2016年04月14日

【ASEAN経済】直近の製造業生産動向(4月号)~内外需の回復の遅れで停滞続く

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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(図表1)ASEAN6 製造業生産指数の伸び率 ASEAN主要6カ国の16年2月の製造業生産指数の伸び率(前年同月比)はベトナムとフィリピン、インドネシア、シンガポールが低下する一方、マレーシアとタイが上昇した(図表1)。
ベトナム、フィリピンはそれぞれ同23.0%増、同8.4%増とそれぞれ前月から低下したものの、高めの伸びを記録した。両国は人件費が安く、地理的に中国に近いことが魅力となって外資系企業の投資が増えており、製造業生産が堅調に拡大している。インドネシア1は同3.0%増と内需の回復の遅れ、シンガポールは同4.7%減と中国の旧正月を前に各社が在庫の積上げを図るために生産を拡大させた前月(16年1月)から低下した。
一方、マレーシアは同4.5%増、タイは同1.6%減となり、2月の輸出の増加を背景にそれぞれ前月から上昇した。
(図表2)タイ製造業生産・出荷・在庫指数、稼働率 タイの16年2月の製造業生産指数は前年同月比1.6%減の108.8ポイントと、前月から僅かに改善したものの、2ヵ月連続のマイナスであり、依然として停滞局面が続いている(図表2)。
業種別に見ると、全21業種中8業種が前年同月比で上昇、13業種が低下した。内外需が揃って弱い上に安価な中国産鉄鋼の輸出攻勢を受け、鉄鋼、自動車、アパレル、水産加工品が減少し、全体を押下げた。
出荷指数は同3.3%増、在庫指数は同5.0%増と、それぞれ前月からプラスに転じた。また稼働率は65.7%と、2ヵ月連続で上昇した。これは昨年4月以来で見れば最も高い水準であり、景気回復の兆しにも見える。
(図表3)マレーシア鉱工業生産指数(業種別) マレーシアの16年2月の鉱工業生産指数は前年同月比3.9%増の114.9ポイントと、3ヵ月連続の上昇となった(図表3)。業種別に見ると、全体の7割弱を占める製造業は同4.5%増、全体の3割弱を占める鉱業は同1.1%増、電力は同10.5%増となり、それぞれ前月から0.5%ポイント、0.5%ポイント、2.8%ポイント上昇した。鉱業の持ち直しが遅れる一方、製造業が底堅い伸びを維持している。
製造業の内訳を見ると、主力の電気・電子製品は同5.8%増とやや鈍化したものの、昨年に進んだ通貨安によって輸出競争力が向上しており、製造業平均を上回った。また石油・化学製品、ゴム・プラスチック製品は同2.9%増とやや持ち直したほか、木工製品・家具、紙製品、印刷は同9.6%増と前月に続いて高い伸びを維持した。
(図表4)シンガポール製造業生産指数(業種別)の伸び率 シンガポールの製造業生産指数の伸び率(前年同月比)は、中国の旧正月を前に各社が在庫の積上げを図るために前月(16年1月)の生産が12ヵ月ぶりのプラスとなったが、2月は前年同月比4.7%減の87.5ポイントと再びマイナスに転じた(図表4)。依然として生産の停滞局面を脱却できていないことが明らかとなった。
業種別に見ると、全21業種中10業種が前年同月比で上昇、11業種が低下した。2月の製造業生産指数の低下は、医薬・バイオ製品が同4.0%増と、上振れした前月(同35.1%増)から鈍化したこと、全体の3割を占めるコンピュータ・電子・光学製品が同6.9%減(1月:同3.6%増)のマイナスに転じたことが主因と見られる。
(図表5)フィリピン鉱工業生産指数(業種別)の伸び率 フィリピンの16年2月の工業生産量指数は前年同月比8.4%減の113.7ポイントと、前月の同34.3%増からは大きく低下したものの、高い伸びを記録した(図表5)。
業種別に見ると、全20業種中11業種が前年同月比で上昇、9業種が低下した。主要産業では、電気機械(同16.3%増)、食品加工(同25.9%増)、機械・設備(同22.9%増)が高い伸びを維持する一方、石油製品(同10.5%減)は減少傾向が続いている。食品加工は、エルニーニョ現象による農業生産に及ぼす悪影響が消えつつあることがプラスに働いたと見られる。また今後は大統領選前の選挙関連支出の拡大やインフラ開発プロジェクトの進展などで国内需要が拡大すると見られ、工業生産指数は高い伸びを維持すると見られる。
また2月の設備稼働率は83.3%となり、生産の拡大傾向にもかかわらず、前月から0.2%低下した。
(図表6)ベトナム鉱工業生産指数(業種別)の伸び率 ベトナムの16年3月の鉱工業生産指数は前年同月比6.2%増と、前月の同7.9%増からやや低下した(図表6)。昨年7月をピークに低下傾向が続いている。3ヵ月連続の二桁増となった。業種別に見ると、製造業が同8.8%増、電気ガス業が同12.2%増、水供給業が同9.5%増と好調を維持しているものの、鉱業が同4.6%減と4ヵ月連続のマイナスとなって全体の重石となっている。
製造業の内訳を見ると、食品(同5.3%増)、ゴム・プラスチック製品(同6.6%増)が製造業平均を下回る一方、主力のコンピュータ・電子・光学機器(同16.8%増)をはじめ繊維(同10.8%増)、アパレル(同10.1%増)など外国企業の投資が伸びている分野は高い伸びを示している。
また製造業の出荷指数は同11.2%増と2ヵ月ぶりの二桁増となる一方、在庫指数は同8.7%増と前月から小幅に低下した。
 
1 インドネシアの製造業生産指数は業種別の公表が遅れるため、国別の記述は割愛する。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2016年04月14日「経済・金融フラッシュ」)

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