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欧州大手保険グループの2015年決算状況について-低金利環境下での各社の生命保険事業の地域別の業績や収益状況はどうだったのか-
中村 亮一
(1)地域別の業績-2015年の結果-
Allianzの営業利益は、自国のドイツが4割弱を占めているが、フランス、スペイン、イタリア等の主要国からも有意な収益を上げており、欧州全体で77%の構成比となっている。
米国の子会社グループは、2015年末の認容資産ベースで、生命保険・健康保険グループで第17位となっており、その構成比は22%となっている。
アジア・太平洋は、新契約価値では16%を占めており、高い位置付けを有してきているが、営業利益やMCEVでは、韓国や台湾での事業が低金利環境の影響を受けていることにより、マイナス(韓国での営業利益が▲244百万ユーロ)となっている。この点、アジア全体において、着実に収益も進展させているAXAのケースとは、若干異なる状況となっている9。
ただし、こうした結果を受けて、Allianzは2016年4月6日に、韓国の生命保険事業等を安邦保険グループに売却することに合意した、と公表している。
(2)地域別の業績-2014年との比較-
2014年との比較では、全体では減収増益となっている。
これは、低金利環境下で、自国のドイツやイタリアにおいて、保証を制限した低資本コスト商品へのシフトを進め、伝統的な保証付商品の販売を抑制したことによる影響である。イタリアやアジア・太平洋等ではユニットリンク型商品の販売が好調であった。(3)で述べるように、キャピタル・ゲインの実現により、投資関係の損益が増加したことから、営業利益では14%の進展を確保している。新契約価値は、前年に比べて減少しているが、これは金利低下によるものである。
なお、アジアでの営業利益やMCEVが、特に韓国事業が低金利環境の影響を受けていることから、大きく減少している。なお、韓国を除けば、アジア・太平洋のMCEVは10億ユーロのプラスで、2014年に比べても2億ユーロ増加していた、としている。
(3)投資関係損益を巡る状況
営業利益が14%増加した要因は、投資マージン(キャピタル・ゲインを含む投資収益から、保証利率や契約者配当等の投資関係経費を控除したもの)の率が98bpsと前年に比べて18bpsプラスになったことによって、投資マージンの絶対額が942百万ユーロ増加したことによるものである。ただし、これはネット・キャピタル・ゲインがプラス63bpsと大きく改善したことによるものである。なお、保険負債の平均保証利率は2.3%となり、対前年0.1%ポイント(説明資料によれば、6bps)低下している。
(4)デュレーションング・マッチングの状況
Allianz は、資産と負債のデュレーション・マッチングを進めてきており、2015年末の生命保険事業においては、資産8.8年、負債9.4年と、デュレーション・ギャップはわずか0.6年となっている。この点、他のドイツの生命保険会社が大きなデュレーション・ギャップを抱えているのとは異なっている。
9 AXAは世界各国で事業展開しているが、韓国事業はAXA Direct、台湾での保険事業はない等、Allianzとは異なる地域展開となっている。
(1)地域別の業績-2015年の結果-
Generaliは欧州中心に事業展開をしている。各種の指標において、自国のイタリアに加えて、ドイツとフランスで高い構成比を有しているが、さらにその他の欧州における構成比も高いものとなっている。
一方で、他の欧州大手保険グループとは異なり、欧州域外でのプレゼンスは高くない。なお、Generaliは、過去に保有していた米国の生命保険事業等を売却している。
さらに、2014年7月には、スイスのプライベート・バンキング・ユニットのBSIを売却する等して、資本ポジションを高めるとともに、非伝統的非保険事業(non-traditional and non-insurance activities)の規模を引き下げてきている。こうした動き等を受けて、Generaliは、2015年11月3日にFSBが公表したG-SIIsのリストから外されている。
(2)地域別の業績-2014年との比較-
2014年との比較では、全体では、増収ではあるものの、営業利益はほぼ横ばいとなっている。
主力の欧州は増収減益となっている。これは、自国のイタリアにおいて、一時払商品の販売が好調であったものの、低金利の影響を受けて、営業利益が10%減少したことによる。さらには、フランスでのユニットリンク商品等の販売が好調であったものの、新契約費の増加の影響を受けて、営業利益は伸び悩んだ形になっている。
一方で、いまだ規模は小さいものの、中国を中心としたアジアやアルゼンチンを中心とした中南米での進展率が高く、これらの地域では増収増益となっている。
(3)投資関係損益を巡る状況
2015年末の平均予定利率は1.80%であり、2010年の2.30%から50bps低下している。これに対して、投資利回りは2015年に3.40%で、2010年の4.30%から90bps低下しており、両者の差額としてのスプレッドは1.60%と、この5年間で40bps低下している。
一方で、2015年の新契約の保証利率は0.51%であるのに対して、再投資リターンは2.50%となっており、両者の差額は2%程度を確保している、としている。
(4)低金利環境への対応
Generaliは、欧州において金利低下が進む中で、イタリアやドイツを中心に、保証利率の引き下げに加えて、無保証等の低資本集約保証商品のウェイトを高めてきており、2015年においては新契約保険料の8割、保有責任準備金の6割弱を占める形になっている。
なお、Generaliの2015年末の債券のデュレーションは8.0年で、固定利付資産と負債とのデュレーション・ギャップは▲1.0年(負債が長い)と、着実にミスマッチの解消を図ってきている。
中村 亮一
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