2016年01月18日

英国の所得補償保険-公的所得保障制度の日英の差異

小林 雅史

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4――所得補償保険(就業不能保障保険)の商品内容

英国保険協会(Association of British Insurers、ABI)は、消費者に対し、所得補償保険を
・傷害または疾病により、就業不能となった場合、約定された免責期間(通常、3か月または6か月)経過後に、2年間、3年間または5年間にわたり、就業不能保険金額(被保険者の所得を下回る金額に設定)を非課税で給付する、個人保険または団体保険
と定義している6

また、英国保険大手のAviva社は、2012年3月13日、3月20日付で所得補償保険(就業不能保障保険)を改定し、
・約250の職業区分について保険料率の見直しを行い、従来高リスクとされたジャーナリスト、測量士、獣医、自然科学の専門家など、221の職業区分について保険料率を引き下げ、
・加えて従来謝絶していた21の職業区分(屋根職人、タイル職人、足場組み立て職人など) について新規に引き受け可能とし、
・就業不能の定義について、従来の適合する職業(suited occupation)ベースや、日常労働動作(an activities of daily work)ベースではなく、本来の職業(own occupation)ベースで95%の顧客について付保が可能となり、結果として定義が緩和されることとなった
旨プレス発表した7

加入年齢は18歳から59歳で、就業不能保険金額は直近12か月の所得の55%まで、免責期間(deferred period)は4週から156週の間のいくつかのタイプから選択、就業不能保険金は保険期間満了または約定退職年齢まで支払われる。

保険料は年齢、職業、喫煙歴や飲酒歴、過去の病歴、身長体重比(height and weight ratio)などによって決定される。

また、消費者物価指数に連動した保険金増額特約などがある8>。
 
6  “Income protection insurance “、ABIホームページ。このほか、就業不能状態や予期せぬ失職などの場合、住宅ローン返済額などを保障する支払補償保険(payment protection insurance)なども紹介している。
7  ”UK Aviva makes income protection more affordable and  inclusive”、2012年3月13日、Aviva社ホームページ。
8  ”Income Protection Options Policy summary”、” Income Protection Options Policy Conditions ”、Aviva社ホームページ。

5――おわりに-公的所得保障制度の日英の差異-

日本の健康保険の傷病手当金は、自営業者など国民健康保険加入者は対象外となるものの、標準報酬日額の3分の2が1年6か月にわたって支給され、最高額は月額約81万円という高水準となっている(英米にはこうした高水準の公的所得保障制度はない)。

過大な給付ではないかとして、全国健康保険協会から見直しを求める声も出ている9

また、定額給付ではなく、標準報酬日額に連動して給付額が定められるため、直前の標準報酬日額を不当に高く設定するなどの不正も発生した。こうした点への対応として、2016年4月1日から、標準報酬日額の算出方法について、直近の標準報酬月額から、直近12か月の標準報酬月額を平均した額に改められる10

日本における所得補償保険(就業不能保障保険)の販売実績は多くないが、こうした日英の公的所得保障制度の差異にも留意する必要があろう。
 
9  厚生労働省保険局「傷病手当金について」『第42回社会保障審議会医療保険部会配布資料』(2010年11月15日)、厚生労働省ホームページ。
10  厚生労働省保険局「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案のポイント」『第86回社会保障審議会医療保険部会配布資料』(2015年2月20日)、厚生労働省ホームページ。
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(2016年01月18日「基礎研レター」)

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