2016年03月31日

ものづくりコミュニティの場として発展するファブラボ(FabLab)

社会研究部 上席研究員   百嶋 徹

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2ファブラボの4つの要件
ファブラボの名称について利用許可を出すような認証システムは今のところないが、ファブラボのグローバルネットワーク構築を支援するNGOであるファブ・ファウンデーション(Fab Foundation)は、ファブラボの名称を利用するための条件として以下の4つを挙げている。地域の独自性を備えたファブラボが急増する中、各拠点間で明確な共通の理念・精神を共有するため、この4つの条件の内容は、世界中のファブラボ関係者が一堂に集結する世界ファブラボ会議で継続的に議論されている。
 
(1)一般市民に開かれていること
ファブラボは、個人的な創作や発明のために工作機械を開放し、ものづくりを民主化しようと取り組んでいるため、無料または金銭に代わる交換条件の下、週に1回以上は一般に公開されていることが求められる。

(2)ファブラボ憲章の理念に基づき運営されていること
ファブラボと名乗る施設は、世界のファブラボが共有する基本理念や運営のガイドラインをまとめたファブラボ憲章(Fab Charter、後述)の内容をウェブサイトと施設内の目に触れる場所に掲示し、利用者に周知させることが求められている。

(3)共通の推奨機材を備えていること
すべてのファブラボが、ものづくりのノウハウや設計データを共有し、複製・改良していけるように機材を共通化している。デジタルおよびアナログの様々な工作機械やハンドツールを組み合わせることで、ほぼあらゆるもの(人を傷つけるものは除く)を作り出せる環境を目指しているため、レーザーカッターと3Dプリンターさえあればファブラボというわけではないし、デジタル機器以外の各種ハンドツールや電子工作ツールも欠かせない。共通の推奨機材は以下の通りである。

 ・レーザーカッター:紙や木材、アクリルなどの板材をカット、彫刻する
 ・CNCルーター:木の板材を切削加工し、家具などを作るための大型のルーター
 ・ミリングマシン:木材、樹脂、金属などを切削する高精度なフライス盤。銅板を切削して回路基板を作ることもできる
 ・ペーパー/ビニールカッター:紙やカッティングシートを切り出す。マスクやフレキシブル回路を作る
 ・3Dプリンター:3Dデータを基に、樹脂などを立体として出力する
 ・各種ハンドツール・電子工作ツール:加工品を仕上げるヤスリ、機械組立てのためのネジやドライバー、電子回路のための半田ごてやオシロスコープなど

(4)国際規模のネットワークに参加すること
毎年開催される世界ファブラボ会議、国境を超えたワークショップ等の連携プロジェクト、ビデオ会議システムなどを通じて国際的なファブラボのネットワークに参加し、その活動をオープンに共有することが求められている。

ものづくりのノウハウやラボの運営などに関する課題を共有し連携することで、個々のラボ単体では得られないような価値を生み出すことを目指しているからである。このネットワークこそがファブラボにとって重要な特徴であるため、他のラボと全く接点を持たずに独立して活動する施設はファブラボとは言えない。
 
上記の要件(2)の根幹を成すファブラボ憲章については、その内容は世界ファブラボ代表者会議やオンラインで議論されながら、随時アップデートされ、進化している。2012年10月20日版(英語版ドラフト、日本語訳は2013年5月23日付け)では、以下に示す通り、7つの問いに対する回答という形式で記載されている。
 
<ファブラボとは何か?>
ファブラボは、地域のラボの世界的なネットワークである。人々にデジタル工作機器を利用する機会を提供することで、個人による発明を可能にする。

<ファブラボには何があるか?>
ファブラボは、(ほぼ)あらゆるものをつくるための設備として、共通の機材を備える。この機材リストを各ラボが共有し、進化させていくことで、ラボを超えて協働し、プロジェクトを共有できるようにする。

<ファブラボ・ネットワークは何を提供するか?>
ファブラボはネットワークとして連携することで、ラボの運用、教育、技術、経営、事業計画など、各ラボで対応できること以上の協力が得られる。

<誰がファブラボを利用できるか?>
ファブラボは、コミュニティのリソースとして利用可能である。事業のために予定された利用とともに、個人に開かれた場としても利用される。

<利用者はどんな義務を負うか?>
安全:人や機械を傷つけないこと
作業:掃除やメンテナンス、ラボの改善など、運営に協力すること
知識:ドキュメンテーション(文書化)とインストラクション(使い方の説明)に貢献すること

<ファブラボの発明は誰の所有物か?>
ファブラボで生まれたデザインやプロセスは、発明者が望めば保護したり販売することもできる。ただし、それらは個人が学ぶために利用可能なものにしておくべきである。

<ファブラボにおけるビジネスはいかに可能か?>
ファブラボは営利活動のプロトタイピング(試作)やインキュベーション(新規事業育成)のために利用できるが、それらはその他の利用と衝突してはならない。また、ラボを超えて成長し、その成功に寄与した発明者、ラボ、ネットワークに利益を還元することが期待される。
 

3――ファブラボの運営形態

3――ファブラボの運営形態

1多様な運営形態
世界のファブラボの運営形態は、政府・自治体や大学・研究機関がバックアップしているもの、大学・専門学校内の施設としてのもの、地域のコミュニティセンターとしてのもの、文化施設・科学博物館や図書館と一体化したもの、NPO/NGOや個人によるもの、社団法人や財団法人によるもの、営利企業によるものなど、多種多様である。それぞれに独自の運営スタイルが模索されている。

日本に15か所あるファブラボの運営主体の組織形態を分析しても、一般社団法人が4か所(鎌倉、渋谷、仙台、藤沢)、株式会社が4か所(筑波、大宰府、大田、山口)、個人が4か所(北加賀屋、佐賀、浜松、広島安芸高田)、NPO法人が1か所(関内)、公益財団法人が1か所(大分)、任意団体が1か所(鳥取)となっており、運営形態が極めて多様であることがうかがえる(図表2)。

なお、ファブラボ鎌倉では、より幅広い活動展開へ向けて、運営主体の組織形態を当初の合同会社ファブラボ・カマクラ(FabLabKamakura,LLC)から、2015年に一般社団法人国際STEM学習協会(GLOBAL STEM LEARNING ASSOCIATION, JAPAN)へ移行した。また、ファブラボ渋谷を運営する一般社団法人デジタルファブリケーション協会は、2013年に任意団体から法人化した。

ファブラボ太宰府は、グッデイ(北部九州を中心に62店舗を展開するホームセンター)が運営母体だが、実質的にはグッデイを展開する嘉穂無線株式会社が運営を行い、関連会社の電子工作キットメーカー株式会社イーケイジャパンの社屋内でラボが運営されている。

営業日時についても、やはりラボによって多様である。日本のファブラボでは、日曜日など毎週1日の特定の時間帯のみの営業を行うケースがある一方、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボが運営を行っているファブラボ関内は、2015年12月にリニューアルオープンして以降、唯一365日24時間の営業を行っている(以前は土・日曜日12時~19時のみ)。
 
図表2 日本のファブラボの概要(設立年月、所在地、運営主体)
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社会研究部   上席研究員

百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)

研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、産業立地、地域クラスター、イノベーション、企業不動産(CRE)、環境経営・CSR

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