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1――マイナス金利の導入
日本の物価を日銀が金融政策の指標のひとつとしている「生鮮食品を除く総合指数」の動きで見てみよう。量的・質的金融緩和が導入された2013年初め頃には、前年に比べてマイナス0.2%程度の下落だったが、2014年初め頃には1%強上昇するようになっていた。消費税率を引き上げたことで一時は3%以上の上昇となったが、その後原油価格の大幅な下落などの影響から2016年初めには上昇率はほぼゼロとなっていた。日本銀行は、今回金融緩和を一段と強化することによって物価上昇目標の達成を確かなものにしようとしている。
2――見えにくい金融政策のコスト
マイナス金利は為替レートの操作を主目的としたものではないが、ユーロが大幅に下落したように、円高を抑止する効果もあると考えられる。日銀がマイナス金利を導入した直後に一時的に円安となっただけで、その後はすぐに円高に転じてしまったが、これは様々な要因が働いた結果であり、マイナス金利が円高を招いたわけではないと考えるべきだ。
効果を否定してしまうのは行き過ぎだが、金融政策では誰も損をせずに全員が得をするというような話も間違いだ。国債を発行して減税や公共事業を行い景気を刺激する政策では、借りたお金は最終的に税金で返さなくてはならないことが簡単にわかるので、負担が見えやすい。これに比べると金融政策のコストは見え難く、誰の負担にもならないように見えてしまう。しかし、見えにくいというだけで金融政策でもさまざまな負担が発生する。
マイナス金利の導入によって日本では10年国債の利回りまでもマイナスとなった。これによって、将来は大きな負担が発生する恐れがある。一例をあげると、国民年金や厚生年金などの公的年金や企業年金などでは、資金を一定の利回りで運用できることを前提に保険料や支払われる年金額が決められている。このため将来的には保険料の引き上げや年金額の削減、税金の投入が必要になる恐れが大きい。
3――長期間続ける政策ではない
そもそも、量的・質的金融緩和自体が、普通の景気後退では使うべきではないとされていた非常手段だ。2%の物価上昇は2年程度で実現するはずで、これほど長期に続けるとは考えられていなかった。マイナス金利を追加するという、さらに強い薬の副作用は当然、より強烈だ。いずれ弊害が大きくなってしまう恐れが大きく、長期間続けるべき政策ではないと考える。
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櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
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(2016年05月11日「基礎研マンスリー」)
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