2015年12月14日

日銀短観(12月調査)~大企業製造業の景況感は横ばい、先行きは悲観的

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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  1. 日銀短観12月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が12と前回9月調査比で横ばいとなり、足元の底堅い企業マインドが示された。大企業非製造業も横ばいとなった。景況感の下押し材料は多々存在するものの、特に資源価格下落が追い風となった形だ。大企業製造業では、新興国経済の減速や長引く軽自動車税増税の影響などが景況感の重石となったが、資源価格下落が採算の改善に繋がり、景況感を下支えした。非製造業でも、国内消費の伸び悩みや杭打ち不正問題も景況感の下押し圧力になる一方で、資源価格の下落に加えて、旺盛なインバウンド需要や情報化の流れが下支え役となった。中小企業については、製造業が前回から横ばい、非製造業では前回比2ポイント上昇した。

  2. ただし、先行きの景況感については、企業規模や製造業・非製造業を問わず、幅広く悪化が見られる。従来との比較でも今回の悪化幅は大きい。米利上げや中国経済減速などから、海外経済の先行き不透明感は強い。また、非製造業を支えるインバウンドも、国際的に相次ぐテロの影響や中国経済の減速によって、今後勢いが削がれるリスクが意識されたようだ。

  3. 15年度設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比で7.8%増と、前回調査時点の6.4%増から上方修正された。例年、9月調査から12月調査にかけては、中小企業において、計画が固まってくることに伴って上方修正される統計のクセが非常に強く、今回も上方修正となったうえ、大企業も底堅い計画となった。大企業製造業では新興国経済の減速など外部環境の悪化により、一部投資の先送りの動きが出たとみられるが、非製造業では強い人手不足感から省力化投資などを積み増す動きが出た可能性がある。
足元の業況判断DIは横ばい、先行きはかなりの悪化(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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