ると、実質GDP成長率は0.8%と2年ぶりのプラス成長となったが、四半期毎ベースでは2015年4-6月期以降マイナス成長とプラス成長を繰り返しており、年度内成長率(2015年1-3月期から2016年1-3月期までの伸び率)は▲0.0%と小幅ながらマイナスとなった。このことは日本経済が1年にわたって停滞を続けたことを示している。
年度内成長率は2年連続のマイナス 現時点では、4-6月期の実質GDPは熊本地震の影響、うるう年要因の反動による消費の伸び率低下、円高の影響顕在化による輸出の減少などから、小幅なマイナス成長となると予想している。ただし、実質雇用者報酬が高めの伸びとなるなど、消費を取り巻く環境は好転しており、これまで低迷を続けた個人消費は回復に向かうことが見込まれる。円高による下振れリスクはあるものの、景気は夏場に向けて徐々に回復軌道に戻る可能性が高いだろう。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年05月18日「Weekly エコノミスト・レター」)

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