2016年01月25日

貿易統計15年12月~10-12月期の外需寄与度は前期比0.1%程度のプラスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.季節調整値の貿易収支は2ヵ月連続の黒字

財務省が1月25日に公表した貿易統計によると、15年12月の貿易収支は1,402億円と2ヵ月ぶりの黒字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:1,100億円、当社予想は2,561億円)通りの結果となった。輸出は前年比▲8.0%(11月:同▲3.3%)と減少幅が拡大したが、輸入の減少幅が11月の前年比▲10.2%から同▲18.0%へと拡大したため、貿易収支は前年に比べ8,058億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲4.4%(11月:同▲3.1%)、輸出価格が前年比▲3.8%(11月:同▲0.3%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲5.0%(11月:同1.6%)、輸入価格が前年比▲13.7%(11月:同▲11.7%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移/輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は366億円の黒字となり、黒字幅は11月の224億円から若干拡大した。輸出(前月比▲3.8%)、輸入(同▲4.0%)ともに減少したが、輸入の減少幅が若干上回った。なお、15年11月の貿易収支(季節調整値)は先月時点では▲33億円の赤字だったが、季節調整のかけ直しに伴い黒字へと改定された。

原数値の貿易収支は15年9月から赤字と黒字を繰り返しているが、貿易収支には季節性があるため、実勢を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。実態としては15年11月に東日本大震災以降初の黒字となり12月も黒字が継続したとみることができる。ただし、貿易統計は直近120ヵ月のデータを用いて毎月季節調整がかけ直され、過去に遡って季節調整値は改定されることには留意が必要だ。たとえば、15年3月の貿易収支(季節調整値)は当初公表された際には33億円の黒字であったが、現在は▲197億円の赤字となっている。

2.米国向け輸出が低調

12月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲8.4%(11月:同▲8.1%)、EU向けが前年比5.0%(11月:同9.3%)、アジア向けが前年比▲0.8%(11月:同▲3.8%)となった。

10-12月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲1.7%(7-9月期:同▲4.0%)、EU向けが前期比4.6%(7-9月期:同▲3.1%)、アジア向けが前期比1.4%(7-9月期:同▲0.8%)、全体では前期比0.6%(7-9月期:同▲1.3%)となった。米国経済は全体としては堅調に推移しているが、エネルギー関連投資の弱さを反映し、資本財・部品関連の輸出が大きく落ち込んでいる。一方、欧州経済の回復ペースは緩やかだが、自動車輸出の急増がEU向けの輸出を大きく押し上げている。

なお、中国向けの輸出数量指数は前期比1.4%と8四半期ぶりの上昇となった。市場では中国経済に対する悲観的な見方が急速に高まっているが、中国向け輸出はむしろここにきて持ち直しの兆しが見られる。
 
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移(年・月)/地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移(年・四半期)
10-12月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前期比▲1.4%(7-9月期:同▲0.1%)と3四半期連続で低下した。個人消費を中心とした国内需要の弱さを反映し、輸入は弱めの動きが続いている。

3.原油価格の大幅下落から貿易収支(季節調整値)は当面黒字が継続

12月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=43.6ドル(当研究所による試算値)となり、11月の47.5ドルから低下した。足もとのドバイ原油は20ドル台まで下落しており、通関ベースの原油価格は1月に30ドル台後半、2月には30ドル前後まで低下することが見込まれる。原油価格下落に伴う輸入価格の大幅低下を主因として貿易収支(季節調整値)は1月以降黒字幅が拡大する可能性が高い。

ただし、当研究所では、原油価格が徐々に持ち直すことを想定しており、海外生産シフト等の構造要因もあって先行きの輸出の回復ペースは緩やかにとどまると予想している。このため、現時点では貿易収支が一時的に黒字化してもそれが定着する可能性は低いと考えている。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移

4.10-12月期の外需寄与度は前期比0.1%程度のプラスに

12月までの貿易統計と11月までの国際収支統計の結果を踏まえて、15年10-12月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比0.5%程度の増加、輸入が前期比でほぼ横ばいとなることが見込まれる。この結果、10-12月期の外需寄与度は前期比0.1%と2四半期連続のプラス(7-9月期:同0.1%)となることが予想される。

当研究所では鉱工業生産、家計調査、建築着工統計等の結果を受けて、1/29のweeklyエコノミストレターで10-12月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需は7-9月期に続き成長率を押し上げるものの、個人消費、公共投資を中心とした国内需要の落ち込みがそれを上回ることから、2四半期ぶりのマイナス成長になると予想している。
 
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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年01月25日「経済・金融フラッシュ」)

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