- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 環境経営・CSR >
- 日本企業はESGをどう認識しているか?-海外事業展開を背景に、ESGの促進要因を探る
そこで、企業の海外事業展開に着目した仮想的な「海外売上比率」と、今後上昇が予想される「外国人持株比率」に対する「ESG重要度」との関係をみてみた。具体的にはアンケートデータを基に独自のウエイト付けにより、それぞれを数値化8してプロットしたものである(図表10)。
「海外売上比率」が高いほど、「ESG重要度」も高まる傾向は明らかである(直線近似)。特に、海外売上比率の高い加工型製造業の一般・精密機械、電気機械、輸送用機械では、ESG重要度も高い水準にある。このグループに準ずるのが素材型製造業の鉱業・石油、化学、非鉄金属である。非製造業では全体に海外売上比率は低いが、ESG重要度には業種によるバラツキがあり、通信や電気・ガスではESG重要度が高い。なお、今後、海外売上高が増えれば、顧客のESG監査も増えよう。
他方、「外国人持株比率」と「ESG重要度」についても因果関係が認められる(対数近似)。加工型製造業や素材型製造業ではいずれも両変数は高い水準にはあるものの、海外売上比率とESG重要度の関係ほどの業種的偏りはない。なお、今後、外国人株主が増えれば、ESGの照会も増えてこよう。
8 「海外売上比率(%)」=海外売上比率の回答の比率刻みの中央値に回答%を乗じた数値の総和
「外国人持株比率(%)」=外国人持株比率の回答の比率刻みの中央値に回答%を乗じた数値の総和
おわりに
今後、日本企業はグローバル化の進展とともに、日本社会とは異なる多様な価値観(社会的課題を含む)と遭遇し、マネジメント(あるいはガバナンス)としてESGを中心とする非財務要素への配慮が企業価値の創造に強く寄与することが納得できるようになろう。
また、日本版スチュワードシップ・コードの発行に加え、GPIFのUNPRIへの署名により、機関投資家とりわけ外国の長期投資家の増加が予想され、日本においても企業に対するエンゲージメントやESG投資が促進されることが予想される。これら二つの要因が相まって、日本企業のESGに対する重要性認識がさらに高まることに期待したい。
川村 雅彦
研究・専門分野
(2015年12月29日「基礎研レポート」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月28日
“ガソリン補助金”について改めて考える~メリデメは?トリガー条項との差は? -
2024年03月28日
健康無関心層へのアプローチ -
2024年03月28日
中国経済:景気指標の総点検(2024年春季号) -
2024年03月28日
高齢者就業への期待と課題(中国) -
2024年03月28日
中国における結婚前の財産分与から見た価値観の変化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【日本企業はESGをどう認識しているか?-海外事業展開を背景に、ESGの促進要因を探る】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
日本企業はESGをどう認識しているか?-海外事業展開を背景に、ESGの促進要因を探るのレポート Topへ