2016年04月28日

【4月米FOMC】予想通り、政策金利据え置き。6月利上げも示唆せず

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.金融政策の概要:予想通り、政策金利を据え置き。6月利上げの示唆はなし。

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が4月26-27日(現地時間)に開催された。市場の予想通り、FRBは政策金利を据え置いた。
今回発表された声明文では、景気の現状認識の部分で労働市場が更に改善したことに言及され、労働市場の回復に自信を持っていることが示された一方、堅調な所得環境や高い消費者センチメントにも係わらず家計消費の伸びが鈍いことに言及された。景気見通しでは、引き続き注視するとされたものの、前回言及された世界経済や金融情勢がリスクとの表現が削除され、一頃に比べて世界経済や資本市場が安定してきていることを反映した表現に変更された。
一方、金融政策のガイダンス部分では、次回(6月)利上げの可能性を示唆する表現は盛り込まれなかった。
今回の金融政策決定に際しては、前回会合(3月)に続き、カンザスシティー連銀のジョージ総裁が政策金利を引き上げるべきとして反対票を投じた。

2.金融政策の評価:6月の追加利上げの可能性は低い。7月、12月の年2回利上げを予

政策金利の据え置きは当研究所の予想通り。一方、世界経済や金融情勢がリスク要因から外れたことから、6月追加利上げの可能性が残ったとの見方もあるようだ。しかしながら、ガイダンス部分で6月追加利上げの示唆がなかったことから、それは読みすぎだろう。
米経済は、1-3月期の成長率が前期からさらに低下したとみられるほか、家計消費の鈍さはFRBの消費主導の景気回復シナリオに疑問符を投げかけていると言えよう。一方、原油価格は底堅さを増しているため、夏場以降に物価が想定以上の早いペースで上昇する可能性もあるなど、追加利上げの決定に際して足元では強弱材料が混在している。このため、現段階で6月追加利上げに向けたFRB内の意見集約は出来ておらず、市場との対話を通じた地均しも不十分だ。
当研究所では、これまで追加利上げ時期を6月と12月の年2回と予想していたが、今回の結果を受けて、次回利上げ時期を6月から7月に変更する。世界経済や金融情勢の安定が持続し、4-6月期の成長再加速を見極めた上で、7月利上げに向けた地均しを6月会合で改めて行うと予想する。
7月会合では、現段階で記者会見は予定されていないものの、臨時の記者会見で政策意図の説明が可能なほか、翌月(8月)にはジャクソンホール会議が予定されており、そこでも追加利上げについて丁寧な説明を行うことが可能なため、7月会合での追加利上げに問題はないとみられる。

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • FF金利の誘導目標を0.25-0.50%の水準に維持(変更なし)
  • 政府機関債、MBSの償還分はMBSへ再投資(変更なし)
  • 米国債の償還分は米国債へ再投資(変更なし)
  • FF金利の正常化が十分に進展するまでこの方針を続けることを見込む(変更なし)
  • 長期債を高水準で保有し続けることで緩和的な金融環境を維持する(変更なし)
 
(フォワードガイダンス、今後の金融政策見通し)
  • 金融政策スタンスは依然として緩和的であるため、更なる労働市場の改善や物価の2%への上昇を下支えする(変更なし)
  • FF金利の目標レンジに対する将来の調整時期や水準の決定に際して、委員会は経済の現状と見通しを雇用の最大化と2%物価目標に照らして判断する(変更なし)
  • これらの判断に際しては、雇用情勢、インフレ圧力、期待インフレ、金融、海外情勢など幅広い情報を勘案する(変更なし)
  • 現状でインフレ率が2%を下回っている状況に照らして、委員会は実績と物価目標に向けた見通しを注意深くモニターする(変更なし)
  • 委員会は、FF金利の緩やかな上昇のみを正当化するような経済状況の進展を予想しており、暫くの間、中長期的に有効となる水準を下回るとみられる(変更なし)
  • しかしながら、実際のFF金利の経路は、今後入手可能なデータに基く経済見通しによる(変更なし)
 
(景気判断)
  • 経済活動が鈍化したように見える中にあっても、労働市場はさらに回復した(今回追加)
  • 堅調な家計所得の伸びと高い消費者センチメントにも係わらず、家計消費の伸びは緩やかとなった(家計消費が“increasing at moderate rate”から”has moderated”に下方修正)
  • 住宅市場はさらに改善した(変更なし)
  • 設備投資と純輸出は軟調となっている(変更なし)
  • 力強い雇用増加を含む最近の広範な指標は労働市場が力強さを増していることを示している(変更なし)
  • インフレ率は、これまでのエネルギー価格や、エネルギー以外の輸入品の価格下落を反映して、2%の長期的な目標を下回り続けている(”Inflation picked up in recent months;”の表現を削除)
  • 市場が織り込むインフレ率は低位に留まっている(変更なし)
  • 調査に基く長期物価見通しは、最近数ヶ月は全般的に変化に乏しい(変更なし)
 
(景気見通し)
  • 委員会は、金融政策スタンスの漸進的な調整により、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場の指標が引き続き強くなると、現状で予想している(変更なし)
  • しかしながら、世界経済と金融情勢が引き続きリスクである(今回削除)
  • インフレ率は、エネルギー価格のこれまでの下落もあって、短期的に低水準に留まるとみられる(変更なし)
  • エネルギーや輸入価格のこれまでの下落といった一時的な要因が解消することや労働市場の更に強くなることによって、(インフレ率は)中期的には2%に向けて緩やかに上昇すると予測する(変更なし)
  • 委員会は、引き続きインフレ動向と世界経済および金融情勢を注視する(注視する項目として世界経済と金融情勢を追加)
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2016年04月28日「経済・金融フラッシュ」)

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