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- 2016・2017年度経済見通し(16年2月)
2016年02月16日
1.2015年10-12月期は年率▲1.4%と2四半期ぶりのマイナス成長
2015年10-12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比▲0.4%(前期比年率▲1.4%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった。
企業収益の改善を背景に設備投資は前期比1.4%と2四半期連続で増加したが、民間消費が前期比▲0.8%の大幅減少となったことに加え、これまで堅調だった住宅投資も前期比▲1.2%と4四半期ぶりに減少したことから、国内民間需要は前期比▲0.6%と2四半期ぶりの減少となった。また、政府消費は前期比0.5%と増加を続けたが、2014年度補正予算の効果一巡から公的資本形成が前期比▲2.7%の大幅減少となったため、公的需要も前期比▲0.1%の減少となった。
外需は前期比・寄与度0.1%と小幅ながら成長率を押し上げたが、国内需要の落ち込みをカバーすることはできなかった。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲0.5%(うち民需▲0.5%、公需▲0.0%)、外需が0.1%であった。
(アベノミクスの3年間)
企業収益の改善を背景に設備投資は前期比1.4%と2四半期連続で増加したが、民間消費が前期比▲0.8%の大幅減少となったことに加え、これまで堅調だった住宅投資も前期比▲1.2%と4四半期ぶりに減少したことから、国内民間需要は前期比▲0.6%と2四半期ぶりの減少となった。また、政府消費は前期比0.5%と増加を続けたが、2014年度補正予算の効果一巡から公的資本形成が前期比▲2.7%の大幅減少となったため、公的需要も前期比▲0.1%の減少となった。
外需は前期比・寄与度0.1%と小幅ながら成長率を押し上げたが、国内需要の落ち込みをカバーすることはできなかった。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲0.5%(うち民需▲0.5%、公需▲0.0%)、外需が0.1%であった。
(アベノミクスの3年間)
ここで、個人消費を取り巻く環境を確認すると、雇用情勢は人口減少、少子高齢化を背景とした人手不足感の高まりもあって改善を続けている。失業率は安倍政権発足前の4%台前半から3%台前半まで改善し、雇用者数も3年間で150万人以上増えた。しかし、労働需給が逼迫するなかでも一人当たり賃金は伸び悩んでいる。安倍政権発足後、企業収益の改善や政府からの賃上げ要請を受けて久しぶりにベースアップを実施する企業が相次いだが、雇用の非正規化によって賃金水準の低い労働者が増えたこともあって、名目賃金の伸びはこの3年間で0.4%にすぎない。
こうした中で物価が大きく上昇したため、実質賃金は3年前よりも▲4.6%も減少している。この結果、一人当たり実質賃金に雇用者数をかけた実質雇用者所得の水準は3年前よりも▲1.9%低くなっている。天候不順によって一時的に押し下げられた面もあるが、均してみれば実質民間消費と実質雇用者所得は同様の動きとなっており、消費低迷の主因は実質雇用者所得の減少にあると考えられる。
こうした中で物価が大きく上昇したため、実質賃金は3年前よりも▲4.6%も減少している。この結果、一人当たり実質賃金に雇用者数をかけた実質雇用者所得の水準は3年前よりも▲1.9%低くなっている。天候不順によって一時的に押し下げられた面もあるが、均してみれば実質民間消費と実質雇用者所得は同様の動きとなっており、消費低迷の主因は実質雇用者所得の減少にあると考えられる。
言うまでもなく、円高、株安は景気押し下げ要因、原油安は景気押し上げ要因となる。直近(2/15)の為替、株価、原油価格を2015年平均と比較すると、ドル円レートは▲6%、日経平均株価は▲17%、原油価格は▲43%低くなっている。2015年平均の水準が1年間続いた場合をベースラインとし、現状の水準が1年間続いたと場合の影響を当研究所のマクロモデルでシミュレーションすると、実質GDPは円高で▲0.11%、株安で▲0.12%押し下げられる一方、原油安で+0.34%押し上げられる(いずれも1年間の数値)。現状の水準を前提にすれば、実質GDPへの影響は原油安による押し上げ効果が円高、株安による押し下げ効果を上回ることになる。
もちろん、マクロモデルでは金融市場の混乱に伴う企業、家計のマインド悪化などの影響を十分に捉えきれない面があることには留意が必要だが、市場が落ち着きを取り戻せば、日本経済にとっては円高、株安のデメリットよりも原油安のメリットのほうが大きくなる可能性が高いことは冷静に見ておく必要があるだろう。
もちろん、マクロモデルでは金融市場の混乱に伴う企業、家計のマインド悪化などの影響を十分に捉えきれない面があることには留意が必要だが、市場が落ち着きを取り戻せば、日本経済にとっては円高、株安のデメリットよりも原油安のメリットのほうが大きくなる可能性が高いことは冷静に見ておく必要があるだろう。
(春闘賃上げ率は2015年度を下回る公算)
足もとでは、中国をはじめとした海外経済の動向に注目が集まっているが、金融市場の混乱が一段落した場合、景気回復の足枷となることが懸念されるのは、むしろ国内要因、具体的には賃上げの後退が個人消費の回復を後ずれさせるリスクである。
企業収益の大幅改善や政府による賃上げ要請を受けて、2014年春闘では10数年ぶりにベースアップが復活し、2015年度には賃上げ率がさらに高まったが、2016年度の春闘賃上げ率は前年度を下回る公算が大きくなっている。
もともと2015年10月下旬に公表された連合の2016年春闘の基本方針では、賃上げ要求水準が「2%程度を基準(定期昇給分を除く)」となっており、2015年要求の「2%以上」からやや後退していた。また、個別企業の労働組合の動向をみても昨年を下回る賃金改善要求が目立つようになっている。さらに、年明け以降は国内外の景気の先行き不透明感が一段と高まっている。特に、企業収益の悪化に直結する円高の進展は、経営側の賃上げに対する姿勢をより一層慎重なものとするだろう。
足もとでは、中国をはじめとした海外経済の動向に注目が集まっているが、金融市場の混乱が一段落した場合、景気回復の足枷となることが懸念されるのは、むしろ国内要因、具体的には賃上げの後退が個人消費の回復を後ずれさせるリスクである。
企業収益の大幅改善や政府による賃上げ要請を受けて、2014年春闘では10数年ぶりにベースアップが復活し、2015年度には賃上げ率がさらに高まったが、2016年度の春闘賃上げ率は前年度を下回る公算が大きくなっている。
もともと2015年10月下旬に公表された連合の2016年春闘の基本方針では、賃上げ要求水準が「2%程度を基準(定期昇給分を除く)」となっており、2015年要求の「2%以上」からやや後退していた。また、個別企業の労働組合の動向をみても昨年を下回る賃金改善要求が目立つようになっている。さらに、年明け以降は国内外の景気の先行き不透明感が一段と高まっている。特に、企業収益の悪化に直結する円高の進展は、経営側の賃上げに対する姿勢をより一層慎重なものとするだろう。
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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