- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 2016年日本経済の課題-アベノミクス新三本の矢を考える
1――新三本の矢の本格始動
「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」という、旧三本の矢の間の関係は比較的簡明だった。しかし、「一億総活躍社会」の実現ということが、新三本の矢をどう束ねる意味を持つのかは、少し分かり難い。多くの人が、子育て支援と高齢者介護という、第二、第三の矢に唐突な印象を受けたことは理解できる。
新三本の矢には、それぞれ名目GDP600兆円、出生率1.8、介護離職ゼロという、極めて意欲的な目標数値が掲げられている。このため、目標が達成できるかどうかに注目が集まってしまったが、このような目標が登場した理由に注目すべきだ。長期にわたる経済的な不振の間に、日本経済の状況が大きく変わり、対応すべき問題の質が大きく変わっていることが大きな理由であると考える。
2――「一億総活躍」の意義
2014年の年齢別の人口構成を見ると、ここ数年の間に65歳に達して勤労生活から引退し始めている団塊の世代の人口規模が各歳220万人程度である一方、毎年新たに働き始める20歳前後の人達の人口は120万人程度と大幅に少ないことが分かる。
このため、今後人口構造の高齢化がさらに進む中で、日本に住む人達の生活水準を維持・向上させていくためには、現在よりもはるかに多くの高齢者や女性が社会の中で活躍できるようにすることが必要になる。
経済成長の果実を子育て支援や高齢者の介護などの分野に投入するということでは、経済成長率が高まらないのではないかという批判もある。しかし、経済の成長が子育てや介護政策の充実を支えるだけではなく、子育て支援や介護政策の充実によって、より多くの人達が社会で活躍できるようになり、逆に経済成長を支えることにも注目すべきである。
3――中長期的対応への転換
安倍内閣は3年間が過ぎ、全力を注いできたデフレからの脱却は完全に実現したとは言えないまでも、もう少し政策の視野を広げる余地が生まれていると言えるだろう。維持可能な社会保障制度や財政・金融をどう実現するのか、2016年の日本経済は緊急事態への対処から中長期的なビジョンを持った政策への転換が課題ではないだろうか。
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
研究・専門分野
(2016年02月08日「基礎研マンスリー」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月28日
“ガソリン補助金”について改めて考える~メリデメは?トリガー条項との差は? -
2024年03月28日
健康無関心層へのアプローチ -
2024年03月28日
中国経済:景気指標の総点検(2024年春季号) -
2024年03月28日
高齢者就業への期待と課題(中国) -
2024年03月28日
中国における結婚前の財産分与から見た価値観の変化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【2016年日本経済の課題-アベノミクス新三本の矢を考える】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
2016年日本経済の課題-アベノミクス新三本の矢を考えるのレポート Topへ