2016年04月12日

【ASEAN経済】直近の輸出動向(4月号)~輸出は不振継続も、減少幅は縮小

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ASEAN主要6カ国の16年2月の輸出額(通関ベース)は、タイとベトナムを除く国で伸び率(前年同月比)がマイナスとなった(図表1)。
引き続き原油価格の低迷と世界経済の回復の遅れに伴う輸出の減少傾向が続いているものの、タイは14ヵ月ぶり、ベトナムは2ヵ月ぶりのプラスに転じたほか、シンガポール(石油と再輸出除く)、マレーシア、インドネシアは減少幅が二桁から一桁に縮小するなど、持ち直しの動きが見られた。
(図表1)ASEAN6カ国輸出額/(図表2)/ASEAN6カ国輸出の伸び率(3ヵ月移動平均)
(図表3)タイ輸出の伸び率(品目別) タイの16年2月の輸出額は前年同月比10. 3%増の189.9億ドルとなり、14ヵ月ぶりのプラスに転じた(図表3)。
品目別に見ると、主要工業製品が同13.8%増と大幅に拡大したことが全体を押上げた。また農産品・加工品も同2.2%増とプラスに転じたものの、鉱業製品は同32.7%減と14年9月以来マイナスの伸びが続いている。なお、2月の輸出を押上げた品目は主に(価格が上昇した)金や軍需用品であり、これらを除くと2月の輸出は依然としてマイナスの伸びを示している。従って、増加基調に転じたと見るのは早計であり、来月以降も輸出がプラスの伸びを維持できるかは注目と言える。
(図表4)マレーシア輸出の伸び率(品目別) マレーシアの16年2月の輸出額は前年同月比6.7%増の567.2億リンギ(ドルベースでは同8.2%減の135.8億ドル)となり、2ヵ月ぶりのプラスに転じた(図表4)。
品目別に見ると、マレーシアの輸出の約3分の1を占める電気・電子機器が同8.9%増となるなど、工業製品が昨年半ばに進んだ通貨安の恩恵を受けて全体を押上げている。またパーム油など動植物性油脂も同7.0%増と増加傾向を維持した。一方、原油や天然ガスなどの鉱物性燃料については同25.1%減と依然としてマイナスが続いているが、足元では国際商品市況に底打ちの動きが見られており、昨年の価格下落による輸出の下押し要因は今後縮小していくものと見られる。
(図表5)インドネシア輸出の伸び率(品目別) インドネシアの16年2月の輸出額は前年同月比7.2%減の113.0億ドルと、17ヵ月連続のマイナスとなったが、マイナス幅は一桁台に縮小した(図表5)。
品目別に見ると、輸出全体のそれぞれ1割強を占める石油ガスが同36.5%減、鉱業製品が同16.6%減と、資源価格下落の影響を受けて輸出の重石となっている。一方、製造品は同0.8%増と、船舶や自動車・部品、鉄鋼などが増加して10ヵ月ぶりのプラスに転じた。
(図表6)ベトナム輸出の伸び率(品目別) ベトナムの16年2月の輸出額は前年同月比6.2%増の101.0億ドルとなり、2ヵ月ぶりのプラスに転じた(図表6)1
品目別に見ると、電話・部品が輸出全体の約2割、繊維・衣類が1割強、コンピュータ・電子部品が1割、履物が1割弱を占めており、それぞれ2月の伸び率は同41.4%増、同8.3%減、同16.6%増、同6.3%減となった。これらは単月で見れば伸び率がマイナスとなる月もあるが、韓国のサムスン電子のスマートフォン製造やTPP(環太平洋パートナーシップ)協定の加盟を見越して外国企業の投資が伸びている分野であり、総じて増加傾向が続いている。
 
(図表7)シンガポール輸出の伸び率(品目別) シンガポールの16年2月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比2.1%増の109.4億シンガポールドル(米ドルベースでは同1.5%減の77.9億ドル)となり、4ヵ月ぶりのプラスに転じた(図表7)。
品目別に見ると、輸出(石油と再輸出除く)全体の3割を占める電子製品は同0.7%増となった。主力のICやPC部品はそれぞれマイナスとなったものの、PCや通信機器、ダイオード・トランジスタが増加して、電子製品全体としてプラスを維持した。また同じく全体の約3割を占める化学製品は同8.2%増と、石油化学製品の減少額を医薬品の増加額が上回って4ヵ月ぶりのプラスに転じた。残る4割を占めるその他製品は同0.5%減と、前月からマイナス幅が縮小した。
(図表8)フィリピン 輸出の伸び率(品目別) フィリピンの16年2月の輸出額は前年同月比4.5%減の43.1億ドルとなり、11ヵ月連続のマイナスとなった(図表8)。
品目別に見ると、輸出全体の約5割を占める電子製品が同8.1%増と9ヵ月連続のプラスとなったものの、価格下落の大きい一次産品が同18.9%減、その他製品ではアパレル(同44.9%減)、化学(同38.5%減)、その他製造品(同15.5%減)、金属部品(同13.3%減)などが二桁減となった。同国では、好調の電子製品でもその他の品目の減少を支えきれない状況が続いている。
 
1 ベトナムでは既に3月の貿易統計が公表されており、3月の輸出額は6.4%増の142億ドルと増加傾向が続いている。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2016年04月12日「経済・金融フラッシュ」)

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