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- 米国経済の見通し-個人消費主導の景気回復持続も、懸念される資本市場の実体経済への影響
2016年03月09日
(貿易)外需の成長率のマイナス寄与持続もマイナス幅は縮小する見込み
10-12月期の純輸出では、輸入が前期比年率▲0.6%減少する一方、輸出が▲2.7%と輸出の減少幅が上回った。輸出の落ち込みは米ドル高に加え、主要な輸出相手先の景気回復の遅れが要因とみられる。16年1月も同様の傾向が続いており、貿易赤字の拡大に歯止めがかかっていない(図表18)。
16年以降の資本市場の不安定化に伴い、安全通貨として円が対ドルで買われたこともあり、足元では実質実効レートでみたドル高に一服感もみられる。しかしながら、米国では追加利上げが見込まれる一方、日本やユーロ圏では金融緩和強化が見込まれるため、米金利先高観を背景に当面ドル高基調は持続が予想される。もっとも、17年以降はドルが対ユーロで下落に転じるなど、ドル独歩高の状況は改善がしよう。
さらに、米国の主要な輸出相手先の成長率予想をみると、15年を底に17年にかけて緩やかに上昇することが見込まれている(図表19)。このため、輸出不振に伴う外需のマイナス寄与は当面続くものの、16年後半以降は輸出の持ち直しからマイナス幅は縮小が見込まれる。
10-12月期の純輸出では、輸入が前期比年率▲0.6%減少する一方、輸出が▲2.7%と輸出の減少幅が上回った。輸出の落ち込みは米ドル高に加え、主要な輸出相手先の景気回復の遅れが要因とみられる。16年1月も同様の傾向が続いており、貿易赤字の拡大に歯止めがかかっていない(図表18)。
16年以降の資本市場の不安定化に伴い、安全通貨として円が対ドルで買われたこともあり、足元では実質実効レートでみたドル高に一服感もみられる。しかしながら、米国では追加利上げが見込まれる一方、日本やユーロ圏では金融緩和強化が見込まれるため、米金利先高観を背景に当面ドル高基調は持続が予想される。もっとも、17年以降はドルが対ユーロで下落に転じるなど、ドル独歩高の状況は改善がしよう。
さらに、米国の主要な輸出相手先の成長率予想をみると、15年を底に17年にかけて緩やかに上昇することが見込まれている(図表19)。このため、輸出不振に伴う外需のマイナス寄与は当面続くものの、16年後半以降は輸出の持ち直しからマイナス幅は縮小が見込まれる。
3.物価・金融政策・長期金利の動向
(物価)総合指数の足元の上昇は一時的。総合指数とコア指数の乖離は持続
消費者物価の総合指数(前年同月比)は1月に+1.4%と前月の+0.7%から大幅に上昇し、コア指数+2.2%との乖離が縮小した(図表20)。
もっとも、これは14年12月の+0.8%から15年1月▲0.1%に急落した影響による一時的な動きで、2月以降は総合指数が再び低下する形で乖離が拡大するとみられる。
当研究所では、16年末にかけて原油価格は緩やかに上昇すると予想しているものの、水準はWTI先物で40ドル近辺に留まると予想しており、16年平均でも36ドル(前年:49ドル)と前年比で3割近い下落となることから、16年の消費者物価の総合指数は前年比+0.9%に留まろう。このため、総合指数でみた物価は抑制されるほか、コア指数との乖離は持続するとみられる。
消費者物価の総合指数(前年同月比)は1月に+1.4%と前月の+0.7%から大幅に上昇し、コア指数+2.2%との乖離が縮小した(図表20)。
もっとも、これは14年12月の+0.8%から15年1月▲0.1%に急落した影響による一時的な動きで、2月以降は総合指数が再び低下する形で乖離が拡大するとみられる。
当研究所では、16年末にかけて原油価格は緩やかに上昇すると予想しているものの、水準はWTI先物で40ドル近辺に留まると予想しており、16年平均でも36ドル(前年:49ドル)と前年比で3割近い下落となることから、16年の消費者物価の総合指数は前年比+0.9%に留まろう。このため、総合指数でみた物価は抑制されるほか、コア指数との乖離は持続するとみられる。
(金融政策)16年の追加利上げは2回(0.50%)を予想
FRBは、12月に政策金利引き上げを開始したが、過去の利上げ開始局面に比べると物価は抑制されており、物価面からは利上げ開始の蓋然性は低かった(図表21)。依然として物価目標達成時期が不透明な中、世界的なリスク回避姿勢の高まりから、金融環境が引き締まるなど、実体経済への影響が懸念される状況もでているため、FRBによる金融政策の舵取りはますます難しくなっている。
当研究所はこれまで16年に3回(0.75%)とFOMC参加者の予想である4回(1.00%)より利上げ幅が小幅に留まると予想していたが、資本市場の動向が実体経済に与える影響を見極めるため、資本市場の不安定な状況が長期化しない前提で年2回(0.50%)の利上げ見通しに変更した。
もっとも、2月のG20では世界経済減速リスクに対して各国が政策を総動員して対処することで合意されたことから、世界的に資本市場の不安定な状況が長期化し、世界経済の減速リスクが払拭できない場合には、米国経済が好調でも国際協調の点から追加利上げは難しくなろう。
FRBは、12月に政策金利引き上げを開始したが、過去の利上げ開始局面に比べると物価は抑制されており、物価面からは利上げ開始の蓋然性は低かった(図表21)。依然として物価目標達成時期が不透明な中、世界的なリスク回避姿勢の高まりから、金融環境が引き締まるなど、実体経済への影響が懸念される状況もでているため、FRBによる金融政策の舵取りはますます難しくなっている。
当研究所はこれまで16年に3回(0.75%)とFOMC参加者の予想である4回(1.00%)より利上げ幅が小幅に留まると予想していたが、資本市場の動向が実体経済に与える影響を見極めるため、資本市場の不安定な状況が長期化しない前提で年2回(0.50%)の利上げ見通しに変更した。
もっとも、2月のG20では世界経済減速リスクに対して各国が政策を総動員して対処することで合意されたことから、世界的に資本市場の不安定な状況が長期化し、世界経済の減速リスクが払拭できない場合には、米国経済が好調でも国際協調の点から追加利上げは難しくなろう。
(長期金利)緩やかな上昇を予想
長期金利(10年国債金利)は、15年6月に2.5%近辺まで上昇した後、原油価格の下落や米株式市場の下落に伴うリスク回避の動き等から概ね低下基調となっており、16年月2月上旬には一時1.6%前半まで下落し、足元でも2%を下回る水準で推移している。
長期金利は、原油価格の上昇基調への反転やリスク回避姿勢の後退、政策金利の引き上げ継続を背景に17年末に向けて上昇すると予想する。もっとも、今後も物価が抑制されるほか、政策金利の引き上げペースも緩やかなことから、長期金利の水準は16年末で2%台後半、17年末でも3%近辺に留まろう。
長期金利(10年国債金利)は、15年6月に2.5%近辺まで上昇した後、原油価格の下落や米株式市場の下落に伴うリスク回避の動き等から概ね低下基調となっており、16年月2月上旬には一時1.6%前半まで下落し、足元でも2%を下回る水準で推移している。
長期金利は、原油価格の上昇基調への反転やリスク回避姿勢の後退、政策金利の引き上げ継続を背景に17年末に向けて上昇すると予想する。もっとも、今後も物価が抑制されるほか、政策金利の引き上げペースも緩やかなことから、長期金利の水準は16年末で2%台後半、17年末でも3%近辺に留まろう。
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2016年03月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
公式SNSアカウント
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