2016年02月16日

【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(18)医療保険-所得控除の対象に

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき

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3-導入は、団体保険から

中国の保険市場では、現在、およそ100の保険会社が、2000にものぼる医療関連の保険商品(介護保険、就業不能保険を含む)を販売しているとされている。医療保険は、医療費の高騰による需要に加えて、官民協働の大病医療保険の導入にあるように、政府主導で、普及が急速に拡大している。2015年の中国保険市場の収入保険料(生損保合計)は、前年比20.0%増の2.4兆元(約48兆円)であったが、そのうち医療保険は、前年比52%増の2410億元であった。医療保険の規模は、マーケット全体の1割程度であるものの、その増加の勢いはマーケット全体を遙かに凌いでいる。今般の保険料控除の導入によって、医療保険の収入保険料は更に増加すると考えられるが、政府としては、契約者の税金(所得税)の軽減策というよりは、寧ろ、官製市場において、民間保険会社を通じた医療保険商品の設計、普及、それによる将来的な医療財政への負担軽減が主目的であるといえよう。
 
対象となる商品の設計、認可、販売、所得税控除に係る手続きには、3つの主務官庁(中国財政部、税務総局、保険監督管理委員会)が係わっている点から、お互いの利害が交差し、実施には時間がかかるのであろう。現時点で、運営を担う保険会社側としては、手続きの煩雑さ等を考慮し、個人を対象とした保険ではなく、会社員等を対象とした企業で手続きが可能な団体保険を中心に、当該医療保険商品の販売を考えているようである。保険会社としても、政府の政策ではありながら、給付内容と保険料のバランスを考えつつ、独自の特徴も発揮した商品の設計に知恵を絞っていくことになるであろう。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴
  • 【職歴】
     2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
     (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
     ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
     (2019年度・2020年度・2023年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
     ・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
     日本保険学会、社会政策学会、他
     博士(学術)

(2016年02月16日「基礎研レター」)

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