2016年02月16日

2016・2017年度経済見通し(16年2月)

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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(経常収支の見通し)

経常収支は駆け込み需要に伴う輸入の増加による貿易赤字の拡大を主因として2013年度後半には一時赤字となったが、2014年度入って黒字に転換した後は、黒字幅の拡大傾向が続き、2015年10-12月期には18.2兆円(季節調整済・年率換算値)と東日本大震災前の水準を回復した。多額の対外純資産を背景に第一次所得収支が高水準の黒字を続ける中、訪日外国人の急増に伴う旅行収支の大幅改善からサービス収支の赤字幅が縮小していることに加え、原油価格下落に伴う輸入物価の低下を主因として貿易収支が黒字に転換したことが経常収支の黒字幅拡大に寄与している。
ただし、海外経済の減速や生産拠点の海外シフトといった構造要因により輸出の伸び悩みが続くことに加え、2016年度後半には消費税率引き上げ前の駆け込み需要に伴う国内需要の拡大や原油価格の持ち直しによって輸入の伸びが高まることから、貿易黒字が定着するまでには至らないだろう。
経常収支の予測 経常収支は2016年度末にかけて縮小傾向が続いた後、2017年度は消費税率引き上げ後の国内需要の低迷に伴う輸入の伸びが低下し、貿易収支が改善することから、再び拡大傾向となろう。
経常収支は2014年度実績の7.9兆円(名目GDP比1.6%)から、2015年度に17.8兆円(同3.6%)と大きく拡大した後、2016年度が19.4兆円(同3.8%)、2017年度が19.5兆円(同3.8%)と高水準横ばい圏の推移が続くと予想する。
(物価の見通し)

消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2015年8月から10月まで3ヵ月連続で前年比▲0.1%となった後、11月、12月と同0.1%と小幅なプラスとなった。しかし、先行指標である東京都区部のコアCPIは2016年1月に前年比▲0.1%のマイナスとなっており、全国のコアCPIも2016年入り後には再びマイナスに転じる可能性が高い。
エネルギー価格の前年比下落率は2015年9月をピークに縮小傾向となっていたが、先行きは年明け以降の原油価格急落を反映し下落ペースが加速する公算が大きい。消費者物価指数の調査対象品目を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、上昇品目数の割合が7割近くなっており、引き続きエネルギー以外の物価上昇圧力は強い。しかし、2016年夏頃にかけてのエネルギー価格の下落率は2015年夏頃よりも大きくなるため、先行きのコアCPIの下落幅は2015年8月から10月までの前年比▲0.1%を明確に上回り、コアCPI上昇率が再びプラスに転じるのは原油価格下落の影響が一巡する2016年10-12月期までずれ込むだろう。
2016年度末にかけては消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって需給バランスが改善することもあり、コアCPIはいったん1%程度まで伸びを高めるが、2017年度入り後は消費税率引き上げに伴う景気減速によって需給面からの物価上昇圧力が弱まるため、コアCPI上昇率は2%に達する前に鈍化し始めるだろう。
コアCPI上昇率は2015年度が前年比0.0%、2016年度が同0.2%、2017年度が0.9%(消費税率引き上げの影響を除く)と予想する。
 
消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」/消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測
(3/8に予定されている2015年10-12月期2次QEの発表を受けた経済見通しの修正は3/8、欧米経済見通しの詳細は3/9発行のWeeklyエコノミスト・レターに掲載予定です)
 
 
 
 
日本経済の見通し(2015年10-12月期1次QE(2/15発表)反映後)/米国経済の見通し/欧州(ユーロ圏)経済の見通し
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年02月16日「Weekly エコノミスト・レター」)

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