2016年03月08日

2016・2017年度経済見通し~15年10-12月期GDP2次速報後改定

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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実質雇用者報酬の予測 一方、個人消費は消費税率引き上げから2年近くにわたって低迷が続いているが、先行きは持ち直しに向かうことが見込まれる。2016年度の春闘賃上げ率は前年度を下回る公算が大きい(当研究所では2016年度の春闘賃上げ率を前年から0.08ポイント低下の2.30%と予想)が、原油価格下落に伴う消費者物価の低下が実質購買力を押し上げるためである。名目雇用者報酬の伸びは頭打ちとなるが、実質雇用者報酬は2015年度が前年比1.4%、2016年度が同1.3%と1%台の伸びを確保し、個人消費の持ち直しに寄与することが予想される。
ただし、2017年度は原油価格の持ち直しや消費税率引き上げの影響から消費者物価上昇率が2%程度まで上昇するため、2014年度と同様に実質雇用者報酬の伸びは大きく低下する可能性が高い。2017年度の個人消費は消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動と物価上昇に伴う実質所得低下の影響が重なることから、大幅な減少となることが避けられないだろう。
 
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2015年8月から10月まで3ヵ月連続で前年比▲0.1%となった後、11月、12月が前年比0.1%、2016年1月が同0.0%とマイナスを脱した。しかし、先行指標である東京都区部のコアCPIは2016年1月、2月と前年比▲0.1%となっており、全国のコアCPIも2015年度末までに再びマイナスとなる可能性が高い。
エネルギー価格の前年比下落率は2015年9月をピークに縮小傾向となっていたが、電気代、ガス代は原油価格下落の影響が遅れて反映されるため、下落ペースは今後加速する公算が大きい。消費者物価指数の調査対象品目を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、上昇品目数の割合が7割近くなっており、引き続きエネルギー以外の物価上昇圧力は強い。しかし、2016年夏頃にかけてのエネルギー価格の下落率は2015年夏頃よりも大きくなるため、先行きのコアCPIの下落幅は2015年8月から10月までの前年比▲0.1%を明確に上回る可能性が高い。コアCPI上昇率が再びプラスに転じるのは原油価格下落の影響が一巡する2016年10-12月期までずれ込むだろう。
2016年度末にかけては消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって需給バランスが改善することもあり、コアCPIはいったん1%程度まで伸びを高めるが、2017年度入り後は消費税率引き上げに伴う景気減速によって需給面からの物価上昇圧力が弱まるため、2%に達する前に上昇率は鈍化し始めるだろう。
コアCPI上昇率は2015年度が前年比0.0%、2016年度が同0.2%、2017年度が同0.9%(消費税率引き上げの影響を除く)と予想する。
消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」/消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測

 
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2016年03月08日「Weekly エコノミスト・レター」)

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